アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

454 3年春〜臨時司厨長

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 【  艦長イーゼル・フォンバートside  】

 陛下の話ではサンダー王国ロジャー殿の結婚式披露宴でアレク君がヴィヨルド領主邸の料理人を従え並いるお歴々の前で絶品の料理を振る舞ったそうだな。

 中原中のグルメな領主連中の度肝も抜いたとか。
 しかもその前日には王国主体ではあるが未成年の武闘祭でも優勝。

 クックック。いきなり楽しくなってきたぞ。陛下にいい土産話もできたな。



 【  臨時司厨長side  】

 「よしじゃあ2人とも1週間よろしくな」

 「おおよアレク。俺は訓練しなくていいだけでも御の字だよ。
 でもアレク、お前料理できんのか?」

 「ホント。アレク君大丈夫なの?」

 「任せとけって!」

 そう言った俺は2人を連れて食在庫の在庫量を確認したんだ。

 「リリアーナ書いてって」

 「ええ。高い紙に書いていいのね?」

 「もちろん!」

 野菜はタマネギー、芋、人参がたくさん。初めて見るカブも。
 あとは干野菜がいくつか。

 干し肉、干し魚。塩漬け肉、塩漬け魚、コッケーの卵もそれぞれたくさんあるな。

 小麦粉、塩、酢、油、鷹の爪の調味料系。おぉ~!マヨネーズもあるよ。

 カチカチのバケットもたくさんあるぞ。


 ヨシ。いけるな。これも1年のダンジョン経験のおかげなんだ。
 何がどのくらい有ればいいのかもわかるようになったからね。


 「リリアーナはその日の終わりに在庫のチェックしてくれよ」

 「任せて!こういうのは得意よ」

 うん。シャーリーもミリアもこういうのしっかりメモしてくれてたよな。リリアーナもしっかり屋さんだ。
 俺とベックには苦手な仕事だよきっと。


 ベックとリリアーナ2人のバディに役割分担を頼んだよ。

 「ベックは料理で包丁を使えるのか?」

 「できるわけないだろ。いいとこ肉切ったり干し肉と干し野菜を湯にぶち込んでスープ煮作るくらいだぞ」

 「そっか。じゃあ肉や魚は切れるんだな?」

 「ああ切るくらいならできるよ」

 「リリアーナはどうだ?」

 「お料理は好きよ。でも家で母さんの手伝いをするくらいね」

 「じゃあリリアーナは俺がお願いすることのアシスタントな。あとは芋や人参、タマネギーを切ってくれ」

 「あしすたんと?えんいいけど‥」

 「ベックが触るのは肉と魚のみ。リリアーナは野菜のみな。
 食中毒が怖いからお互いのものに触るなよ。
 あと水は俺が出すから。手は爪、指先までしっかり洗ってくれ」

 「水?お前水魔法使えんの?」

 「ああ」

 「確か土魔法が使えるんだよな。ってことはダブルかよ!」

 「アレク君金魔法も使えなかった?じゃあまさかトリプル?」

 「ま、まぁいいじゃん。とにかく1週間よろしくな」

 「「お、おお(え、ええ)‥‥」」





 「(なぁリリアーナ。アレクって料理めっちゃできそうじゃん?)」

 「(ええ‥‥)」

 「(剣も弓も体術も俺たちより上だろ。なんでもできるのかな)」

 「(わかんないけど……。すごいよね!)」

 「(ああ)」




 「あと毎日の食事メニューを書いて食堂の前に貼ってみんなに知らせるからな」

 「貼紙?さっきの在庫表?もだけど紙って高いよね?」

 「いいんだよ。艦長室にたくさんあるし。そのうち帝国でもどんどん安くなるからさ」

 「あー思い出した!アレク君ってあの紙を作った王国のアレク工房の人だよね!?」

 「そうだよ?」

 「アレク袋もアレク君だよね?」

 「そうだけど?」

 「なんかお前スゲェな」

 「うんうん!」





 「なんかおかしいわアレク。面白くない!」

 「なんだよシルフィ?」

 「誰もアレクのこと変態って言わないじゃん!」

 「俺変態じゃねーし!」

 へへーん。ついに変態だの狂犬だのという悪名ともおさらばだぜ!ようやく物語の主人公らしくなってきたよ!

 「ぜったいおかしいわ‥‥ブツブツ」

 それでもシルフィはずっと不思議がっていたんだ。




 さて。夕食までまだ4点鐘もある。これなら準備も十分だ。俺たちの賄いも食べられるよ。なんならデザートも作ってあげられるかな。
 さて貼紙、貼紙っと。

 「今日は金曜日だろ?」

 「「ああ(うん)」」

 「今日の夜はカレースパな。で明日は残ったカレーでカレーのパン粥な」

 「「カレー?」」

 「ちょっと待ってて」

 船倉に荷物を取りに行ったんだ。
 ロジャーのおっさんの披露宴でもカレーは大絶賛大好評だったんだよね。

 だから帝国でも大勢の人に振る舞うことを想定してカレールーをたくさん持ってきたんだよね。

 カレーは昔日本海軍が木曜日だったか金曜日には決まってカレーを出してたんだって。
 カレーを食べることで曜日感覚もつくらしいよ。

 そんなカレーは披露宴の料理の中でも話題の中心になるくらいだったんだ。でもさすがにまだ帝国では売ってないよな。いやひょっとしてカクサーンが準備万端だったりして。


 今回は持ってきたカレールーを使うよ。
 鷹の爪もあるから中辛仕様にしよう。肉は
塩漬けを戻して使おう。タマネギーと芋
、人参のオーソドックスなカレーソースでいこうかな。
 本当は海軍さんといえばカレーライスなんだけど肝心のライスがないからね。かと言ってパンは味気ないし。
 だからせめてカレーを通してお腹いっぱいになってもらうにはたくさん在庫がある小麦粉でスパゲティを作ればいいかな。
 スパのソースにカレー。

 あとサラダも添えたいな。

 「なあこのカブみたいな野菜って何?」

 「王国と一緒だぞ?言い方はカーブだけどな」

 「へぇーカブじゃなくってカーブなんだ」

 よし。じゃあカーブを薄切りにしてマリネサラダだな。カレースパの間の箸休め。さっぱりしていいんじゃないかな。
 あと水は俺が氷付の冷水を出せば良いな。水ぐらい飲み放題で良いよね。


 「じゃあ‥‥金曜カレーの日。夜ごはんはカレースパゲティとカーブのマリネと書いて‥‥」

 「「アレク(アレク君)‥‥」」






















 「「なんて書いてあるの?」」

 「えっ?今言ったとおりだけど?」

 「アレク‥‥書いたとおりにゆっくり言ってくれ」

 「なんだよお前ら。なんの冗談だよ!
 金曜カレーの日。夜ごはんはカレースパゲティとカーブのマリネじゃん!」

 「「あ~やっぱり」」

 2人が天を仰いで言ったんだ。

 「「ゴブリンが書いた字かよ!」」

 「「弟(妹)より下手な字だ!」」











 「代わってアレク君。私が書く!」

 「はい‥‥お願いしますリリアーナさん‥‥」


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