アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

477 学校創立構想

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 北区の教会に着くまでに。ハチから凡そのことは聞いたんだ。


 「で団長、今からあの神父のお宝を全部いただいちゃいますからね」

 ヒッヒッヒッヒッ‥

 「それはいいけど教会に殴り込みなんて嫌だぞ俺」

 「あー違うんっすよ。団長の土魔法でお宝の真下までいって宝箱から金だけ抜きとってくるんですよ。代わりに石詰めとけばわかんないし問題なしですからね」

 「なるほど!ハチお前悪知恵がすごいよな」

 「いやーそれほどでもないっす」

 「褒めてねーし」







 たしかにハチの言うようにモグラみたく地下を掘り進めていけばば誰にも見つからないよな。

 探索魔法でだいたいの場所はわかるし。もちろん浮上時に人の気配がわかるのは言うまでもないし。


 「でも泥棒したってバレないのか?」

 「大丈夫ですよ。たぶん神父は帝国を離れた海上くらいで宝箱を開けて気づくでしょうね。
 そんときにはもうぜんぜん遅いんですけどね。ヒッヒッヒッヒッ」

 「ハチ、やっぱお前は極悪人だよ‥‥」

 「いやぁそれほどでも‥‥」

 










 「たぶんここだ。上がるぞハチ」

 「へい団長」

 ガンガンッ  ガンガンッ

 浮上したそこには鉄の箱?があった。

 「めっちゃ頑丈な宝箱じゃねこれ?」

 「ホントっすね」

 それは大きな段ボールサイズの宝箱だった。頑丈な上に動かないよう鎖で幾重にも巻かれてある宝箱だ。
 冬になると東北の爺ちゃんがよく送ってくれたリンゴ箱くらいの大きさの金属製宝箱だ。

 宝箱の真下には鉄板まで敷いてあった。宝箱の内蓋にも鍵がいる仕様だな。
 これ仮に泥棒が見つけてもどうしようもないんじゃないかな。
 でも金魔法を発現できる俺にはまるで関係ないけど。


 「これ金属箱だからよかったけど木箱だったらどうする気だったんだよハチ?」

 「そうなりゃこの宝箱ごと団長に落としてもらいますよ」

 「うん‥‥で誰が運ぶんだ?」

 「団長に決まってるじゃないっすか。僕力ないし」

 「だからお前はうっかりハチなんだよ!」

 「痛い痛い!団長やめて!」

 いつも俺が大人からやられるようにハチの頭をグリグリしてやったぜ。

 

 「しっかしびっくりするくらい溜め込んでやがるよなぁ」

 「これ全部違法なやつですよ団長」

 「だよな」

 「ヨシ。じゃあ俺が取って渡すからハチは下に置いてけ」

 「了解っす」


 ハチの予想どおり金属製宝箱の中には金がたくさん入っていた。貨幣じゃなくって1k、500g、300g、200g、100gのインゴット(延べ棒)なんだ。
 そんなインゴットが宝箱に幾つも詰まっていたんだ。

 ちなみに金の価値はこっちの世界も変わんないから100gのインゴットが100万円、1kで1 ,000万円ってとこだね。


 「この神父よっぽど金が好きだったんだな」

 「僕はしゃべってないけど服装も派手な金ピカジジイでしたよ。金の腕輪や指輪、宝石入りの金の杖なんか持った神父でしたもん」

 「まじめに清貧を貫いてる神父様やシスターとは真逆だな」

 「そうっすよね」


 目に浮かぶのはモンデール神父様、師匠(ディル神父様)、シスターナターシャなど俺が知ってる聖職者の人たちだ。うん、まるっきり違う。


 「まてハチ。誰か来る!」

 「えっ!?」

 「そのまま動くなよ!」

 ギギギーーーッッ

 扉が開ける音がした。告解室に1人入って来たな。


 「くそーっ!バァムの馬鹿め!下手うちおって。このままではわしも帝国追放になってしまうわ」


 「(団長神父の声っす)」

 「(じっとしてろよハチ)」

 「(はいっす‥‥)」


 ギギギギッッ

 「よしよし。宝箱に異常はないの。まぁ仕方ないかの。それなりに儲けたからな。次の土地でまた金儲けじゃわい」

 ギギギーーーッッ

 扉が閉まり、神父が立ち去っていく気配がした。

 「いいぞハチ」

 「了解です団長」







 「全部盗ったぞハチ」

 「じゃあ団長目一杯石詰めといてください」

 「わかったよ」

 「あの神父びっくるだろうなぁヒッヒッヒッヒッ」


 「ハチこの金プラス奴隷商の館にも金あるんだろ。そんでもってたぶん報償も出るだろ。どうすんだ?」

 「各地区の炊き出しは数年は余裕でできますね。
 そんでも余裕があるたくさんのお金で団長、奴隷商の館、土地ごと買っちゃいましょうよ」

 「ハチ‥‥俺も同じこと考えてたよ。
 貧民街でも家のない孤児や獣人の子たち集めた寮にすんだろ」

 「はい団長の言うとおりです!」

 「やっぱりかハチ!そんで学校も作るんだよな!行き場のない子どもたちの集まる場所作りだよな!」

 「へっ?違いますよ団長。まぁ学校って考えは賛成ですけどね」

 「じゃあお前奴隷商の館買い取って何する気だったんだよ?」

 「決まってるじゃないっすか。『狂犬団』のアジトっすよ!幸い大人も20人入りましたしね!ヒッヒッヒッヒッ‥」

 「ハチ‥‥俺お前が怖いよ‥‥」

 「ドン先輩やトン先輩が言ってるでしょ。
 団長の覇道の足がかりっだって」

 「いや俺そこまで考えてないから。だいたい黒い馬ももってねーし」

 「黒い馬の意味がわかんないっす」

 「いーんだよ。まあもう少し緩くやろうぜ」

 「ダメっすよ団長。もうみんなその気で動いてるですから」

 「あのなハチ、学園生全員ぶっ倒すのは変わんないけど、それ終わったらふつつに楽しい学園生活を送ろうぜ。そんな覇道なんてなしにしてさ」

 「団長‥‥今でもギン先輩みたいなかわいい女子がいるんですよ。このまま団員がもっと増えたら団長の好きな猫耳の女子とかもいっぱい増えますよ?猫耳の女子もふもふしたくないんっか?」

 「やるぞハチ!」






 奴隷商のバァムの屋敷に戻った。
 そこにはたくさんの帝都騎士団の人たちが動いていた。犯罪の現場だもんね。
 ペイズリーさんが俺を待っていたんだ。教会行ってたのバレてないよな。


 「アレク君転向早々やってくれたなワハハハハ」

 「たまたまっすよ」

 「今ごろ北区の教会にも騎士団員が行ってるぞ」

 「そ、そうですか」

 「しかし奴隷商の奴め。エルフまで奴隷にしていたとはな。現皇帝名で女王に詫び状を書かんといかんわ」

 「そりゃたいへんですね」

 「考えただけで頭が痛いよ。
 でな、アレク君には帝都騎士団から報償が出ると思うぞ。黙っててもらう意味もあってたんまりとな」

 「あはははは」

 「アレク君から何かほしいものの希望はあるかい?正直金は要らんだろワハハハハ」

 「ペイズリーさん。この土地と建物‥‥俺に売ってください」

 「ん?何をするんだい?」

 「俺いつのまにか学園で狂犬団っていうクラブ活動?やってるんですよ」

 「クックック。狂犬団な。ノーツ学園長から聞いてるぞ」

 「俺その狂犬団の団員に手伝ってもらって帝都の貧民街の浮浪児の居場所ってか学校を作りたいんです」

 「学校?」

 「はい。てか教会の初級学校に入る前の幼児のための学校からなんです。貧民街にいる子どもや浮浪児も含めて。お金がなくて学校に行けない子どもたちが奴隷商に捕まらず安心して寝泊まりできる宿舎を作りたいんです。

 いじめられて教会学校には行けなくてもその学校に行けば字を教えてくれて飯も食えれるようなる学校。
 そんなのを成人になるまで居られるくらいの場所を作りたいんです」

 「それはまた‥‥」

 「それと‥‥具体的には決めてませんが成人も含めて弱い人たちが強くなれるような居場所を俺が作ります」

 











 「わかった。やってみるといい。さっそく騎士団に掛けあってみよう」

 「お願いしますペイズリーさん」

 「それとどうだい?もうすぐ20日くらい経つのかな」

 「はい毎日楽しいです。ペイズリーさんの勧めで皇帝のおっさんの家にしてよかったです」

 「皇帝のおっさん‥‥ワハハハ‥‥で子どもたちはどうだい?少しは改善したかな?」

 「次女のクロエはすっかりよくなりましたよ。長男長女はまだまだですが」
 
 「クロエちゃんがかい!まだ1か月にも経たないのに?」

 「はい」

 「そうか。君に頼んだのは間違いなかったな。
 そういやクロエちゃんの誕生日たしか来月だったな」

 「知らなかった!そうなんですね。
 じゃあ誕生日の日の夜は皇帝のおっさんにも顔見せるように伝えてください。ああ家はめちゃくちゃ改造したから怒っちゃだめですからねと伝えといてください」

 「ワハハハわかったよ。大殿もさぞや喜ぶだろう。
 ああ忘れるところだった。アレク君冒険者ギルドへ行ってくれ。
 今回の件も含めて報償も出てるはずだからな」

 「わかりました」







 「お待たせしましたサラさん、ウェンディ。今日はこのまま家に泊まってくれませんか」

 「いいけどって言うか行くあてのない私たちには嬉しいんだけどね。
 逆にアレク君はいいの?」

 「はい!話が長くなりますから」

 「そう。じゃあお世話になるわね」

 「はい!」

 「ウェンディ、アレクが作るご飯は美味しいんだよ。特にデザートがすっごく美味しいんだよ」

 「へぇー。楽しみね。でもでざあと?」

 「うん。アレク今日のデザートはプリンにしてよ」

 「わかったよシルフィ」

 「やったー!プリンプリンプリンプリン♪」


 「じゃあアレク君改めてよろしくね。握手していい?」

 「はい。もちろんです」

 魔力も包み隠さずそのままの俺をサラさんに伝えたんだ。直感でやらなきゃって思ったから。

 「あら!そうなのね‥‥」

 (繋がる縁、運命の糸か‥‥そうか、きっとアレク君がそうなんだねお爺ちゃん)


 サラさんは驚いた顔をして、それから目にみるみる涙が溜まっていったんだ。誰か俺がこれまで会ったことのあるエルフさんとサラさんが繋がったんだな。

 「すごい‥‥さすがエルフさんですよねサラさん」

 「そう?もう10年何もしてないから魔力は減る一方よ」

 「ゆっくり休んでもらって元の魔力量に戻ったらいいんですよ。元はすごかったんですね!」

 「そうね。アレク君が言いたいことはわかるわ。私も油断があったのは認めるわ。

 それでもね、アレク君も隷属の首環だけは気をつけなさい。あと精霊にとっては傀儡魔法よ」

 「そうなんですね」

 隷属の首環は着けられたら最後逃げられないんだな。そういやホーク師匠から傀儡魔法の解除方法は教わったよな。

 「家に帰りながら少し話しますね。
 俺、あの奴隷商の館と土地を全部買うことにしました。そしてそこに‥‥」



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