アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
435 / 722
第2章 幼年編

436 冬休みの依頼〜マル爺

しおりを挟む


 俺と変わらない背丈にずんぐりとした身体。
 マル爺。
 それはドワーフ族そのものだった。白髪に皺の刻まれた顔はまさに爺さんだったけど。


 ドワーフのマルコ。
 通称マル爺は嘗て家族諸共海賊に襲われただ1人生き残った壮絶な過去を持つ。その後奴隷となり船底に閉じ込められているところをデグー一族に助けられたという遍歴をもつ。
 以来、家族のいないマル爺はデグー一族と共に生きる道を選ぶ。

 幸いドワーフという種族の特性上鍛治や土魔法に秀でその方面からもデグー一族に欠かせぬ存在となったことも理由の1つにある。

 平均的なドワーフの寿命は150歳。
 対して人族、なかでも海洋諸国のそれは短い。50歳に届くか届かないかというものだ。
 よってマル爺との交わりも3世代4世代となり双方の絆は年を経て強固なものとなっていったのだった。
 マル爺にとってそれは実の孫や曾孫に接するくらいに。



 「シルフを連れた人の子を見るのは永く生きておるわしも初めてじゃわい。どれ闘う前に握手でもするかの」

 「あは‥あははは」

 どうしよう?
 俺どうやって握手のとき魔力を遮断するのかわかんないよ!偽情報を掴ませるのもわかんねぇわ!

 「ほっほっほ。こりゃなんともおもしろいお子じゃわい。狐仮面君どれお手を出してみなされ」

 「は、はい‥」

 マル爺の催促どおりに自然と手を差し出したんだ俺。だって悪意をまるで感じない皆に好かれている「マル爺」そのものだったから。

 
 「よいかの狐仮面君や。
 まずは手全体に意識を向けてみるんじゃよ。このとき悪意を向けてくる相手かどうかは相手の目を見て自分自身の勘を信じることじゃの」

 「う、うん‥」

 えーそうなんだ。

 「手のひら全体に意識はあるかの?」

 「は、はい」

 「悪意を抱く者の魔力は善く生きておる者の手には馴染まんからの。そこんとこは経験で覚えていきなされ」

 「は、はい」

 「次は魔力の感じ方じゃよ。
 狐仮面君自分の肩を見てみい。肩から指先まで手はだんだん細くなっておるの」

 「はい」

 「相手の魔力を知ることや逆に知らせぬことは指先から細い紐で魔力の出し入れをするイメージなんじゃよ」

 出し入れ?ドライヤーと掃除機みたいなもんかな?

 「どらいあとそーじきがなにかはわからんがなんとなくイメージは掴めてきたじゃろ」

 「はい!」

 「吸いこむとき、その細い紐が切れるようなら相手の魔力は大きいし切れる心配がなければその魔力は小さいの」

 へぇーそうなんだ

 「逆にその紐をより細くすれば自分の魔力を小さく見せることができるでの。
 あとは数多くの人と握手を交わす経験を積めば自然と身につくわい」

 あーなんかわかった気がするな。

 「ああ最初は仲間内にしとくんじゃよ。味方でない者に不必要な情報を与えてはならんからの」

 「なんとなくわかったよマル爺。ありがとう!」

 「ほっほっほっ」

 マル爺のアドバイスのおかげで握手のときの魔力の感じ方もわかってきたよ。


 「マル爺ありがとう」

 「ほっほっほ。素直なお子じゃな狐仮面君は。それに魔力総量も恐ろしくあるわい」

 「さて狐仮面君。さっそくじゃが闘うかの。
 例年ならお子の力を受ける形で闘いを進めるのじゃがここはそうじゃの。
 狐仮面君の作った土人形をわしが壊せるか壊せないかで勝負を決めようかの」

 ふだんから使っているのだろう手鎚を前にマル爺がこんな提案したんだ。

 「いいよ。マル爺に任せるよ」

 「素直でよろしいの。お子のうちはそうでなくてはの。
 では狐仮面君は土人形を2体発現してくれるかの。1体は魔力を抑え気味にな。これはわしの手鎚でも壊せるくらいにしてくれると嬉しいの。まあ年寄りに花を持たせたと思うての」

 「うん」

 「2体めは狐仮面君のその魔力を存分に注いで壊れない土人形を発現しなされ。
 これをもって勝敗を決めようかの」

 「わかったマル爺。じゃあいくよ」


 「観客席の皆さんお待たせしましたー。永い握手のあとマル爺と狐仮面の闘い方法が決まりましたよー。
 狐仮面が発現した2体の土人形をマル爺が手鎚で壊せるかどうかでーす」


 おおおぉぉぉぉぉ
 手鎚だってぇぇぇ
 土魔法だろぉぉぉ
 マル爺の勝ちだろ
 おおおぉぉぉぉぉ


 みんな闘る前からマル爺の勝ちだって思ってるけどそんな簡単なものじゃないよ。

 俺が発現する土人形が硬いって思ってるのはもちろんマル爺も。てかマル爺は俺のためにこんなことやってくれてるんだもん。


 発現する土人形。これはもう簡単だよ。
 2体はもちろん等身大フィギュア。
 1体めはオニール先輩で2体めはレベッカ寮長。
 ダンジョンの野営食堂で毎夜のように登場してた守り神だよ。

 オニール先輩は柔らかめにして、レベッカ寮長は野営食堂で発現してたやつと同じ硬さで発現しよう。


 「おもしろい勝負になりましたねー。狐仮面が発現した土人形2体をマル爺の手鎚で倒したらマル爺の勝ち。マル爺が倒せなければ狐仮面の勝ち。わかりやすい勝負です!」




 「狐仮面君それでは始めましょうかの」

 「うん。じゃあいくよ。出よ守護神オニール先輩!」

 ズズズーーッッ!

 「出よ守護神レベッカ寮長!」

 ズズズズズーーッッ!

 

 マジか!?
 ホンモノか?
 いや土人形だよ!?
 うおおおぉぉぉぉぉーーーーー!
 うおおおぉぉぉぉぉーーーーー!
 


ーーーーーーーーーーーーーーー



 「お待たせしましたなドスゴル様」

 「おおようやく来おったかぺルーシュ一族の草」

 「どうやってここまで来た?その裸はまさか泳いで来たのか?」

 「なに大したことではありませぬぞ。ただ舟番が1人おりますれば正面から船に乗り込めませんからな。
 1度河に入ってから船縁を上がりましたわ」

 「パパーこの人なんでこんなにテカテカ光ってるの?」

 裸の男を凝視しながらそう訊くルイ。

 「いやいやさすがはドスゴル様のご息女ルイお嬢様ですな。
 お嬢様これは魔獣の脂を身体中に塗りましてな。水を弾くようにしておるんですよ。こうすれば船上に濡れた跡は残しませぬゆえにな」

 「へぇーすごいのねー」







 




 「こいつも馬鹿よねー。話が全部漏れてるのにさ」

 「フッ。そう言うなアリアナ。話が筒抜けの道具なんてそうそうは無いからな」


 スピーカーから流れる会話に耳を傾けるキムとアリアナ姫だった。



 ―――――――――――――――

いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...