アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

419 披露宴 第1部の成功

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 俺が大鍋でカレーとミートソースのお代わり作りに奮闘している間も披露宴は滞りなく進んでいたんだ。

 「あぢーあぢー‥」

 もうね狐仮面の内側から汗が滴り落ちる状態。


 「続いてはヴィンサンダー領デニーホッパー村教会の神父ディル師にご祝辞を賜りたいと存じます」

 ミョクマルさんが拡声魔法で祝辞を依頼する。

 ガタッ!
 ガタッ!
 ガタッ!
 ガタッ!
 ガタッ!
 ガタッ!
 ガタッ!
 ガタッ!

 各円卓から即座に立ち上がる領主たち多々。

 「うわっ!」

 ベチョッッ

 「あゝ」

 突然のことに驚き服にベッタリとソースをつけたヴィンサンダー領領主の若者もいた……。

 即座に立ち上がる者。そこには最奥のテーブルにて直立不動で立ち上がる者もいた。
 現ヴィヨルド領領主ジェイル・フォン・ヴィヨルドである。
 ジェイルが声を上げる。

 「元王都騎士団副団長にーーーーー敬礼!」

 ビシッッ!
 ビシッッ!
 ビシッッ!
 ビシッッ!
 ビシッッ!
 ビシッッ!
 ビシッッ!
 ビシッッ!

 
 「(なんだこれ?そんな偉い爺さんがうちの領にいたのか?)」

 「(そのようですな。私も知りませんでした)」

 「(へぇー。それにしてもくそっ!爺いのせいで服にシミが付いちまったじゃないか‥)」



 ▼



 カラーン  カラーン  カラーン

午後の3点鐘が鳴った。披露宴の第1部も終わりだな。
 次は午後の6点鍾から第2部立食パーティーだ。

 「「「シェフお疲れさまです」」」

 「「「みんなもお疲れさまです。どうやら大成功みたいだね」」」

 「「「はい」」」

 そう。俺たちも大成功だ。国も領も越えた1,000人あまりの人たちからの笑顔、笑顔、笑顔。
 つくづく思う。こんな笑顔を見たくてやってるんだって。



 このあとの第2部パーティーは俺がやることはない。
 だから武闘大会8傑の新しい仲間たちと親睦を深めたいな。
 ふだんどうやって鍛錬してるとか聞きたいし。


 第2部。
 立食パーティーは王族や貴族の偉い人たち以外にロジャー夫妻のお披露目をする披露宴だ。1部と違い2部の参加者は多いよ。1,000人の予定なんだ。

 みんなが食べて飲んで自由に動いて楽しく過ごしてもらう。シンプルな構図だよね。


 「「ではミョクマル殿よろしいのですな」」

 「はい。くどくどと申し上げて誠に申し訳ありません。
 それではこのまま夜の2部においてもこのお席をお使いください。食事はありませんが飲みものはそのままにしておきますので」

 「「「おおー!助かるよ」」」

 歓声が上がった。どんだけ飲むんだよ!

 「えーそれでは最後に。
 これよりは皆様方へのお給仕等でお仕えすることは適いませんので、ご承知おきください」

 「「もちろんだ」」

 「「了解した」」

 「「わかっておる」」


 第1部の披露宴が予想以上に高い評価となったんだ。
 それで各国王や領主たちから第2部も参加できないか、第1部の円卓にそのまま座れないかとの要望がすごくあったらしいんだ。


 「第2部は庶民的な料理ばかりでございます。冒険者も多く食事のマナーにも寛容な趣向です。高貴なお方のお口に合わないこともご不快に思われることも多々あるかと」

 「もちろんだ。ヴィヨルドの方針に文句など誰も言うまい」

 「「「そのとおりだ」」」

 「本当にそれでも構いませぬか?」

 「「大丈夫だ」」

 「「まったく問題ない」」

 「皆さまを優先させていただくこともしませぬぞ。冒険者たちと同じく並んでいただくことになりますよ?」

 「「「ああ」」」

 「配下の者たちに並ばせるゆえそれも問題ない」

 「「「そうだな」」」

 「わかりました」


 司会進行を務めるミョクマルさんが口酸っぱくなるくらいに言ったらしいんだ。だけどそれでもVIPの皆さんは立食パーティーで出る料理を食べたいんだって。

 だから第1部の円卓はそのまま使えるけど、そこにそれぞれの国(領)の騎士や従者が料理を運ぶという、ほぼセルフサービスに近い形でさえ、すべてのVIPが了承してくれたんだって。


 「(なんとまあ‥)」

 「(前代未聞じゃの)」


 結局円卓に座ったまま第2部が始まる夕方までそのまま飲んだくれている領主もちらほら、というか大半がそうだったらしい……。
 そこでも回転式テーブルが役に立ってたんだって。






 第2部は領主様の迎賓館の中庭をメイン会場に設営。
 中庭っていっても学校の体育館くらいあるけど。


 「おつかれーアレク」

 「おおモーリスもな」

 「第1部は大成功だぞアレク。父上もお喜びだったよ」

 「よかったよ」

 「で今からここに机を用意するんだよな?」

 「モーリスも裏方仕事ばかりを頼んでありがとうな」

 「何を言う!俺のほうこそアレクに感謝するばかりだ」

 こいつ、本当に変わったよな。人との交わりを絶って努力する孤高の人だったのにな。
 今じゃ積極的に人と関わろうとしてるし。

 「机は俺が出すから大丈夫だよ」

 「えっ?ひょっとして前出したみたいに土魔法でか?」

 「うん」

 飲食を提供するのは中庭の屋台村。あとは立食だから基本なくてもいいんだけど。昔駅チカなんかで見たオジサンたちが立ち飲みしてたテーブルやベンチを発現すればいいよね。

 「テーブルカモーン!」

 「ベンチカモーン!」

 ズズッ‥
 ズズッ‥
 ズズッ‥
 ズズッ‥
 ズズッ‥
 ズズッ‥




 「シェフ‥‥相変わらずすごいというか‥‥」

 「「「‥‥」」」

 「アレクお前‥‥」

 設営に協力してくれていたモーリスも厨房のスタッフもみんな苦笑いをしていた。
 ああもちろん庭の花や木を傷つけたりはしてないよ。

 これで立食パーティーでもお料理を置いて立ち話や座ることもできるよね。


 「アレク君お疲れさま」

 「ミョクマルさんこそ」

 わはははは
 あはははは

 「この調子で2部もいきたいね」

 「うん」

 「そうそう。1部のVIPたちがそのまま2部も参加するからね。だからさらに人も増える。アレク君ちけっと制にして大正解だよ」

 「そうなんだ。うん。ミョクマルさんが紙の製造全体をみててくれたおかげだよ」

 「いやいや本当にちけっと制にしてよかったよ」

 「うん。偉い人たちも参加するんだよね?」

 「ああ。全員がな。がはははは」

 がはははは
 あはははは
 

 予定の1,000人を大きく上回る来客になりそうな屋台村。
 このまま発進してたら人だかりになってトラブルになるところだったけど、そこも考えてたんだ。

 それはね混雑に対応する大きなテーマパークを参考にしたんだ。ネズミーランドや湯煮婆スタジオ方式の採用なんだ。

 どの屋台にも並んでもらうように線を引いてあるんだけどその窓口の一角だけ、色違いの線を引いて入場制限してあるんだ。
 もうわかるよね。

 屋台のお料理はそれぞれ行列に並んでもらって受け取るんだけど、その行列に並ぶことなく優先して受け取れる一角。
 そう、招待状に優先チケットを同封したんだ。1人5枚入ってるよ。だから、どの屋台でも5枚は優先してお料理を受け取れるシステムなんだよ。
 ファストパスっていうのかな。

 紙自体が普及してないから偽造のコピー品を心配する必要もないから楽だよね。

 そしてもう1つ、特別なチケットが1人1枚はいっている。これは2部に参加するようになった偉い人にも急遽配ったけど1枚は変わらないよ。

 金枠を付けたそのチケット。その名も『カツ丼またはカレーライス1皿チケット』。すごいよね!

 ついにお米のヴィヨルド初デビューなんだ。春に俺が植えた分を収穫した米。それなりに収穫できたよ。美味しいお米ができたんだけ。
 だけど正直量が心配。だっていきなり1,000人分だもん。それで麦を混ぜて炊いたんだ。
 麦ご飯。カレーやカツ丼なら麦ご飯でもそれほど遜色ないと思うんだ。




 「シェフパスタの準備もできました。お願いします」

 「はーい。じゃあいくよー。フローズンパスタ!」

 「「「おおー。さすがです」」」

 「えへへへ」

 「アレクもういい加減口にしなくてもいいんじゃない?」

 「えーやっぱ言葉にしないとなんかイマイチ締まりが悪いもん‥‥」

 「だったらもっとネーミングを考えろよ!」

 「あははは‥」

 茹でたてのパスタは俺の魔法で瞬間冷凍したよ。あとは注文の度に1人前ずつ熱湯に潜らせればほんの数10秒で茹でたてパスタになるんだ。駅の構内にあるお蕎麦屋さんみたいなものだね。
 これで本当に俺がやることはなくなったよ。


◯  立食パーティー屋台メニュー

・揚げもの
串カツ、ハムカツ、コロッケ、メンチカツ、イカフライ、エビフライ、魚フライ、ポテチ

・小麦粉由来
ピザ、パスタ、スパゲティ、カレーパン、焼きそば、お好み焼き、クレープ、パン、サンドイッチ、アメリカンドッグ

・米由来
どんぶりもの(限定食)、ビーフン、米粉パン、リゾット。

・限定食
カレーライスまたはカツ丼

・飲み物
お酒もジュースも飲み放題


 第2部のお料理は基本的にカトラリーを使わなくても食べられるものにしたよ。串ものや手づかみで食べられるもの。あってもスプーンやフォークのみで食べられるもの。
 もちろん食べ放題飲み放題。

 さあ2部が始まるぞ!


 
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