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第2章 幼年編
473 孔明かよ!
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473 孔明かよ!
カクサーン家の3男ハチは小さくて小太り。ぷっくりとした外観は狸獣人にも見える人族だ。
見た目もほのぼのとしてかわいいのがハチなんだよね。
そう見た目だけはね。実は腹黒いやつだとはこのあとに俺たちは知るんだ。
カクサーン家はこの春に王都から帝都に引っ越してきた。
だからハチもまた父ちゃんのカクサーンの仕事にあわせてこの春から王都学園から帝都学園に転校したんだ。
ハチは学園内では俺についていくようにって父ちゃんから言われてるんだろうけどそんなことはおくびにも出さないやつなんだ。
1年1組だから武力も知力もあるんだろうけどカクサーン曰く商才は長男や次男よりもあるらしいんだ。
父ちゃん曰くいつもぼーっとしてるからうっかりもやらかすらしい。まあ見た目どおりに憎めないかわいい後輩なんだけどね。
そんなハチが言ったんだ。
「団長1人も逃しちゃダメですよ!
おらてめーら!絶対逃げんなよ!」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「おうおう言うなぁ狸の坊や。
でも心配すんな。アレク以外には手を出さねぇからな」
「誰が狸だよ!」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「「「囲め囲め」」」
「「「逃すなよ」」」
冒険者の身なりをした若者たちに囲まれながら人目につかない裏通りまで歩く。
「(もうすぐだよ。もうすぐ)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(トン見ろよ。さっきからハチの薄ら笑いが止まんねぇぞ。俺こいつらよりハチのほうが怖い)」
「(団長‥‥俺どっちも怖いです)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
しーーーーーーん
周囲からまったく人気がなくなったんだ。進行方向の両側を高い壁に囲まれている住宅街にきたんだ。
この辺りからお金持ちの家が続いてるんだろうな。まるで城壁みたいな壁が続いてるから。
こんな場所で強敵と相対したら。壁歩きができなきゃそれこそ詰んじゃうよな。まあこいつらくらいどうってことないけど。
「このへんでいいか」
先頭を歩いてたリーダーが振り返りざまに言ったんだ。
20人ほど。
リーダーを筆頭にまだ成人になりたて。人族の冒険者だな。
「よおアレク。お前学園でちょっくらやりすぎたらしいな。
だからなちょっと痛いめに遭ってくれや。1、2週間学園を休んでくれると助かるな」
わはははは
ふふふふふ
がはははは
「へっ?なに言ってるのお前ら。ふざけてるとぶっ飛ばすぞ」
「「「おぉー!」」」
「「「ワハハハハ言われてるぞリーダー!」」」
「いいなぁ強気なガキってのは。俺らもガキのころはそうだったよ。だがな子どもじゃ大人に勝てないってことも知らなきゃな。
アレク。お前には大人との力の違いを思い知ってもらうからな」
わはははは
ふふふふふ
がはははは
「世の中には俺よりはるかに強いやつがいることくらい知ってるよ。
でもそれはお前らじゃない」
わははははは
ガハハハハハ
あははははは
「いーなその強気。俺は嫌いじゃねぇぞ。
心配すんな。なに手足取ろうとかじゃねぇんだよ。ちょっとばかり顔が腫れるだろうがな」
「あんたひょっとして帝都学園の卒業生か?」
「「「!」」」
全員がそうじゃないみたいだけど半数くらいが帝都学園の卒業生みたいだった。
「そこまでわかるか。さすがだな」
「さすがもなにも。ただのゴロツキだったらこんな優しい段取りは組まないだろ。
で先輩。誰からの依頼だ?」
「悪いな。それは言えねえよ。ただ受けた以上俺たちも依頼には誠実に応えねぇといけないからな」
「(ほら団長。この人たちそんなに悪くないでしょ)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(うん)」
「(団長ハチのやつますます薄ら笑いが酷くなってきましたよ。やっぱり俺こいつが怖いです)」
「(だから言っただろトン!俺も怖いわ!)」
「(じゃあ団長逃げないように壁を塞いじゃってください)」
「(わかったよハチ)」
「どとん。土壁の術!」
ズズズーーッッ!
ズズズーーッッ!
「「うわっっ!」」
「「なんだなんだ!」」
「「こ、こいつの魔法か!」」
「「自分から逃げ道塞ぎやがった!」」
「じゃあいいっすよ団長。
トン先輩は俺が殴られないように守ってくださいよ」
「なんかハチの思いどおりに進んでるなトン」
「フッ。そうですね団長」
まっいいか。
「じゃあ団長‥‥やっておしまい!」
ヒッヒッヒッヒッ‥
ハチお前はコーモン様かよ!コーモン様が指示出して暴れるのはスケサーンとお前の父ちゃんカクサーンだろ!
「さあかかってこいよ。強い冒険者の先輩たち」
「「「舐めやがって!
」」」
いつのまにか。前後で20人対俺たち3人の構図が出来上がってたんだ。
「リーダー俺たち魔法職からいくぞ。
アレクちょっとばかし火傷してもらうからな」
2人組が前に立って杖を俺に向けたんだ。
「心配すんな。すぐに消してやるから」
その横には杖先からチョロチョロと水を流している男もいたんだ。
なるほど。2人が火魔法士で1人が消火役の水魔法士なんだ。
「団長ちょいとばかり懲らしめておあげなさい。でもやり過ぎちゃだめっすよ」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「わかったよハチ」
トンの後ろから不思議な声援を送ってくるハチ。
「私に考えがあるわ」
「どうするのシルフィ?」
「火には火で返すのよ。そのまままとめて火だるまにしてから水ぶっかけて最後にドライヤーでいいんじゃない?」
「なんかやり過ぎじゃない?」
「大丈夫大丈夫。すぐ燃やしてすぐに消すし。最後はドライヤーだから服も乾くし大したことないわよ」
異世界の精霊が平然とドライヤーという事実に思わず笑っちゃうよ。
俺とシルフィがそんな話をしてるとは知らない魔法使いたちが魔法を発現したんだ。
「「ファイアボール!」」
ゴオオォォォーーッッ!
ゴオオォォォーーッッ!
2人からハンドボールほどの火の玉2つが放たれる。
ショボっ!
本当に火の玉じゃんこれ!
「作戦どおりいくわよ!」
コクコク
「出すならこれくらい出しとけよ。
ファイアボール!」
ゴゴゴオオオオオォォォォォーーーッ!
「「「な、なんじゃこれ!」」」
「「「こ、こいつの火魔法か!」」」
通路の幅いっぱいに広がる火炎放射器並の炎弾を発現する。もちろん火力控えめの赤い炎だよ。
ジュッッ!
ジュッッ!
飲み込まれる2発のファイアボール。
ゴオオオオオォォオォーーーッッッ!
全面に広がった炎の壁が周囲を押し潰すように前方に進んでいく。
「「「うわぁぁぁぁぁーーーっっ!」」」
ドンドンドンドンッ
「「「逃げられねぇ!」」」
出口のない壁に囲まれた20人が悲鳴をあげる。
そして20人全員が炎に包まれた。
「「「うわあああぁぁぁぁぁッッッ!」」」
一瞬にして逃げ惑う火柱20体。
「土砂降りウォーター!」
ざあああぁぁぁぁぁっっっ!
間髪入れずに放水を入る。
ジユウウウッッッ!
「「「あ、ああ‥‥」」」
「「「う、ううっ‥‥」」」」
一瞬だから大して火傷もしてないと思うよ。多少ヒリヒリするくらい。
ただみんなの頭はチリチリだけど。
「そのまんま動くなよ先輩たち。すぐに乾かしてやるよ。ドライヤー!」
ブオオオオオォォォォーーーッッッ!
「「「土魔法、火魔法、水魔法、風魔法かよ‥‥」」」
「「「規格外過ぎるだろ‥‥」」」
早くも戦意喪失した20人が項垂れている。
「(まだっすよ。もっと団長の怖さを身をもって味わってもらうっすよ」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(トン俺あいつが怖い‥‥)」
「(団長俺も怖い‥‥)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(さっ団長こいつらのリーダーも剣で倒しちゃってください。いいですね加減してくださいよ!)」
「(はいはい)」
「このまんま終わりかよ。おい先輩たちのリーダー。せっかく刀持ってるんだからかかってこいよ」
クイクイって左手指を上げて誘ってみる。
「くっ、くそー!」
「やってやる!」
即座に飛びかかるリーダーの男が両手剣を振り翳して向かってきた。
ブンンッッ!
「遅い!」
ドウゥゥゥッッッッ!
一足飛びにリーダーの腹部を刀の背で薙ぎ、そのまま返す刀で両手剣の半ばほどを強打する。
ガンンンッッッッッ!
足下に叩き落とされる両手剣。
ドンンンッッッッッッ!
両手剣を落としたまま痺れる両手で呆然と俺を見るリーダー。
「ヨッシャー!ねーねーシルフィなんて言おうか?何がカッコいいかなぁ?」
「そうねぇー?」
「これにて一件落着とか?」
「おとといきやがれとか?」
「「うーん?」」
と。
いつのまにか前に立って笑顔を見せるハチがいたんだ。
「このへんでいいでしょう団長」
「「あーこいつ!」」
「おいしいとことりやがった!」
「なによ狸の子!」
「先輩方まだ闘りますかな?ホッホッホ。
こちらのアレク君を誰と心得る?
アレク君は先に王国で開かれた未成年者武闘大会の優勝者ですぞ」
「「「ま、マジか!?」」」
「前皇帝のアレクサンダー陛下も認め帝都学園1位のマルコ君でさえ足下にも及ばない子がアレク君ですぞ。
それをお主ら‥‥身のほどを知りなされ!カーツッッ!」
なんだよそれ!?
しかもカーッッって喝のことかよ!
クソーッ!良いとことりやがってハチめ!
ササササッ
ササササッ
ササササッ
「「「すいません‥‥」身のほど知らずでした」」」
「「「申し訳ありません」」」
「「「ごめんなさい」」」
いつしか20人全員が正座してリアル反省の体勢となっていたんだ。
「わかればよろしい。で依頼主はだれですかな?」
「狸さんのおっしゃるとおり俺たち半数は今年学園を卒業したばかりの卒業生なんです」
「(なぁトン俺たち居ても居なくてもよくない?)」
「(ええ団長‥‥)」
「で誰の指示ですかな?」
「そ、それは‥‥」
「そうですか。
じゃあ言わなくていいですよ。団長ここ塞いでくれます?」
「いいけど通り難くなって近所の人に迷惑じゃね?」
「じゃあ団長この先輩たちがいることだけ箱にして沈めてください」
「いいよハチ」
「どとん。コンテナボックス!」
ズズズーーッッ!
一気に20人がコンテナ箱に入ったみたいに地下に沈んだんだ。
「では先輩たちはこのままここに1週間ほど反省してもらいましょう。
では皆さんご機嫌よう。ああ僕は忙しいからもしこのまま忘れたらごめんなさい。
じゃあ団長蓋しちゃってください」
「「「おいおいおい!」」」
「「「やめろー!」」」
「「「勘弁してくれー!」」」
「言う言う。なんでも言うから許してくれ!6年10組、6年10組の後輩たちからの指示だ」
「ほら団長。トン先輩。手駒も手に入りましたよ」
「「怖いわハチ!」」
ハチ‥‥お前軍師孔明かよ!
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カクサーン家の3男ハチは小さくて小太り。ぷっくりとした外観は狸獣人にも見える人族だ。
見た目もほのぼのとしてかわいいのがハチなんだよね。
そう見た目だけはね。実は腹黒いやつだとはこのあとに俺たちは知るんだ。
カクサーン家はこの春に王都から帝都に引っ越してきた。
だからハチもまた父ちゃんのカクサーンの仕事にあわせてこの春から王都学園から帝都学園に転校したんだ。
ハチは学園内では俺についていくようにって父ちゃんから言われてるんだろうけどそんなことはおくびにも出さないやつなんだ。
1年1組だから武力も知力もあるんだろうけどカクサーン曰く商才は長男や次男よりもあるらしいんだ。
父ちゃん曰くいつもぼーっとしてるからうっかりもやらかすらしい。まあ見た目どおりに憎めないかわいい後輩なんだけどね。
そんなハチが言ったんだ。
「団長1人も逃しちゃダメですよ!
おらてめーら!絶対逃げんなよ!」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「おうおう言うなぁ狸の坊や。
でも心配すんな。アレク以外には手を出さねぇからな」
「誰が狸だよ!」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「「「囲め囲め」」」
「「「逃すなよ」」」
冒険者の身なりをした若者たちに囲まれながら人目につかない裏通りまで歩く。
「(もうすぐだよ。もうすぐ)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(トン見ろよ。さっきからハチの薄ら笑いが止まんねぇぞ。俺こいつらよりハチのほうが怖い)」
「(団長‥‥俺どっちも怖いです)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
しーーーーーーん
周囲からまったく人気がなくなったんだ。進行方向の両側を高い壁に囲まれている住宅街にきたんだ。
この辺りからお金持ちの家が続いてるんだろうな。まるで城壁みたいな壁が続いてるから。
こんな場所で強敵と相対したら。壁歩きができなきゃそれこそ詰んじゃうよな。まあこいつらくらいどうってことないけど。
「このへんでいいか」
先頭を歩いてたリーダーが振り返りざまに言ったんだ。
20人ほど。
リーダーを筆頭にまだ成人になりたて。人族の冒険者だな。
「よおアレク。お前学園でちょっくらやりすぎたらしいな。
だからなちょっと痛いめに遭ってくれや。1、2週間学園を休んでくれると助かるな」
わはははは
ふふふふふ
がはははは
「へっ?なに言ってるのお前ら。ふざけてるとぶっ飛ばすぞ」
「「「おぉー!」」」
「「「ワハハハハ言われてるぞリーダー!」」」
「いいなぁ強気なガキってのは。俺らもガキのころはそうだったよ。だがな子どもじゃ大人に勝てないってことも知らなきゃな。
アレク。お前には大人との力の違いを思い知ってもらうからな」
わはははは
ふふふふふ
がはははは
「世の中には俺よりはるかに強いやつがいることくらい知ってるよ。
でもそれはお前らじゃない」
わははははは
ガハハハハハ
あははははは
「いーなその強気。俺は嫌いじゃねぇぞ。
心配すんな。なに手足取ろうとかじゃねぇんだよ。ちょっとばかり顔が腫れるだろうがな」
「あんたひょっとして帝都学園の卒業生か?」
「「「!」」」
全員がそうじゃないみたいだけど半数くらいが帝都学園の卒業生みたいだった。
「そこまでわかるか。さすがだな」
「さすがもなにも。ただのゴロツキだったらこんな優しい段取りは組まないだろ。
で先輩。誰からの依頼だ?」
「悪いな。それは言えねえよ。ただ受けた以上俺たちも依頼には誠実に応えねぇといけないからな」
「(ほら団長。この人たちそんなに悪くないでしょ)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(うん)」
「(団長ハチのやつますます薄ら笑いが酷くなってきましたよ。やっぱり俺こいつが怖いです)」
「(だから言っただろトン!俺も怖いわ!)」
「(じゃあ団長逃げないように壁を塞いじゃってください)」
「(わかったよハチ)」
「どとん。土壁の術!」
ズズズーーッッ!
ズズズーーッッ!
「「うわっっ!」」
「「なんだなんだ!」」
「「こ、こいつの魔法か!」」
「「自分から逃げ道塞ぎやがった!」」
「じゃあいいっすよ団長。
トン先輩は俺が殴られないように守ってくださいよ」
「なんかハチの思いどおりに進んでるなトン」
「フッ。そうですね団長」
まっいいか。
「じゃあ団長‥‥やっておしまい!」
ヒッヒッヒッヒッ‥
ハチお前はコーモン様かよ!コーモン様が指示出して暴れるのはスケサーンとお前の父ちゃんカクサーンだろ!
「さあかかってこいよ。強い冒険者の先輩たち」
「「「舐めやがって!
」」」
いつのまにか。前後で20人対俺たち3人の構図が出来上がってたんだ。
「リーダー俺たち魔法職からいくぞ。
アレクちょっとばかし火傷してもらうからな」
2人組が前に立って杖を俺に向けたんだ。
「心配すんな。すぐに消してやるから」
その横には杖先からチョロチョロと水を流している男もいたんだ。
なるほど。2人が火魔法士で1人が消火役の水魔法士なんだ。
「団長ちょいとばかり懲らしめておあげなさい。でもやり過ぎちゃだめっすよ」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「わかったよハチ」
トンの後ろから不思議な声援を送ってくるハチ。
「私に考えがあるわ」
「どうするのシルフィ?」
「火には火で返すのよ。そのまままとめて火だるまにしてから水ぶっかけて最後にドライヤーでいいんじゃない?」
「なんかやり過ぎじゃない?」
「大丈夫大丈夫。すぐ燃やしてすぐに消すし。最後はドライヤーだから服も乾くし大したことないわよ」
異世界の精霊が平然とドライヤーという事実に思わず笑っちゃうよ。
俺とシルフィがそんな話をしてるとは知らない魔法使いたちが魔法を発現したんだ。
「「ファイアボール!」」
ゴオオォォォーーッッ!
ゴオオォォォーーッッ!
2人からハンドボールほどの火の玉2つが放たれる。
ショボっ!
本当に火の玉じゃんこれ!
「作戦どおりいくわよ!」
コクコク
「出すならこれくらい出しとけよ。
ファイアボール!」
ゴゴゴオオオオオォォォォォーーーッ!
「「「な、なんじゃこれ!」」」
「「「こ、こいつの火魔法か!」」」
通路の幅いっぱいに広がる火炎放射器並の炎弾を発現する。もちろん火力控えめの赤い炎だよ。
ジュッッ!
ジュッッ!
飲み込まれる2発のファイアボール。
ゴオオオオオォォオォーーーッッッ!
全面に広がった炎の壁が周囲を押し潰すように前方に進んでいく。
「「「うわぁぁぁぁぁーーーっっ!」」」
ドンドンドンドンッ
「「「逃げられねぇ!」」」
出口のない壁に囲まれた20人が悲鳴をあげる。
そして20人全員が炎に包まれた。
「「「うわあああぁぁぁぁぁッッッ!」」」
一瞬にして逃げ惑う火柱20体。
「土砂降りウォーター!」
ざあああぁぁぁぁぁっっっ!
間髪入れずに放水を入る。
ジユウウウッッッ!
「「「あ、ああ‥‥」」」
「「「う、ううっ‥‥」」」」
一瞬だから大して火傷もしてないと思うよ。多少ヒリヒリするくらい。
ただみんなの頭はチリチリだけど。
「そのまんま動くなよ先輩たち。すぐに乾かしてやるよ。ドライヤー!」
ブオオオオオォォォォーーーッッッ!
「「「土魔法、火魔法、水魔法、風魔法かよ‥‥」」」
「「「規格外過ぎるだろ‥‥」」」
早くも戦意喪失した20人が項垂れている。
「(まだっすよ。もっと団長の怖さを身をもって味わってもらうっすよ」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(トン俺あいつが怖い‥‥)」
「(団長俺も怖い‥‥)」
ヒッヒッヒッヒッ‥
「(さっ団長こいつらのリーダーも剣で倒しちゃってください。いいですね加減してくださいよ!)」
「(はいはい)」
「このまんま終わりかよ。おい先輩たちのリーダー。せっかく刀持ってるんだからかかってこいよ」
クイクイって左手指を上げて誘ってみる。
「くっ、くそー!」
「やってやる!」
即座に飛びかかるリーダーの男が両手剣を振り翳して向かってきた。
ブンンッッ!
「遅い!」
ドウゥゥゥッッッッ!
一足飛びにリーダーの腹部を刀の背で薙ぎ、そのまま返す刀で両手剣の半ばほどを強打する。
ガンンンッッッッッ!
足下に叩き落とされる両手剣。
ドンンンッッッッッッ!
両手剣を落としたまま痺れる両手で呆然と俺を見るリーダー。
「ヨッシャー!ねーねーシルフィなんて言おうか?何がカッコいいかなぁ?」
「そうねぇー?」
「これにて一件落着とか?」
「おとといきやがれとか?」
「「うーん?」」
と。
いつのまにか前に立って笑顔を見せるハチがいたんだ。
「このへんでいいでしょう団長」
「「あーこいつ!」」
「おいしいとことりやがった!」
「なによ狸の子!」
「先輩方まだ闘りますかな?ホッホッホ。
こちらのアレク君を誰と心得る?
アレク君は先に王国で開かれた未成年者武闘大会の優勝者ですぞ」
「「「ま、マジか!?」」」
「前皇帝のアレクサンダー陛下も認め帝都学園1位のマルコ君でさえ足下にも及ばない子がアレク君ですぞ。
それをお主ら‥‥身のほどを知りなされ!カーツッッ!」
なんだよそれ!?
しかもカーッッって喝のことかよ!
クソーッ!良いとことりやがってハチめ!
ササササッ
ササササッ
ササササッ
「「「すいません‥‥」身のほど知らずでした」」」
「「「申し訳ありません」」」
「「「ごめんなさい」」」
いつしか20人全員が正座してリアル反省の体勢となっていたんだ。
「わかればよろしい。で依頼主はだれですかな?」
「狸さんのおっしゃるとおり俺たち半数は今年学園を卒業したばかりの卒業生なんです」
「(なぁトン俺たち居ても居なくてもよくない?)」
「(ええ団長‥‥)」
「で誰の指示ですかな?」
「そ、それは‥‥」
「そうですか。
じゃあ言わなくていいですよ。団長ここ塞いでくれます?」
「いいけど通り難くなって近所の人に迷惑じゃね?」
「じゃあ団長この先輩たちがいることだけ箱にして沈めてください」
「いいよハチ」
「どとん。コンテナボックス!」
ズズズーーッッ!
一気に20人がコンテナ箱に入ったみたいに地下に沈んだんだ。
「では先輩たちはこのままここに1週間ほど反省してもらいましょう。
では皆さんご機嫌よう。ああ僕は忙しいからもしこのまま忘れたらごめんなさい。
じゃあ団長蓋しちゃってください」
「「「おいおいおい!」」」
「「「やめろー!」」」
「「「勘弁してくれー!」」」
「言う言う。なんでも言うから許してくれ!6年10組、6年10組の後輩たちからの指示だ」
「ほら団長。トン先輩。手駒も手に入りましたよ」
「「怖いわハチ!」」
ハチ‥‥お前軍師孔明かよ!
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◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
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転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
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