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第2章 幼年編
496 田植え
しおりを挟む「ノームもウンディーネもよろしくお願いね!」
「「「おいさおいさ」」」
「「「いいわよー」」」
家の前の庭。
おあつらえむきに門扉から真っ直ぐになった区画の元芝生だからね。
雑草だらけのここを更地にしてから水田に造成したんだ。
ちょうど1枚の水田。
ノームとウンディーネのおかげだよね。元々の土壌の良さに加えて精霊たちの加護付きだから米が豊作になるのは間違いないよ!
500㎏強のお米が収穫できるだろうな。なにせ精霊の加護ありまくりだもんね!
来年、俺はいないからデーツとマリアンヌ先輩には知りうる限りの稲栽培と利用法、調理法を伝えなきゃな。
「デーツ、藁で作る紙は安くできるからな。学校ではこのわら半紙を使えよ。作り方はな‥‥」
「?」
「マリアンヌ先輩、こいつは抜けてるからよろしくお願いしますね」
「フフフわかったわ」
「じゃあみんな目の前の紐に沿って苗を植えてくよー。がんばるぞー!」
「「「おぉ~!」」」
「なんか気持ち悪いね」
「ヌルヌルするね」
「ひんやりしてるのはいいんだけどね」
泥田に入って稲の苗を植えていく。
泥田の感触が面白いのかキャーキャー言ってはしゃいでいる女子3人。元々マリアンヌ先輩はアリサのお姉さん的存在だったから今は3姉妹だな。
「じゃあいくよー、さっき教えたみたいに植えてこう」
「「はーい」」
みんなが並んで稲の苗を植えていく。自然と速さも違うよね。当たり前だけど慣れてる俺が1番早く植え進めてたんだけど‥‥
1番はやく自分の担当分が終わったのは誰だと思う?なんとクロエなんだ。
ウンディーネのメルティーちゃんが手伝ってくれてるんだよね。
それに対してアリサやバブ婆ちゃんは四苦八苦してるよ。
ヌルヌルで足場もおぼつかない水田だもんな。でもさすがにオヤジは微動だにしない。デーツもいいな。
「デーツお前は足腰がしっかりしてるよ。やっぱお前には体術が向いてるよ」
「体術は嫌だ」
「まだそんなこと言ってんのか。お前国1番のオヤジと張り合うつもりかよ!バカだな。
お前絵だったらオヤジと勝負して勝てるじゃん。それと同じだよ。体術ならいつかお前が勝てるんだよ」
「!‥‥」
【 デーツside 】
アレクが何気に言った言葉。あいつの言葉にハッとした。ビリビリ撃たれた気がしたんだ。ずっとずっとプレッシャーだった。
どこに行っても周りの大人は俺のことをどう見てるのかなって。
そうか体術なら勝てるのか‥‥
父上に勝ち負けどころか勝負にさえならないって思ってたのに。
アレクの言うように張り合おうとすること自体が馬鹿なんだよな。でも……。
クロエもアリサもアレクのおかげですっかりよくなった。
俺もなんとかしなきゃって思うんだ。
でも……。
「クロエ‥‥お前‥‥すごいな」
「「「すごい‥‥」」」
家族みんなが同じ思いだった。
すごい!
それはウンディーネの協力で田植えを無双するクロエの姿だった。
手を添えるだけで水が苗を掴んで勝手に稲を植えていく不思議な光景。
「卑怯だぞクロエ!」
「ホントよ!」
「ホントさね!」
「卑怯じゃないもんねー」
「くそー!兄ちゃんの負けだー!初めて田植えをするクロエに農民の俺が負けたー!」
わはははは
フフフフフ
あはははは
「お婆ちゃんクロエが手伝うね」
「ありがとうクロエ様。歳だから腰が痛くてたまらないだよ」
「任せてね!」
自分の分担分が終わったクロエがバブ婆ちゃんの手伝いをしている。
「クロエ私の分も手伝って」
「ええアリサお姉ちゃん」
「ありがとうクロエ!」
「クロエ父の分も手伝ってくれよ」
「うん!お姉ちゃんのあとは父さまね」
「おぉ!ありがとうクロエ!」
「クロエちゃん私も手伝って」
「マリーお姉ちゃんもそのあとにね!」
「ありがとうクロエちゃん!」
「俺も‥」
「ダメー!デーツは絶対ダメでーす!」
「なんで俺だけダメなんだよ!」
「デーツには田植えも修行になるからだ」
「くっ」
わはははは
フフフフフ
あはははは
「なあアリサ。精霊の加護を得たクロエはお前の次に学園で1位になるぞ。だけど精霊の加護には人の考えや人の気持ちまでは助けてくれないからな」
「うん‥‥」
「クロエがちゃんと大人になれるように。お姉ちゃんのアリサが精霊ができないことを教えてやれよ」
「わかったアレクお兄ちゃん!」
「えらいぞ!さすがアリサだ」
「へへへっ」
「デーツ顔に泥がついてるわ。拭いたげる」
「マリーお前もついてるよ。俺も拭いたげるね」
フフフフフフ
わははははは
くそー!
なにが『マリーお前もついてるよ。俺も拭いたげるね』だよ!
なにがマリーだよ!
デーツの奴楽しそうにやりやがって!マリアンヌ先輩もうれしそうにしてるじゃねぇか!
くそくそくっそーーー!
「(旦那さま‥‥)」
「(ああバブ婆ちゃん‥‥)」
「「(情けない‥‥)」」
秋には間違いなく豊作になるぞ!楽しみだなあ。
「アレクお前明後日の午後時間はとれるか?」
「なんだよオヤジ?」
「年寄りどもの懇親会があってな。お前にも出てほしいんだよ」
「なにそれ爺さんたち?」
「まぁ爺さん婆さんたちだがな、年寄りだけに若いメイドは必ずついて来るぞ。お前の好きな獣人メイドもいるんじゃねぇかな」
「行く行く絶対行く!」
(こいつ‥‥そのうちハニートラップにかかるぞ‥‥)
翌日の午後もペイズリーさんに見てもらってる修練中にも。
「明日はアレク君も来てくれるんだって?」
「あー爺さんたちの懇親会ですよね」
「爺さん‥‥まあ確かにそうだな。
イーゼル艦長も楽しみだってさ」
「艦長さんも来るんだ!」
「ああ」
でも艦長よりも楽しみなのはメイドさんたちだよな。ネコミミメイドさんとかいないかなぁ。転ける爺さん助けるついでにネコミミメイドさんも触ったりして!たまらんなぁ。
ガンッッッ!
「痛っ!」
「集中してないぞ!」
「あわわわっ!ご、ごめんなさい!」
(この子はそのうちハニートラップにかかるぞ‥‥)
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