アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

480 修行開始

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 「俺が帝国を出るまでに。2人ともここまではやれるようにしろよ。見とけ」

 俺は手に矢を番て放つ。25メル先の的のど真ん中を射る。

 「「す、すご(ス、スゴ)」」

 シュッ!
 ザクッ!

 シュッ!
 ザクッ!

 シュッ!
 ザクッ!

 シュッ!
 ザクッ!


 「2人とも集中を切らさず2射3射4射と皆中になれば学園ってか帝都でもほぼ頭張れるからな」

 「「‥‥」」

 「魔力が底をついても、体力がなくなっても。弓は矢さえあれば射ることができるからな」


 「次はデーツの体術だ。
 デーツ。なんで体術かって思ってるだろ?」

 コクコク

 その顔には不満がありありと見えた。

 「理由は簡単だよ。
 お前に剣は合ってない。どれだけやっても半人前がいいとこだ。
 俺が絵を描いてもお前に絶対勝てないのと同じなんだよ。
 だけどなお前は体術なら頭取れるぞ。いずれはお前の父ちゃんすら超えられるくらいにな」

 「ソンナウソツクナ!」

 「なんで弟のお前に嘘なんかつく必要がある」

 「!」

 デーツはハッとした顔をしたんだ。

 「てかお前はもっと自信をつけることだ。そしたらすべてが変わるよ。自信がついて挫折して。そしてまた強くなるんだ」

 「強くなるっていっても自信過剰になることじゃないぞ。俺の故郷でそれは鼻が高くなって天狗になるって言うんだけどな。自分を過信するなってことなんだよ」

 「てことでデーツお前は俺がここを出てく前までに俺に勝ってこの家の長男になれ。そしたら俺も次男になってやるよ。
 ああアリサはずっと俺の妹だからな」

 「くどいわ!なんであんたの妹にならなきゃならないのよ!この変態!」

 「あーもうアリサ、オーガみたいな顔はやめろよ」

 「オーガって!!」

 「それだよそれ!すぐに怒るクセは直せ。一旦深呼吸して10数えるんだ。そしたらオーガはでなくなる。お前かわいいんだからオーガじゃもったいない」

 「‥‥」

 「最後にアリサ。お前の持ってる魔力は今でも充分に高出力なんだよ。ただお前は気が短い。
 そいつを自覚してもっと集中を切らさず落ち着いてやれば‥‥」

 「ファイア!」

 シュッ!
 ザクッ!

 シュッ!
 ザクッ!

 青白い炎の弾丸が的を貫く。

 「「す、すご(ス、スゴ)」」

 「火力の高さは炎の色だ。
 アリサは今の赤色の炎からまずは黄色の炎になるようにしろ。
 いつか白色に、最終的に青白い炎になればお前は学園どころか帝国随一の魔法士になれるぞ。

 大事なことは常にイメージとそれを意識することだからな。

 だから毎日ドラゴンの魔石をニギニギしろ。集中力を高めて火魔法を発現しろ。魔力がなくなれば矢を放て。嫌でも投げ出したくても毎日毎日繰り返してやれ」


 「じゃあお前らは今日からやることやってから部屋に戻っていいぞ。デーツは矢の数、アリサは漂う残留魔力量でやったかどうかわかるからな。
 ちゃんとやれ。
 デーツは明日から体術な」















 「お兄ちゃん!なんであんな奴の言うこと聞かなきゃならないのよ!」

 「俺モ気ニイラナイヨ。デモクロエヲ元ニ戻シタノハアイツダ。俺タチハ自分ノコトダケデ精一杯ダッタ……。今モダ」

 「でも‥‥」







 「サラさんありがとうね。クロエ楽しかったか?」

 クロエはサラさんにぴったりひっついて甘えていたんだ。

 「うん。サラお姉ちゃんはとっても物知りなんだよ」

 「アハハハハ。そりゃ亀の甲より‥」

 「バカアレク!」

 シルフィに思いきり鼻の頭を蹴り上げられた。

 「!さーせんシルフィさん‥‥」

 「「「?」」」

 「気にしないで。こいつときどきわけのわかんないこと言うから」

 「あははは。そのとおりです。どーもさーせん」


 「ああサラさん。これお金。要るものとか好きに使って」

 「えっ!?」

 俺は商業ギルドで下ろした50万Gをサラさんに手渡したんだ。

 「あっ、あの気を悪くしたらごめんね。俺ガキだからこういうときどうやって渡すのとかもわかんないから」

 「‥‥」

 サラさんはじっと俺の目を見て言ったんだ。

 「どうしてアレク君はそこまでしてくれるの?」











 「うーんとね。俺去年世話になったエルフの先生にめちゃくちゃ影響を受けたんだ。
 っていうか大好きなその先生、ああテンプル先生って言うんだけどね。
 その先生が言ってたんだよ。人との出会いは繋がる縁や糸だって。

 テンプル先生が言うにはね。
 サラさんが俺と会ったのも縁。俺がサラさんと会ったのも縁なんだって。
 そんでね、テンプル先生がこう言ったんだ。
 「ワシらは『輪廻の中で会うべくして会っているんじゃよ』」

 「えっ?!」





































 サラさんの顔からみるみるうちに涙が溢れた。

 「私の名前はサラ・テンプル。ベルナルド・テンプルは‥‥私のお爺ちゃんよ」

 「ええっ!?」

 「私は両親の期待が嫌で里を逃げ出したの。そのころからお爺ちゃんは中原中で名を馳せていたけどね。

 それから中原のあちこちを自分を探して旅したわ。そして帝国に来てすぐに奴隷商に捕まった。

 マリーは私の甥っ子、ホークは従兄弟よ」

 サラさんが大粒の涙を流したんだ。




 サラさんは立派なご両親の期待が重過ぎて家出したんだという。そして旅の途中に両親の死を知ったという。


 「そっか……。世の中狭いんだね」

 「フフフそうね‥‥」

 「じゃあアレク君の構想、具体的にどうするかのか、私はどう関わったらいいのか決めようか」

 「うん!」

 「あっクロエ‥‥」

 いつのまにかクロエはサラさんの膝の上で眠っていたんだ。バブ婆ちゃんもいなくなっていた。

 「先にクロエを寝かせてくるよ」

 「ええ」

 そして2人であれこれと話をし始めたんだ。そしたらね。

 「あっ、ちょっと待っててサラさん。知ってる人が来たから」

 探知に引っかかるそれはペイズリーさんの気だった。
 早速ペイズリーさんが報告に来てくれたんだ。

 「遅くに悪いねアレク君」

 「いいっすよペイズリーさん」

 「夜なのにわかるな。あの汚いごみ屋敷がきれいになってるよワハハハハ」

 月夜だからかな。門扉までゴミなんか当然無いからね。


 「奴隷商の館、アレク君の好きにしてくれていいよ。
 帝都騎士団としては建屋と土地をタダで譲渡するんだっさ。その代わり報償金も無しってことでね」

 そう言ってペイズリーさんがいたずらっぽく笑った。

 「ありがとうございますペイズリーさん。
てことは建て直してもいいですか?」

 「ああもちろんだよ。奴隷商だったことがわからないくらいの建屋を建ててくれたまえ」

 「高さ制限とかありますか?」

 「そうか!まさか君の土魔法で建てるということかい?」

 「はい」

 「わははは。好きにしたまえ。王国ヴィヨルド領の時計台の再来だね」

 「あっ、そういや忘れてました!
 あのヴィヨルドの時計、こっちの帝都も持ってきていいですか?できれば帝都学園と4地区の教会にも置きたいんですけど?」

 「ワハハハハ。もちろん好きにしたまえ」

 「ありがとうございますペイズリーさん」

 「じゃあ連絡もしたし私は帰るよ。今からネビュラ女王への詫び状を書かねばならんから頭が痛いよ」


 ギギギーーッッ




















 「お話の途中失礼致します。前帝都騎士団長ペイズリー閣下とお見受け致します」

 サラさんが中から現れたんだ。

 「あなたは‥‥改めて帝国人を代表してお詫び申し上げる。長い間たいへん申し訳ないことをした」

 ペイズリーさんがスッと片膝を落とした。最上級の儀礼の形をとったんだ。

 「お直りください。私はただのエルフ。
 そうアレク君が始める子どもたちの学校の名もない教師でありますれば」

 サラさんがペイズリーさんに対して教科書のようなカーテーシー(折膝礼)をした。


 「ペイズリー閣下、詫び状は不要です。ただネビュラ女王にお伝えいただけますか。
 貧しい子どもたちを救おうとするアレク君の趣旨に賛同してあとしばらくは帝国にいると。今度は逃げずに自分の口で話しますとサラが申していたと」






















 「ペイズリーしかと承った」







 「じゃあサラさん。俺お昼までは学校があるから明日の午後から学校造りを手伝ってくれる?あと狂犬団も紹介するから」

 「ええ。楽しみね」

 「うん!」




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