アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

435 冬休みの依頼〜中原1位の実力

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 相撲の土俵そっくりの格闘場に登場した司会のお姉さん。
 デグー一族の武闘祭の開祭とアナウンスしたんだ。堂々の宣言に会場は大盛り上がりだったよ。


 「みんな復活祭楽しんでるー?」


 うおおおぉぉぉぉぉぉ~~~~~!


 「今年も武闘祭が始まるよー!」


 うおおおぉぉぉぉぉぉ~~~~~!


 お姉さんも日本人的美観にピッタリとはまる美人さんだった。

 膝上ミニスカと胸元が大きく開いた着物風の服を着たショートヘア。高下駄のようなパンプスは長くてすらりとした脚線美をさらに美しく効果的に演出してるよ。そしてなぜか腰に巨大な巻き貝を抱えてる黒髪美人さんだ。

 なぜに巻貝?
 でも‥‥エロかわいいよなぁ。


 「おい、ガン見して噴射しても知らねぇからな‥」

 「も、も、もちろんですシルフィさん‥」


 よく見れば観客席にもそんな黒髪の美人さんや美少女さんもけっこうな数いたんだ。

 やっぱ黒髪美人の宝庫なんだな海洋諸国って。見る人見る人女の人みんなが綺麗だもん。その中でもアリアナ姫がダントツで綺麗なのは疑うまでもないけど。うらやまだよキム先輩!



 「1人仮面の子がいるよねー。この子が今年の目玉だってアイランド一族の若が言ってたわよー」


 ざわざわ  ざわざわ
 ザワザワ  ザワザワ
 ざわざわ  ざわざわ
 ザワザワ  ザワザワ


 会場を埋め尽くすほどの観客席が途端にざわついたんだ。


 ううっ‥‥緊張する‥‥トイレ行きたい‥‥

 「アレクはいつまで経ってもヘタレよねー」

 「(ヘタレ言うなシルフィ!でも‥‥帰りたい‥‥)」


 「狐仮面君は先のヴィヨルドで開かれた未成年者の武闘祭で優勝したんだよー」


 マジかーーーー?!
 すげぇぇぇぇぇ!!
 中原1強いんだ!?


 「中原1の実力はこのグランドでも通用するのかしないのか。楽しみだよねー」


 おおおぉぉぉ~~!
 狐仮面~~~~~!


 でもさ‥‥さっきから男の声援しか聞こえないんだけど……。
 なんで俺への声援はダミ声ばっかなんだよ!


 「ルールは今年も同じ。武器も魔法もなんでもありだよ。でもいざというときにはエリクサーもあるから安心してねー。
 まずは武闘祭の始まり。1階の勝者から決めてこうか」


 ワーワーワーワーー
 やれやれーやれやれ
 わーわーわーわーー


 会場内のボルテージがMAXとなった。

 「それじゃあさっそく始めるよー」


 ワーワーワーワーー
 わーわーわーわーー


 土俵そっくりの格闘スペースに俺を含めて11人が上がる。うん見たところみんな同い年前後かな。


 やっぱ海洋諸国の男子だよ。背の高さはみんな俺くらい。なおかつ俺と変わらないモブさが親しみを感じるよなぁ。


 「この格闘場から落ちるか自分から降参したら負けだからねー。

 それじゃあいくよー。始め!」


 ブオオオォォォォオオンンンッッ‥


 ええぇぇぇーー?!

 腰の巻貝は法螺貝だったのかよ!


 ササササササッッ!

 法螺貝に驚く俺を気にもせず土俵の上の方向に10人全員のモブ男が集まったんだ。対するは下手のモブ男(俺)。
 まあこの構図は予想してたけどね。


 「狐仮面悪いがお前は最初に退場してもらうぞ。デグー一族以外の奴が勝つなんてことがそう何度もあっちゃならないからな」

 へぇー。キム先輩やトマスが勝ったのはやっぱデグー一族の男にはあんり嬉しくなかったんだな。

 でも意外とみんな正々堂々としてるんだよな。まあ10対1でボコる絵図には違いないけど。
 俺てっきり何も言わずに毒矢でも吹きかけてくるかと思ってたからね。


 「いいよ。かかってこいよ」

 「よしみんないくぞ!」

 「「「おおっ!」」」

 ジリジリ‥
 ジリジリ‥
 ジリジリ‥
 ジリジリ‥
 
 みんなクナイ片手にジリジリと迫ってきた。


 「ど、どうだ狐仮面。自分から土俵を出たら傷つけたりしないぞ?」

 「お、降りろよ」

 「け、怪我するぞ」

 うん。いい奴らばっかりじゃん。だけど震えてるよ。声裏返ってるし。


 「そっか。じゃあいつきてもいいよ」

 すーーーーーっっ

背の刀を鞘ごと抜いて居合い術のように腰だめに構える。魔力を鞘にその全体を覆う感じで発現するんだ。

 ふと対面に座るトマスを見たらうんうんと頷いて笑ってたよ。
 でもさ‥‥キム先輩はどこに行ったんだよ!拉致られたのかよ!俺の闘うの観てないんかい!アリアナ姫と2人で‥‥なんて羨ましいんだ!

 「ハハハハ‥」

 あー。なんかね‥‥めちゃくちゃリラックスしてるよ俺。
 ひょっとして俺も戦闘狂なのかな。


 土俵内は狭いから気を抜かないようにしないとね。みんな弱そうだけどそれなりに戦闘経験は積んでそうだもんな。


 鞘付きの刀の理由?
 そりゃもちろん乱戦の中で怪我させちゃいけないからね。デグー一族の大人以上に配慮しないとね。


 ジリジリ‥
  ジリジリ‥
   ジリジリ‥
    ジリジリ‥
     ジリジリ‥
     ジリジリ‥
    ジリジリ‥
   ジリジリ‥
  ジリジリ‥
 ジリジリ‥

 少しずつ左右から広がり俺を囲む陣形となった10人。
 
 こうなればあとはある種のチキンレースだ。先に飛び出したほうが負け。
 もちろん俺は魔力を溜めつつもじっと我慢してるよ。







 「クッ。わあぁぁッッ!」

 「「「わあああぁぁ~~!」」」

 飛び出した1人につられるようにしゃにむに円を縮める10人。
 もう作戦もへったくれもない感じ。ただ闇雲にクナイを振りまわす10人のデグー一族の未成年者たちだ。
 


   「いくよシルフィ!」

 「やっちゃえアレク!」


 ぐるっと敵に囲まれるこのシチュエーション。ダンジョン以来ずっと考えてたんだ。どう闘うのが良いのかって。

 だから今から発現するのは1度試してみたかったんだよね。
 もちろん本番のダンジョンでは抜き身の刀でやるけどね。


ーーーーーーーーーーーーーー


 「しよおぉぉりゆうけんんんんんん」

 「亀はめハァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 シルフィが俺の脳内映像を観ながら言ったんだ。

 「ええどっちも魔力を放出するのと同じよ。前にロジャーたち2人が拳と刀で見せたやつと同じね」

 「やっぱそうなんだ」


 シルフィ曰く斬撃を飛ばすのも基本魔力を飛ばすことなんだって言うんだ。
 だから俺春以降はずっと練習してたんだよね。俺人より多く練習しないと上手くできないから。


 「「「なんだあれ?」」」

 「「「鞘が‥‥」」」」

 「「「白い‥‥」」」
 

 あっという間に鞘全体が白く輝いてきたよ。あとは居合いと同じ。鞘に溜めた魔力を一瞬で放出するんだ。
 イメージはまわる扇風機からの強風だね。


 ここっ!

 「扇風機どーーんっっ!」

 ブワワッッッ!

 ゴオオオォォォッッ!

 「「「「「うわあぁぁぁぁぁ」」」」」

 俺を囲んでいた10人はゴロゴロと後ろを向いて飛ばされたんだ。



 できた!

 静まり返る観客席。

 「「「‥‥」」」

















 



 うわぁーーーーー!

 すげぇぇええぇぇ!

 うわぁーーーーー!

 すげぇぇええぇぇ!

 うわぁーーーーー!


 
 「アレク‥‥やっぱネーミングセンスなさすぎよ!
 こういうときはギャラクティックファントムソードとか深淵から覗く迸る血潮とか言わなくちゃダメなんだよ!」

 「あのーーシルフィさんはヲタの方ですか?」

 「あったりめぇだろべらんめえ!」

 「あははは。そうっすか‥」

 
 刀に風を纏わせて飛ばす実験。いきなりの実戦だったけど成功だな。デグー一族の子たちも飛ばされたすり傷くらいで誰も怪我はしないはずだし。



 
 「なんだよアレク今のは!」

 「うん魔力を飛ばしてみた」

 「お前なぁ‥‥。でもそれ俺もできるかなあ」

 「お前だったらできるんじゃないか?ただ時間はかかると思うぞ」

 「よーし。俺も練習してみるよ」

 「ああ。魔力を纏わせたらクナイが短い分いろいろできんじゃね?」

 「そうだな。アレクこの調子で次もがんばれよ!」

 「ああ」



 「すごかったですねー狐仮面君の今の技は。デグー一族の子たちはびっくりしたでしょうね。
 圧倒的な力の差。さすが中原1の肩書きでしたねー」


 「でも次からはそう簡単にはいきませんよー。ここからは大人が狐仮面君に立ち塞がりますからねー。
 次は2階。みんなも知ってるこの階を守るのはだーれだ?」

 「「「マル爺ーーー!」」」

 子どもたち中心にかけ声が起こったんだ。

 「そう2階はみんな大好きマル爺さんです。
 デグー一族の魔法担当。火魔法と土魔法のダブルを発現できるドワーフのマル爺さんでーす!」


 うわあああーーーー
 マル爺ーーーーーー


 声援を受けるマル爺はドワーフだった。

 火と土のダブル使いってことは俺も見ただけでわかるよ。
 だってサラマンダーとノームの2人が付き従ってたからね。


 「ほほほっ。珍しいのぉ。この子らが見えますかいな。
 シルフを連れた人の子よ」

 ―――――――――――――――


 トマスが応援してくれて俺が楽しく闘ってるあいだ。
 キム先輩とアリアナ姫は密閉された部屋にいたんだ。




 ギーーーーーッッッ

 扉を開ける音が聴こえる。

 「来たよキム」

 「ああ」



 机の上にあったのは小さなスマホサイズのスピーカー。それはデグー一族が所有している国宝級のドロップ品だった。


―――――――――――――――


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