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第2章 幼年編
455 3年春〜歓喜の夕食
しおりを挟む「これでいい?」
「はい。リリアーナさんありがとうございます」
「ふん。字くらい誰でも書けるわよ」
「だよなワハハハハ」
「くっ‥‥」
「プッもうすぐね」
なにがだよ!シルフィ!
でも‥‥早くもいつもの光景が目に見えてきた気がする。なぜだろう?
▼
鷹の爪を加えたタマネギーを飴色になるまで半量炒め塩を抜いた塩蔵肉、人参を加えてさらに炒めていく。
ここに水を投入。
最後に芋と半量のタマネギーを追加。
隠し味に萎びたリンゴーをすりおろし持参したコンソメ顆粒を投入。
最初のあめ色タマネギーはカレーに甘さを出すためで最後のタマネギーは食感を楽しむため。
これが俺流カレーのレシピなんだ。
一旦火を止めてカレールーを投入。弱火でゆっくりとかき混ぜていくといつものカレーが出来上がるよ。
「カレーすごくいい匂いがするわ」
「初めて嗅ぐけどめっちゃそそられる匂いだなぁ」
「だろー」
ヨシ。スパのカレーソースの完成だ。
「ベックはこれに小麦粉を練った塊を通してスパゲッティを出してくれ」
「こうでいいかアレク?」
「ああ。ばっちりだよ」
スパは金魔法で発現したパスタマシーンで生麺をどんどん作っていく。ソースの絡みの良さと食べ応え重視の太麺だ。
あとは硬めに茹でてから急速冷凍。1玉ごとに茹で直せばすぐに提供できる生麺スパの出来上がりだよ。
「(俺なんかの夢見てるのかなリリアーナ)」
「(ベック私もよ)」
スパも完成した。
「リリアーナ。カーブはこうして薄くスライスしてくれ。最後指を切らないように気をつけろよ」
「うん。わかった」
カーブは薄くスライスして塩少々。水気を絞ってから少量のマリネ液に漬け込む。
これで付け合わせのサラダの完成。
スープは持参したコンソメ顆粒に刻んだタマネギーや干し野菜に干し肉少々を入れたもの。コンソメのあるなしでスープのコクも断然変わる。
船上だから洗いものは少なくしたいからね。基本ワンプレートとスープカップにフォークのみ。第1回艦内メシの完成だ。
土魔法で発現した2台の大型ウォーターサーバーも用意したからキンキンに冷えた水も飲み放題。
艦長も食堂で食べるそうなんだ。
商人を含んで。配膳下膳はすべてがセルフサービスだからこれは楽だよ。
「じゃあ俺たちは先に食べようぜ」
狭い厨房に丸椅子3つを置き膝を付き合わせていただく賄いも同じカレースパだ。
ベックもリリアーナもカレーはもちろんスパも初めてだろうし。どんな反応するのか楽しみだな。
「「「いただきます」」」
くんくん
くんくん
俺がやるのを真似てスパをフォークで巻いて食べ始める2人。
おっかなびっくりの雰囲気が変わる瞬間が楽しみ楽しみ!
モグモグモグ‥
モグモグモグ‥
「こ、これは‥‥」
「辛っ!でも‥‥」
「「うまいうまいうまーーーーーいっ!」」
ガタッ
ガタッ
ガンッッ!
「痛えっ!」
思わず丸椅子から立ち上がる2人。狭い厨房の天井に頭をぶつけるベックだ。
ワハハハハハ
ふふふふふふ
わははははは
「なんだこれ!カレーめちゃくちゃ旨いじゃん!」
「辛いのに手が止まらないわ!」
「よかったよ。みんなの口に合うかな?」
「「合う合う!」」
「合うなんてもんじゃねぇよ!こんな旨いもん食ってたら元に戻れなくなるわワハハハハ」
「ホント!カレーサイコー!」
「サイコー!」
「水も冷えたのが飲めるなんて驚きよ」
「飲み放題なんだろ。すげぇよなぁ」
わいわい言いながら食べて飲んで。2人が喜んでくれてよかったよ。
「あっ!でもさ司厨長たち2人のメシはいいのか?」
「ああブーダイであたったら2、3日はなにを食っても戻すし腹もずっと痛いからな。いいんじゃねぇか」
「うーん。じゃあリリアーナすぐに作るか
ら重湯持っててくれよ」
「いいけど?」
2人分の重湯なら少量のお米だけで充分だからね。食べられるようになったら粒感を残したお粥も作ろうか。
「毎食持っててくれたら食べた量で体調もよくなったかわかるからな」
「わかったわ。アレクお母さん」
「俺は母ちゃんじゃねー!」
ワハハハハハ
ふふふふふふ
わははははは
「じゃあ合図出してもいいよ」
「ええ。いいわよベック」
「ヨシ。夕食の準備できました。お願いします」
艦長室でも見た厨房備え付けの筒に向かって声をかけるベック。そのすぐあとから。
パッパッパッパッパァァァァァーー
艦内中に夕食を知らせるラッパの音が響いた。
「よーしがんばろー!」
「「「ヨーソロー!」」」
あとは3人の流れ作業。
麺を茹で直してお皿に盛るベック。そこにカレーソースをかけて付け合わせのマリネをのせる俺。コンソメスープを注ぐリリアーナ。簡単な食べ方説明もしてもらう。
慌ただしいけど食堂に来た人を待たせたりはしないよ。
わいわいがやがや
ワイワイガヤガヤ
「なにを食べさせてくれるんだろうな」
「ひょっとしてサンダー王国で話題のやつだったりしてな」
「そりゃないだろ。帝国の軍艦とはいえ演習艦だぞ?」
「「「だよなー」」」
いつもと違うカレーの匂いがたちこめる食堂に好奇心いっぱいで入ってきた商人と第1陣の海兵たち。
「メニューだってよ。カレー?食ったことあるやついるか?」
「「「いや」」」
「「「ないな」」」
「「「聞いたこともない」」」
「「「‥‥」」」
それは軍人のみならず商人も同じだったんだ。てかカレー食ったことあるのはまだほんの一握りの人だけだろうしな。
トレイに受け取ったカレーを抱えて食卓に座る商人と第1陣の海兵。
「「「いただきます」」」
モグモグモグ‥
モグモグモグ‥
モグモグモグ‥
モグモグモグ‥
モグモグモグ‥
「「「ウマッ!」」」
「「「ウマ~~い!」」」
ガツガツガツガツ‥
ガツガツガツガツ‥
ガツガツガツガツ‥
そこからは誰もが無心で食べてる姿が厨房から見れたんだ。一心不乱にカレースパを食べてる人たちを見て俺たち3人はハイタッチしたんだ。
パーーーンッッ!
「「「イェーーーイ!」」」
「司厨長ごちそうさま」
「めちゃくちゃうまかったよ」
「ありがとうな」
「金曜はカレーの日だからね。また来週だよ!」
この流れが3回続いたんだよ。あの堅いパンもスライスして出したんだけどお皿に残ったカレーソースをつけて食べてくれたからどのお皿もきれいだったんだ。飲み放題にしたお水も2台のウォーターサーバーもほとんど空だったし。もう大成功だよ!
「さて明日は今日のカレーをスープにするくらいだから簡単なもんだ。代わりに今から魚を取ろうぜ」
「さっそく弓矢で獲ってくれるんだねアレク君」
「ああ。なんかデカいのがいたらいいな」
そう言いながら甲板に上がったんだ。
そしたらなんと大型のキーサッキーがぷかぷか泳いでたんだ。7、8メルはある大型のキーサッキー。魔獣だけど怖くない大型のイカ、キーサッキー。
ヴィンサンダー領では当たり前に美味しい食材に認知されてきたんだけど、帝国ではまだまだみたいなんだ。
「キモ!キーサッキーがいっぱいじゃん」
「月夜だから浮いてきたんだよ」
「やったやった!キーサッキーだ!」
「「??」」
シュッ!
すかさずキーサッキーを射たんだ。急所は目と目の間だから1射ですぐに大人しくなるよ。
「重いから上げるの手伝ってくれよお前ら」
「えーアレク君キーサッキーってグロいじゃん」
「そうだぞアレク。キモいキーサッキーなんかより魚獲ってくれよー」
「お前らなんも知らねぇんだな」
「明日昼メシからびっくりするくらいうまいもん食わせてやるからさ」
「「ぶーぶー魚がいいのに‥‥」」
「早く引き上げるぞ」
大王イカみたいに大きなマイカのキーサッキー。
5体捕獲したから明日はイカづくしだよ!
ただ‥‥2人ともキモいと近寄らなかったけどね。
結局俺1人で解体したよ。もちろん部位によってすぐに冷やした部位と一夜干しにした部位、あとは油を抽出できる肝にわけてね。
魚はキーサッキーに代わったけどこれも魚に負けず劣らず美味しいご飯のおかずになるなあとほくそ笑む俺だった。
キーサッキーはキモいだけで食えないと言う2人はいったいどんな顔するんだろうな。
明日が楽しみだよ!
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