アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
486 / 722
第2章 幼年編

487 狂犬団本部本館完成

しおりを挟む


 「じゃあ本館から発現してくよ。ノームも頼むね」

 「「「おいさおいさ」」」



 「本館さんいらっしゃーい!」

 ズズッ  ズズズズズーーーーーッッッ!











 奴隷商バァムの館を取り壊して、狂犬団の本部兼貧民街の子どもや孤児たちの学校を始めることを正式に決めたんだ。
 建屋の構造や用途は団員のみんなの希望も取り入れて。


 稼働は夏休みに合わせて。その日には各教会の神父様やシスターにも施設を見てもらって安心して子どもたちを送ってもらえる内覧会にする計画なんだ。

 そのための本館。地下2階地上3階の建屋はノームたちの力を借りて、俺がこれまでに発現したものの中で最も大きくて頑丈なものにしたんだ。

 まさかないとは思うけど外部から襲撃されても立て篭れるように、サラさんと俺の2人だけの秘密の仕掛けも用意したよ。まあこれは使うことがないままでいたいけどね。


 地下2階。
 ここは魔法士用の訓練所。ここなら多少暴れてもびくともしない外壁で囲ってあるよ。
 あと、これも使うことがないといいんだけど牢屋も用意した。


 地下1階。
 ここは食料品倉庫と武器庫。ともに温度管理までばっちりの空間だよ。いずれはここに米も大量に保管したいな。

 地上1階。
 ここは狂犬団本部事務所と学校の職員室。校長先生になるサラさんの執務室には扉1枚奥に寝室も用意した。

 あと来客の応対をする部屋や小会議室を前面に、後面には大食堂を配したんだ。同時に100人くらいまで食べられるよ。

 地上2階。
 教室としても会議室にも使える部屋が6つ。
 当初の教室利用は1、2室だろうな。いずれは先生も増えて全室で授業をできるようになったらいいな。

 地上3階。
 体育館又は講堂だね。講堂利用するなら500人くらいは余裕で収容できるよ。


 以上、本館の建屋は俺がこれまで発現したもののなかでは最大の容積。さすがに1日ではキツいから2日ががりで発現なんだ。


 「シルフィ本当にこんなのできるの‥‥?」

 「ぜんぜん大丈夫よ。ウェンディびっくりするわよ。あっ、違った!
 刮目せよウェンディ!」

 「やっぱりあなた、アレク君と同じね。
 ちょっぴり変わった子ね」

 「私変態じゃないし!」

 「そうだけど‥‥ね」






 「じゃあ明日から私はこっちに移るわね」

 「えーサラさんまだ泊まってってよ」

 「ダメよ!ここは居心地が良過ぎるのよ。
 私元々楽をしたがる性格なの。だからそれで油断して奴隷商に捕まったとも言えるんだけどね」

 「そうなんだ」

 「ええ。だからね、今度こそ真面目に自分を律して、自分で決めたことはちゃんとしようと思ってるのよ」

 「‥‥わかったよ。じやあさせめて夜ごはんだけでも食べにきてよ」

 「そうね‥‥アレク君の作るご飯。それすらエルフをダメにするんだけどね……」

 「えーサラ、夜ごはんだけでも食べに来ようよ!せめてあと2、3日くらい!お願い!」

 「‥‥そうね。じゃああと2、3日お世話になろうか」

 「やった!プリンよ!」

 「「プリンプリンプリンプリン♫‥‥」」

 空中をくるくる回る精霊2人……。

 「「ウェンディ(シルフィ)‥‥」」







 「よーし。だいぶ良くなってきたな。魔力もだんだん上がってきてるな」

 「フン」

 「ただなアリサ。まだ魔力をしっかりと火球に伝えられてないんだよお前は」

 「やってるわよ!やっててもできないんだから仕方ないじゃない!」

 「落ち着けって。お前はその短気ってか、すぐに頭に血が上るとこを直さなきゃな」

 「ほっといてよ!」

 「兄ちゃんだからほっとけないんだよ。ちょっと背中触るぞ。俺の魔力を感じてみろ」

 アリサの背中に触ろうとしたんだ。俺の魔力を直に体感できれば理解も早くなるからね。もちろん疾しい気持ちはまったくないよ。マジで。

 「やめてよ変態!触んないでよ!」

 「あわわわっ。わ、わかったよ‥‥」






 「アリサちやん今日の修行は終わった?」

 「うんサラさん!」

 「じやあ私と一緒にお風呂に入ろうか」

 「うん!」








 「あ~気持ちいいわ。お家にあるお風呂でさえ稀なのにお湯がここまで使い放題なんてエルフの私でも初めてよ」

 「ふーん。どうでもいいけど」

 「フフフ。アリサちゃんにもお世話になったわね」

 「えっ?」

 「学校の本館が今日できたのよ。だから私も2、3日後には向こうに移るわね」

 「えーサラさんもっといてよ!ずーっといてよ!」

 「せっかくアリサちゃんとも仲良くなれたしもっとお話もしたいんだけどね‥‥」

 「じゃあもっといてくれたらいいのに!」

 「ダメよ。私ね、ホントは楽をして生きていたかったの」

 「えっ?!」

 「しかもね、私はアリサちゃんと同じような性格だったのよ」

 「それって?」

 「ええ。素直になれないのよね‥‥。でしょアリサちゃん?」

 こくん

 「私ね、故郷には立派な両親とお爺ちゃん、叔母さんがいたの」

 「‥‥」

 「私ね、そんな環境が嫌で逃げ出したのよ」

 「えっ?」

 「そう。成人してたから割と気軽に家出したのよ。それから中原のあちこちを回ったわ。どこかに私の居場所はないかなって」

 「家出‥‥」

 「何年かして両親が亡くなったと風の便りに聞いたわ」

 「!」

 「そしたらね‥‥ますます帰れなくなったわ。恥ずかしいやらなんやらで。
 そんな時よ。帝国て捕まったのは。ちょうどアリサちゃんが生まれたころの話ね」

 「‥‥」

 「私ねアリサちゃん。今になって後悔してるのよ。なんで何も言わずに逃げたんだろうて。
 嫌なら嫌ってせめて話をしてから家を出ればよかったって‥‥」

 「‥‥」

 「私はエルフだからアリサちゃんたち人族より長命よ。こんな私でもまだ間に合ったって思ってるのよ」

 「‥‥」

 「アリサちゃん」

 「なにサラさん?」

 「遅くなって後悔するより早い方がいいわよ」

 「うん‥‥」

 「さっ、私が背中を流してあげる。
 アリサちゃんはホントにかわいいわ。アレクお兄ちゃんがいつもかわいいって褒める気持ちもわかるわね」

 「あんな奴お兄ちゃんじゃないわ!」

 「フフフ。アレク君はここに1年も居ないよの」

 「だって‥‥」

 「ほらアリサちゃん。
 あら短時間なのにあなた魔力が上がってるわよ!」

 「ホント?」

 「ええ!アレクお兄ちゃんのおかげね!」

 「‥‥」



―――――――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...