アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

446 冬休みの依頼〜帰郷

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 その後はスケエモーンさんとキム先輩たちは打ち合わせをすることになり別室へと行ったんだ。



 「ミカサ会長ありがとうございました」

 「ん?なにがじゃ」

 ミカサ商会長が穏やかに笑ったんだ。

 「アレク君ゴムはすごいの。当面は戦闘靴1本でもいけるじゃろうの。しばらくは冒険者では手に入らないだろうがの」

 「じゃあ誰が買うんですか?」

 「最初は王都騎士団かの。それからは帝国とダルク大国の騎士団。さらにはエルファニアとカザール法国も均等にまわしていかねばな。
 いずれどの国に行ってもアレク君が恨まれぬようにせねばの。ワハハハハ」

 「商会長‥」

 「サンデーとミョクマルには話をしておくから冬休み明けに商業ギルドに行っておくれ」
 
 「はい。わかりました」

 「ああ海洋諸国にはスケエモーンを送るが帝国にもミカサ商会を作るでの。
 ミカサ商会ロイズ帝国店にはカクサーンを就けるでの。
 カクサーンには冬休みが終わったらヴィヨルドのミカサ商会に行かせるでの。これもその折りに打合せを頼むよアレク君」

 「はい!」

 「でアレク君。ゴームの木の問題点はなんだったかの?」

 「はい。おそらく今のゴームの木すべてを切ってもゴムは足りません。だいたいゴームの木を伐採していいのか悪いのかもわかりませんから。
 だから俺的にはゴームの木の栽培をしつつ徹底した管理をしていかなきゃって思ってます」

 「そうじゃの。それでグランドの経済はまわるかの?」

 「まわるとは思いますがそのすべてをミカサ商会頼りになります。
 なので俺はグランドの人が自分たちでも食っていけるものを作りたいと思ってます」

 「うむ。それはいいことじゃの」


 昔、東北の爺ちゃんがいつも言ってたんだ。「3本の矢」を用意しろって。3つの道があればどれかがダメになっても生きていけるって。

 だからグランドの矢の1つはゴームの木。あとの2つは‥‥もう考えてあるんだよね。
 どれかがなくなっても生きていけれるようにグランドの人たちがなればいいな。







 帰りはミカサ商会長から馬車をお借りして港まで戻ったんだ。

 「狐ちゃん。いえアレク君いろいろとありがとうね」

 「ありがとうなアレク」

 「えー俺何にもしてないですよ。いつも言うだけだから」

 「フフフ。キムは良い弟を持ったわね」

 「ああ」

 「あはは」


 「でもこれからは忙しくなるわね。正直私どうしていいのかわからないわ。かと言ってキムにいつまでもグランドにいてもらうわけにもいかないし」


 どうしていくのが正解なのか。
 一族が生きていくための街づくりは、いずれは俺が取り組まなければならない領づくりにも繋がるんだよな。


 「俺なんでも言いっぱなしでなんにもできないんだけど、いつも周りにいる人たちがなんとかしてくれるんだよね。
 なんていうか、その道のプロに任せたら上手くいくっていうか。
 だからさ、近々ヴィヨルドの商業ギルド長ミョクマルさんとミカサ会長の孫娘のサンデー商会のサンデーさんにも相談して2人から姫に連絡をしてもらうよ。2人はスケエモーンさんとも近いはずだし。

 姫には誤解してほしくないんだけど、ミョクマルさんもミカサ会長もサンデーさんも決して損得ばかりの人じゃないことは俺が責任を持って保証するからね」

 「馬鹿ね!今さらそんな心配するわけないでしょ!」

 「そっか」

 ワハハハハ
 フフフフフ
 あはははは



 ゴームの木から採れる樹液の価値は計り知れないものとなったんだ。もちろんデグー一族ならびにアイランド一族が経済面でも追い風を受けるようになるのは言うまでもない。
 デグー一族は裏の仕事を一切しなくても生きていけるようになるんだ。


 港に着く前の馬車の中で。

 「狐ちゃんありがとうね。なんにもできないけど私からのお礼よ。デグー一族の女は彼と旦那以外にはよっぽど感謝してないとしないんだぞ」

 チュッッ!

 姫の顔が近づいたかと思ったら俺の唇に柔らかいものが触れたんだ。

 えっ!マジか!
































 「あうあうあうアウアウアウ‥‥」


 ブッシューーーーーーーーーッッ!

 
 「馬鹿!なんてことしやがる!
 こいつは本物の変態なんだぞ‥‥。おいアレクしっかりしろ!アレクアレクアレク‥‥」

 「ああっ!どうしよう?狐ちゃん死んじゃダメ!」

 なにか聞こえた気がするけど。


 目が覚めたらグランドの港に着いてたんだ。

 「兄貴アレクが目覚ましたよ!」

 「ん?あれトマス?イシル?姫?ここは?ああキム先輩‥‥」

 「お前、また死にかけてたぞ‥‥」

 「「お前やっぱり‥‥」」

 「ごめんなさい、ごめんなさい、狐ちゃんごめんなさい‥‥」

 なぜか謝りながら後ずさりしている姫だった……。







 出血多量となった俺は結局エリクサーのお世話になったんだ。エリクサーの効果は絶大だったけど。

 「鼻血だしてエリクサー使う奴なんて初めて見たわ」

 「ああイシル兄俺もこいつ以外こんな変態見たことないわ」

 「「ワハハハハ」」

 「もうイジるなよ。泣くぞ!」

 「「ワハハハハ」」







 「おま‥‥」

 「すげぇな‥‥」

 「マル爺?」

 「わしごときがこんなことできるわけなかろう‥‥」

 「私狐ちゃんの雷魔法で死ななかった自分を褒めてあげたいわよぉ」


 すげぇぇーーーー
 なんじゃこりゃあ
 すげぇぇーーーー
 わーわーわーわー

 帰る前に。
 中央広場の一角に男子寮を再現したんだ。

 2階建を2棟。
 1階は食堂と多人数用のゲストハウス。2階は広めにとった少人数の部屋を20室。
 これが2棟あれば1日100人くらいのお客さんが宿泊できるよね。

 そう俺が考えた2本めの矢は観光宿泊施設なんだ。

 「観光客さんはここに泊まってもらってね。接客サービスのノウハウから食堂の食事はサンデーさんとスケエモーンさんと打ち合わせして。春から営業できるといいね」

 「あとうちの村でも大好評の温泉も用意しておくね」

 もう1つの矢は温泉。宿泊と別に温泉があればグランドは大河ロナウの荷物の中間地点として最適だし、その折に温泉に入ってくれたらいいよね。

 観光で泊まった人はもちろんだけど荷運びの中継で立ち寄る商人にも温泉があれば文句なしだからね。
 かけ流し温泉は流れていくお湯もまたゴームの木の生育に良いってこのあたりのノームやウンディーネたちも言ってたし。


 「あとはウォーターカウカウを入れればいいと思うよ」

 ウォーターカウカウ。字のとおり水牛なんだ。
 水牛に観光用リアカーを牽かせればそれだけで充分に観光になるからね。
 グランドは元々ある建屋も興味深いものだしデグー一族の郷土料理もそのまま観光資源だからね。

 落ち着いたら米も広げようかな。


 「何から何までありがとうね狐ちゃん」

 「「「ありがとう狐ちゃん」」」

 「「「いつでも遊びにきてくれよ狐ちゃん」」」


 いつのまにか俺はグランドで狐ちゃんと呼ばれていたんだ。
 まあ悪い気はしないけど。

 「来年から1年帝国だよなアレク」

 「休みにはこっちに寄れよ」

 「ああ。トマスもイシルも再来年学園に来いよ。お前らがいてくれたら絶対楽しいしダンジョンもお前らならすげぇことになるって思うんだ」

 「「ああ。行きたいな」」

 「再来年会おうぜ」

 「「ああ」」








 でも現実はトマスとイシルがヴィヨルド学園に来ることはなかったんだ。
 新生アイランド一族は来年から激動の日々を過ごすことになったから。

 




 
 「次はいつ来てくれるの狐ちゃん?」

 「うーん。来年は1年帝国留学だからそれからかな」

 「そう。じゃあ狐ちゃんが次来てくれたときグランドをびっくりするくらい良くしておくからね」

 「うん。でもこのままの雰囲気が良いんだからね。
 ゴムや観光で儲かるだろうけどグランドの良さは無くさないでよ」

 「ええ。深い意味の言葉ね」

 「じゃあピーちゃんに乗ってたらあっという間に着くからね」


 帰りは姫のペット、大蛇のピーちゃんに乗って帰れることになったんだ。ピーちゃんだと2日や3日かかるところを夜出て寝てたら朝には着くんだって。














 「シャーーッッ!」

 「アレク着いたって」

 「えっ!もう着いたの?!」

 ピーちゃんは新幹線みたいに快適快速の乗り物だった。朝には港に着いてたから。

 
 「ピーちゃんありがとう」

 「シャーーッッ!」

 ペットの大蛇ピーちゃんが笑ったような気がしたんだ。
 こいつ怖い顔して実はかわいいんだな。

 よしよし。

 「シャーーッッ!」

 あっ!と思った瞬間に頭から齧られたんだ。

 ガジガジ  ガジガジ  ガジガジ  ガジガジ
ガジガジ‥

 甘噛みなんだろうけど‥‥

 「痛い痛い!ピーちゃん痛いって!」

 ピーちゃんが齧る俺の頭から血が流れていた……。

 「じゃーねーピーちゃんまたねー!」

 「シャーーッッ!」

 あっという間にピーちゃんは帰って行ったんだ。







 





 



 くんくん?
 おや?

 「くさっ!ピーちゃんの唾液臭っ!」

 「アレク寄らないでよね!
 ホークにカエルの巣に放りこまれたときと同じ臭いだわ。でもいい土産話、ネタになったわ。シンディに教えてあげよーっと」

 「ネタ言うな!」

 「あ~ん?言うなだと?!」

 「言わないでください。お願いしますシルフィさん」




 「さてこのまま真っ直ぐヴィヨルドに戻るよシルフィ」

 「あんた‥‥村に帰るんじゃないのかよ!」

 「だって蟹もらったじゃん!」

 俺の背中リュックには山ほどの蟹が入っていたんだ。おがくずに詰められた蟹は常温でも大丈夫なんだって。

 「そんなもん村のみんなに土産にすればいいよね?やっぱりあんた‥‥」

 「うん。一旦戻ってメロン吸いしなきゃ」

 「この変態めーー!」


 ―――――――――――――――


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