アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
428 / 722
第2章 幼年編

429 それぞれの対応〜ノッカ村(のんのん村)

しおりを挟む

 「チャンちょっといいか?」

 「ん?どうしたニャンタ」

 「あいつらから話はあったか?」

 「ん?あいつら?なんのことじゃ?」

 「やっぱり‥‥」

 「実は昨日な‥」


 昨日「ダム」の開閉門を開けた村人を目撃したこと。その直後に魔獣に襲われていたので彼らを助けたこと。すぐに村長に話をしろと言ったら了解して逃げ帰って行ったこと。開閉門は壊されてかなりの量の水が放出されたこと等々を話すニャンタ。


 「あいつらか‥‥」

 「ああ‥‥」

 「神父様もシスターナターシャもいない。これはいよいよわしらの村の問題をわしらが解決せねばならぬっていうことじゃな」

 「ああ‥‥」

 「よし。今夜主だった村の仲間を集めてあいつらから直接話を聴こう」






 
 その日の夜。村の集会所に集まる主だった役員15人と問題の4人が呼ばれた。

 「お主らなぜ呼ばれたかわかるか?」

 「「「「わからん!」」」」

 「「「‥‥」」」

 「昨日ダムの開閉門を勝手に開けたそうじゃな?しかもその直後を魔獣に襲われていたのを助けられたそうじゃな?」

 「「知らん知らん!」」

 「「ダムになど行っておらん!」」

 「「魔獣にも襲われておらん!」」

 「「そこの獣人ニャンタの嘘だ!」」

 「「「そうだそうだ!
」」」

 「お主ら村から出とらんのか?」

 「「出とらん!」」

 「「全部そこの獣人ニャンタの嘘だ!」」

 「「「そうだそうだ!」」」

 「そうか‥‥村から出とらんのじゃな」

 「「「そうだ!それはニャンタの嘘だ。獣人は嘘ばかりをつくんだ!」」」

 「「「そうだそうだ!」」」













 「獣人は嘘ばかりをつくか。
 よいかお主ら。まずわしはニャンタとは一言も言うとらんぞ」

 「「「ハッ!!」」」

 「その上で言うぞ。まず村から出たか出とらんかは門を守る騎士団員様の記録を見ればわかるぞ。
 騎士団員様は真面目に我らを守って下さっておるからな。
 時計のおかげで何時に誰が出て誰が帰ったのかもわかるぞ?」

 「「「‥‥」」」

 「それから魔獣に襲われとらんのなら、お主とお主、腕を見せてみい。噛まれた跡はないのじゃな」

 「「「そ、そ、それは‥‥」」」

 「よいか。この村は以前大勢の盗賊団に襲われとる。村の方針に逆らった者が中から手引きをして門を開けたからの。
 だからそれ以来村人の絆は深いんじゃ。
 仲間のニャンタの言うことを疑う者などここにおる者には1人もおらん。お主らのように獣人と言って差別する奴ら以外はな」

 「「「ううっ‥‥」」」

 「お主らは決まりを破ってダムの開閉門を勝手に開けたんじゃな」

 「ち、違う。畠が渇ききっとるから水をやらないかんだろう!」

 「そ、そうだ!それで門を開けて何が悪い!」

 「俺たちが危険な魔獣に襲われながら門を開けてやったんだ!」

 「「「そうだそうだ!」」」

 「「「‥‥」」」

 「皆どう思う?」

 15人ほどの村人全員が天を仰いだ。

 「話にならん」
 「問題外じゃ」
 「嘘がバレても平然と新たな嘘をつく」
 「差別もしとる」
 「俺も獣人だが気分が悪い」
 「ああ人族でも気分が悪い」
 「こんな奴らは追放だ!」
 「ああ追放だ!」
 「「そうだ追放だ!」」
 「「「追放だ!」」」


 「見てみい。これが村の総意じゃ」



ーーーーーーーーーーーーーーー


 みんなは米1粒を種籾として植えればどのくらい増えるか知っているかな?

 けっこう増えるんだよ。1粒の米が400粒にもなるんだ。
 茶碗1杯1合のお米はだいたい150gで6500粒くらいって言うんだ。
 今回デニーホッパー村のヨゼフ父さん、ニールセン村、のんのん村で栽培をお願いした稲。上手くいけばそれぞれ1反で400㎏くらいは採れるんじゃないかなって思ってるんだよね。
 


 人族と狸獣人の半々が住むのんのん村の場合。

 シスターサリーが休養日の教会ミサのあとみんなに話す。

 「ヴィンサンダー領全体で春から雨が降ってないわよぉ。どこも干ばつでたいへんなのよぉ。収穫もぜんぜんないんだってぇ」

 「「「そっかぁ‥」」」

 教会ミサに参加しているのんのん村の村人みんなからため息とも安堵の声ともつかぬ声が漏れ出る。

 「うちの村は幸せよねぇ。みんな」

 「「「はいシスターサリー!」」」

 「シスター、デニーホッパー村とニールセン村は大丈夫かなあ?」

 「みんなどう思うのぉ?」

 「「「絶対大丈夫だよ!」」」

 「「「だって‥‥」」」

 「そうよぉ。3村だけは干ばつの大きな被害を免れてるわよぉ」

 「「「おぉー!!」」」

 大きな歓声と拍手が起こる。

 「雨が降るまで油断せずに畠を耕すんだよぉ」

 「「「はいっ!」」」


 元々地質が良かったノッカ村。そこに勤勉な性質を持つ狸獣人と人族がよく協力をした結果は明らかだった。




 ヴィンサンダー領全体で干ばつの被害は甚大となった。
 雨が降らない。降らないことによる農地の乾燥。乾燥が生み出す干ばつや火災。

 荒廃した農地は人々の心も荒んだものにした。それは各地の農村から始まって街にも拡散していった。盗み、略奪も各地で起こり始めたのだ。

 この負の連鎖がのんのん村には起こらなかった。それは深く掘り直した井戸と山の上流に造った貯水池の恩恵である。

 25mプール4面の大きさがある貯水池は本来の湧水能力に加えて水の精霊ウンディーネに愛された故に、その水が永く枯れることがなかったのである。

 こんこんと湧き出る水は高低差のある流れとなって各家々、津々浦々の畠に行き渡ったのである。
 そしてそれは特に多くの水を必要としたポンコーの水田でさえも枯れなかったくらいに。

 デニーホッパー村、ニールセン村、ノッカ村(のんのん村)3村では1番渇水の被害が少なかったのがノッカ村であった。



 ゴーン  ゴーン  ゴーン  ゴーン  ゴーン

石造の平家建村舎の上に立つ時計塔から夕暮れの5点鐘を知らせる鐘が鳴った。

 「今日も終わりだー!」

 「次の休養日はデニーホッパー村に温泉に行く日だな」

 「「「楽しみだなあ」」」

 「ポンコー、そろそろ米の収穫だよな」

 「ああ豊作だよ!」

 「「「よかったなぁ」」」

 

 1反400㎏も収穫できれば上々とアレクが思っていた米。
 のんのん村では500㎏と大豊作となったのである。


 ―――――――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...