448 / 722
第2章 幼年編
449 2年冬〜家族愛
しおりを挟む「おっグランドの蟹だね。ありがとう」
領都のモンデール神父様にも蟹を届けてきたんだ。これで蟹もみんななくなったよ!
でもさ、確か武闘祭の賞品は蟹1年分だったよね?それっていつどのくらいもらえるのかなあ。
校長室にはケイト先生もいて、また例の音を遮断する魔法を発現してくれたんだ。
「アレク君、するとデグー一族の姫自ら証言してくれたんだね」
「縁はすごいものですねモンデール神父様」
「本当ですね。まさかデグー一族にまでたどり着くとはね」
「しかしノクマリ草の毒薬に1国1ルートという販売規制をかけてたとは。これはどれだけ調べてもわからないはず‥‥」
「アレク君ディル神父様とシスターナターシャは何と?」
「俺の考えに同意してくれました」
「そうかい。まぁそうなりますかねケイト先生?」
「ええ。今はこのまま。少しでも王宮が絡む可能性を考えるとすればまだ動くには時期尚早でしょうね」
モンデール神父様もケイト先生も俺も3人が互いに頷きあったんだ。
「俺成人するまでにもっと強くなってそれからまた考えたいと思います」
「そうだね‥‥わかったよアレク君」
そう。父上と俺の毒殺。これに関しては一旦「保留」しようと思うんだ。王宮が絡んでるかもなんて夢にも思ってなかったしだいたい王宮なんてとこ、まったく知らないからさ。
▼
春から俺が帝国に1年行く話も家族はすでに聞いていたようなんだ。
てか例によってモンデール神父様、師匠、シスターナターシャの3人が骨を折ってくれてたんだよな。
だからね比較的すんなりと了承してもらったよ。
でもやっぱり最後は家族5人ひしっと抱きあって別れを惜しんだけどね。
ギャン泣きのスザンヌとヨハンにつられてやっぱりマリア母さんも泣いちゃったし。
「みんな蟹みたいに真っ赤だよ!」
ヨハンのひと声。最後はみんなが鼻水まみれの真っ赤な顔をして泣き笑いしたんだ。
そして俺は家族愛そのものを深く実感したんだ。
「アレク、モンデール神父様、ディル神父様、シスターナターシャの3人が家にまで来てくれたんだよ」
「アレクちゃんの帝国行きを許してあげてってね」
「そうだったんだ‥」
「お前がヴィヨルドからさらに帝国に行くって聞いて驚いたんだよ。
でもな王国中でたった1人しか行けない名誉あることなんだって聞いたら‥‥心配だけどお前の親であることが誇らしくてな」
「そうなのよアレクちゃん」
「3人の偉い神父様たちが俺たち夫婦‥‥いや俺たち家族のために応援してくれてるんだって思ったら‥‥俺たち夫婦が反対だなんて言えないよなって思ったんだよ」
「父さん、ダメならダメって言ってくれよ!俺は家族に迷惑かけてまで帝国へ行きたいなんて思わないよ!」
「違うんだアレク。俺もマリアもお前がヴィヨルドに行ってることだけでも心配なんだよ。
それでもな、村の誰もがお前は何をしてる?今はどこなんだ?って聴くと‥‥やっぱりああ俺たちの息子がって誇らしくなるんだよ」
「アレクちゃん、お父さんもお母さんもアレクちゃんの帝国行きに反対じゃないのよ。正直寂しいんだけどね。
ねえアレクちゃん。アレクちゃんはなぜ遠くの帝国まで行くの?」
「皇帝陛下に誘われたからね。帝国がどんなところかさえわからないよ。でも俺はもっともっと強くなってみんなを守りたいんだ」
「もうアレクちゃんは充分強いじゃない!」
マリア母さんが自身の強い思いを吐露したんだ。
「うううん。母さん、俺はまだまだ弱いんだよ‥‥」
「そう‥‥お母さんにはわからないわ。それでもアレクちゃんのやりたいことだから。
応援してるからね」
「ああ。アレク俺たち家族はいつだってお前を応援してるぞ!」
「「お兄ちゃん私も(ぼくも)応援してる!」」
「ありがとう。帝国に行ってもがんばるよ」
▼
そして春休み。
久しぶりにホーク師匠と修行できることになったんだ。
「来年は帝国に行くんだってな」
「はい師匠」
「魔力量は並のエルフよりあるようになった。魔力も見える、雷魔法も発現できる‥‥」
ホーク師匠が独り言のように呟きながら言ったんだ。
「アレク今日から7日。これがしばらく最後の修行になる」
「えっ最後?」
「ああ」
「俺まだまだです。師匠からぜんぜん学び足りないです!」
「フッ。心配するな。お前が帝国から帰ってきてまた時間がとれたら年に1度春に修行を再開すれば良い」
「よかったー!」
ホッとしたんだ。
実際まだまだホーク師匠から学ぶことはめちゃくちゃ多いから。
「師匠じゃあなんで最後なんて言い方を?」
「お前はこれからますます忙しくなるだろう。来年のように春休みの時間もとれなくなることもな。
それでだ。これから7日間で教えることを1人でもお前がやり続けるんだ。
精霊魔法をつかんだときよりも難しいことだからな。
だからこの1週間でお前が帝国に行っても自分でできることだけを教えておく」
「は、はい‥‥」
何を教えてくれるんだろうホーク師匠は。
「時間が惜しい。すぐに行くぞ」
「は、はい」
そう言ったホーク師匠が北を向かって走りだしたんだ。
北?黒い森じゃないの?北は砂漠しかないじゃんね?
俺の故郷ヴィンサンダー領は王国はむろん中原でも最北にあたる。
ざっくりとした地図には広い中原の北の果て。ヴィンサンダー領の荒れた大地はそのまま北の広大な砂漠に続いているんだ。
俺だけじゃなく誰もが共通認識としてるのは何もない砂漠のはずなんだけど……。
「師匠?」
「ついて来い。来ればわかる」
「はい‥‥」
こうして師匠と俺は何もない砂漠の中に突っ込んだんだ。
―――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う
ちょす氏
ファンタジー
今の時代においてもっとも平凡な大学生の一人の俺。
卒業を間近に控え、周りの学生たちは冒険者としてのキャリアを選ぶ中、俺の夢はただひとつ、「悠々自適な生活」を送ること。
金も欲しいし、時間も欲しい。
程々に働いて程々に寝る……そんな生活だ。
しかし、それも容易ではなかった。100年前の事件によって。
そのせいで現代の世界は冒険者が主役の時代となっていた。
ある日、半ば興味本位で冒険者登録をしてみた俺は、予想外のスキル「黄金」を手に入れる。
「はぁ?」
俺が望んだのは平和な日常を送るためだが!?
悠々自適な生活とは程遠い、忙しない日々を送ることになる。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。


どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる