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第2章 幼年編
497 コウメ
しおりを挟む「団長うちの1位に会ってほしいんっすよね。できたら団員になってくれたら僕とってもうれしいんですけどエヘヘ」
「なんだハチ、その最後のエヘヘは?」
「うちの1年1組、コウメって言うんすけど実は女の子じゃないかっていうくらいにかわいいんすよエヘヘ」
「へぇーそんな子見たことないぞ」
「人嫌いみたいでふだんから人前に出てこないんすよ。だからだいたい保健室にいるんすよね。
保健の先生がいないときはコウメが回復魔法も発現できるし」
「回復魔法が発現できんのかよ。そりゃいいな」
「でしょー。僕も転けて擦りむいたときにコウメが回復魔法かけてくれたんすよ。『きゅあ』っていったらすぐに治ったんすよ。あのときコウメが女の子じゃなくてもいいやって僕思いましたもん!」
「あーハチ君、まだそっちの世界は早いと思うよ俺たちには。
でもどうしてもっていうならレベちゃんっていうグランドの美人を紹介するよ?」
「団長!ぜひ紹介してくださいっす。美人揃いって名高い海洋諸国の美人に僕も会ってみたいっす!」
「いいぞー。胸元に抱かれてミシミシするハチの頭が浮かぶよ!」
「巨乳に抱かれるのかぁ。いいなぁーえへへ」
うん妄想子狸なんか放っとこ。そんなことより。
「(シルフィ)」
「(ええアレク)」
「わかったよハチ。その子には1回会ってくるな。そんなことよりなハチ‥‥6年1組と俺が闘ったときお前、会場内で食べもの売ってたよな?」
「あわわわっ!団長、僕忘れものしたから教室に帰るっす!」
ダッッと走り去る子狸。あの子狸いつか狸汁にしてやるぞ。
▼
授業明けに保健室に行ったんだ。そしたらね、やっぱりいたよ。
「えーっとコウメ君?さん?」
ショートカットボブの黒髪に黄色のニット帽。少し浅黒い肌が健康的でもある美少年?美少女?こりゃたしかにあの子狸がエヘヘって言うBLの気も多少はわからなくもないな。俺はぜったいムリだけど。
でも肩に座ってる精霊からもわかる。この子エルフだ。
てか俺とシルフィに目が合ったら慌ててコウメの背中に隠れてる風の精霊がいるよ。
「あっ!アレク先輩こんにちは。僕女じゃなくって男の子ですよ」
「そっか。ごめんな」
「いいですよ。いつものことで慣れてますから」
「でコウメはなんで帽子被ってバレないようにしてるの?」
「あはは。やっぱり先輩には見えてますか」
「ああ。俺のシルフィと同じかわいい子が隠れてるじゃん」
「あらアレク今日は素直じゃん!」
「えー俺はいつも素直にシルフィがかわいいって思ってるよ!」
「あら!やだ!じゃあしばらく変態って言わないでいてあげるね」
「今言ってるし!」
「えーっとコウメに憑いてる‥」
「アレクに憑いてる私がシルフィよ」
「私ソニアです。よろしくお姉さま」
「ん。よろしくね」
風の精霊同士すぐに話を始めたソニアとシルフィ。
「コウメは‥‥?」
「僕肌の色もちょっと濃いでしょ」
「うん」
「僕父さんがダークエルフで母さんが人族のミックスなんです」
「あーなるほどねー」
コウメが言うにはお父さんはダークエルフ族で冒険者。海洋諸国民の護衛についてたときに人族のお母さんと出会ったそうなんだ。海洋諸国民の護衛になるって、よっぽど強くないとできないよなって思ったんだけどエルフならなるほどアリだよね。
コウメの耳はやっぱり少し尖っていたからその見た目からエルフであるのは丸わかりだもんな。でも帽子でエルフのミックスってことを隠すなんて何かの事情があったのかな。
「じゃあコウメあらためて握手しようか?」
「は、はい」
ギュッ
ギュッ
「へぇーすごいなコウメは!魔力のコントロールが完璧にできてるじゃん!これじゃわかんないぞ」
「アレク先輩こそすごいですね!なんなんですか、このとんでもない魔力量は」
「そっかぁ。でもコウメは魔力コントロールによっぽど修練を積んだんだな」
「僕ダークエルフを含めてエルフには父さんとお爺ちゃん以外会ったことがないんです」
「へぇー?」
「お父さんは冒険者でほとんど家にいないから、お爺ちゃんが僕にいろいろ教えてくれてたんです。赤ちゃんのころから魔力放出だけはちゃんと覚えろってつきっきりで教えてくれてたんです」
「へぇー。人にバレないようにってか」
「はい。ダークエルフの里に住まずに人族の国に住むから成人するまではハーフエルフってことは知られないほうがいいだろうって」
「なるほどね」
「だからできるだけ人目につかないようにしてたんです。学園に入ったのもお爺ちゃんが学園なら目立たないようにできるだろうって。
そしたらアレク先輩がやって来てとっても目立ってて‥‥肩には僕と同じ精霊さんもいるし。だから僕先輩に会ってみたくて」
「そっか」
「アレク先輩は奴隷商を倒して学校を作ったんですよね?」
「まだまだこれからだよ。できたばっかだし」
「 貧民街の子や浮浪児も助けてるんですよね?」
「これもまだまだこれからな。そんでも帝都からそんな子どもたちが無くなればいいなって思ってるよ」
「それと‥‥そこにエルフの先生がいるんですよね?」
「ああいるよ」
「僕その人に会ってみたいんです」
▼
「菓子は持ったのか?」
「ああ持ったよ」
「爺婆どもは甘いもんが大好きだからな。アレクの作った菓子を食ったらどんな顔するか、クックックッ」
「まぁ喜ぶだろうね。酒好き以外は」
「わしはどっちもいけるぞ」
「あーオヤジはロジャーのおっさんと一緒だよ。酒も甘いのもどっちもいける‥‥」
「んじゃ行くぞ」
「はーい」
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