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第2章 幼年編
476 ハチ本領発揮
しおりを挟む「チュチュチュチューーッ!」
ハチの首すじに短刀をあてながら小男が出てきたんだ。鼠男?獣人?ミックス?
「チュチュッッ残念だったな狐仮面。大丈夫ですかいバァムの旦那!」
「クーヘンか!よくやった!」
「チュチュッ!そりゃぁもう当然でさあ」
「ヨシ!おい狐仮面!お前は解除具をナジローの頭につけて首環を外せ!」
「言われなくても外すよ!」
俺は隷属の首環の解除具をハチから受け取った。
隷属の首環はこの解除具、大きめの耳あて(イヤーマフ)みたいなものを対象者の耳につけてしばらくすると首環がカチッと自然に外れるんだよね。
「ナジローさん。外すからね」
カチッ!
まだ暖かいナジローさんの首元から環が外れた。
「ヨシ。じゃあお前がその首環をそのまま自分に付けろ!」
「なんでこんなヤバいもん俺が付けなきゃならないんだよ!」
「うるさい!狐仮面!」
マズいな。俺があんな奴の言いなりにでもなったら洒落になんないな……。
「チュチュッ!早くしろ!さもないと狸の首にこいつを刺すぜ
!」
鼠男がハチの首すじに短刀を押しやった。
「ワハハハハ。ナジローが負けたときはヒャっとしたがな。
狐仮面のガキ。お前も腕が立つようだからこれからはわしが一生面倒みてやるよ」
「チュチュッ!狐仮面ほら早くしねぇか!狸のガキがどうなってもいいのかよ!」
ん?ハチ?
「オラオラ狸がプルプルしだしたぞ!早くしねえと狸の串刺しだぞチュチュチュッ」
「おいネズミ」
「見ろよ狸がブルッブルに震えまくってるじゃねぇか!
かわいそうな狸がどうなってもいいのかよー!」
「テメー!」
「チュッ?なんだ狸のガキ。助けてくださいってか?」
「テメー!」
「さっきから聞いてりゃ狸たぬきと舐めやがってネズミめえぇぇぇーーー!」
ガブウウゥゥゥッッッ!
「チュー痛ぇぇ!」
短刀をかなぐり捨て腕を抑えてその場に蹲るバァムの手下鼠男。
これ骨までいったな……。なんちゅー歯だ。いや牙だな。
「「「ハチ‥‥」」」
「さて。もう大丈夫ですよ。思う存分やりなさい狐仮面君!ホッホッホ」
「ハチ!たぬき!テメー!」
「あはははは‥‥すんません団長」
「ハチ、今度こそバァムを縛って首環も付けとけ。あと鼠男も縛っとけ!」
「がってんだい団長!」
俺は牢にいる子どもたちの首環を外していく。中には猫獣人みたいな男の子と女の子もいた。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとう狐さん」
「ありがとう狐ちゃん」
「兄妹か?」
「「はい(うん)」」
「どこで捕まったんだ?」
「あの‥‥僕たち北区の貧民街に住んでたんです。3日前に母ちゃんが死んじまって。焼代が払えないなら神父様が奴隷商に立て替えてもらえって」
「契約書は書いたか?」
「僕たち字は書けないから神父様が書いてました」
「神父様左利きなんだよ!私といっしょなの」
「‥‥ドン、トン」
こくん
こくん
「「わかりました団長」」
「お前ら兄妹はこの俺が必ずなんとかしてやるからな」
「「ありがとうございます」」
「少しの間だけこのお姉さんの言うことを聞くんだぞ。おギン頼む」
「「「はい(うん)」」」
▼
「おまたせ」
最後にエルフのお姉さんの下にきた。エルフのお姉さんの首環も外したんだ。
「もう大丈夫だよお姉さん」
背すじをピンとしたエルフのお姉さんが薄っすらと口角を上げて言ったんだ。
「ありがとうねアレク、シルフィ。
名前言ってなかったわね。私はサラ。この子がウェンディ。
勝手気ままに生きてたら最後に奴隷商に捕まってもう10年にもなるわ。自業自得よね‥‥」
「でももう大丈夫よサラ、ウェンディ」
「「ええありがとうねシルフィ」」
風の精霊ウェンディも1人で飛べるまで回復した。
サラさんと同じ。この子もお淑やか系の美人精霊だ。俺の周りにいる風の精霊ってみんなこんな感じなんだよな。約1名違うんだよなぁ。なぜだろう?
「おいアレク!てめー聞こえてるぞ!」
「あわわわっ!す、すいませんシルフィさん!」
思わずジャンピング土下座をしてたよ俺。
「「まあ」」
フフフフフ
ふふふふふ
「サラ、ウェンディあのね。実はアレクは変‥」
「あーあーあーごめんなさいごめんなさい!シルフィさんもう悪いこと思ったり言いません!考えもしません!
だからやめてください!」
「チッ。許してやるよ。今度だけだかんな」
「はい男前のシルフィさん」
「あなたたちってすごく仲良しなのね」
「「はい!(ええ!)」」
「サラさんはこれからどうされますか?」
「そうね。ここに囚われてもう10年は経ったからね。本当はどこか人族の子どもたちを教える先生になりたくて里を出たんだけどね……。
今更帰るところもないわ。どうしましょう?フフフ」
サラさんが寂しそうに、自嘲気味に笑ったんだ。
「俺サラさんにお願いがあります。少しだけ、1年だけ俺に付き合ってくれませんか?」
「あら?私アレク君からすればお婆さんよ。まして汚れてるし‥‥」
「そんなことありません!サラさんは顔も心もめちゃくちゃきれいです!
あっ!えっ!?ち、ち、違うんです。そうじゃなくてその‥‥あの‥‥」
あー耳まで紅くなってるよぜったい。
「ほらあんたまた緊張しちゃって。
サラ、アレクはすぐに緊張するし、ちょっと馬鹿だけど‥‥
この子の話を聞いて損はないわ。永く生きてる私が保障するわ。アレクはこれまでのヒューマンにはない子なのよ」
「そうね‥‥行くところもないし。お話だけでも聞かせてもらおうかしら」
「はい!」
俺がエルフのサラさんと話をしてる間、ハチもまた奴隷商のバァムから聞き出していたんだ。
「あんたなんで僕たち海洋諸国人がここに来たかわかるか?」
「(ドン様ハチが嘘ついてます)」
「(いつものことだろ)」
「そんなもん知るわけないわ。くそっ!」
「あのな僕たち北区の神父様からの依頼で来たんだぜ?」
「なに?」
「あそこ貧民街の子どもたちを売り過ぎて騎士団に目をつけられてな。賄賂貰ってるお前らの口封じが必要なんだってよ」
「クッ、クソーっ!あの生臭神父めー!してやられたわ!」
「ちなみにあんたこれまで1人いくら神父に渡してた?」
「ふつうのガキは50,000G、金になる獣人のガキは200,000Gだ」
「へぇー。大金渡してたんだな。
あんたらはこれから騎士団に捕まるから絞首刑かよくても犯罪奴隷だろ。だけどあの神父様はお咎めなしだぞ」
「なぜだ?あいつは俺たち奴隷商よりも悪いんだぞ!」
「だって神父様は法国管轄の人間じゃん。帝国が勝手に裁けないじゃん」
「‥‥」
「であんたたちが首吊ってる間に国外退去。金持ってトンズラさ。だからあんたらだけやられ損だな」
「くっ‥‥」
「悔しいよなぁバァムの旦那。
どうせガキども売ったお金も足がつくからって貨幣でなく金で渡してたんだろ。隠し場所教えろよ。
せめてあんたらの悔しさくらい僕たち海洋諸国人が晴らしてやるからよ」
「教会の告解室。その下に隠し扉がある。その中に金を隠してやがるぞあの神父」
「そうかい。ありがとよ」
「「「(狸コワっ!)」」」
ワーワーワーワーワーワー
ザワザワザワザワ
外から喧騒が近づいてきた。
「団長急いでくださいよ!」
「ん?なんで急ぐんだハチ」
「そろそろ騎士団がくるはずなんです。急がなきゃ!」
「ドン先輩、トン先輩、ギン先輩たちは騎士団の相手をしてください。これまでのこと正直に話しても問題ありません」
「「「わかった」」」
「さっ団長僕たちはすぐに教会に行きますよ!騎士団が来る前にね」
「なんでだよ?」
「それも行きながら話します」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「?わかったよハチ」
サラさんにはここで小1点鐘待っててもらうことにしたんだ。
「よし行くぞ狸!」
「団長僕狸じゃない!」
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