アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

417 披露宴 第1部 席次

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 披露宴に先立って。
 200人を超える大スタッフが集まるなか、料理長が言ったんだ。

 「いよいよワシらの戦闘が始まる。遠路はるばるお越しくださった皆々様が喜んでくれるだけの準備は整った。あとは焦らず着々とこなすのみ。自信を持ってやろう。
 お客様のお喜びになる姿が『救国の英雄』ロジャー様への恩返しであり、ご領主様にお仕えする我らの矜持にもなろうぞ」

 「「「はいっ!」」」

 「昨日の武闘大会では我らのシェフが優勝した。この勢いのまま今日も勝ち抜くぞ!」

 「「「おおーっ!」」」

 「今日という日。この日は間違いなく中原中の料理界に伝説となろう。ワシらはその伝説を生み出す担い手なんじゃ」

 「「「おおーっ!」」」

 「最後にシェフから一言お願いします」


 えーーっ?!
 なんで俺にふるんだよ!俺が緊張しまくるって料理長知らないのかよ!

 「ど、ど、ど、どうしよう?シ、シルフィさん」

 「アレクあんた‥‥本当に肝小せえなぁ」

 言い方!シルフィさんその言い方酷い!

 「鬨(とき)の声あげればいいんだよアレク」

 「わ、わ、わかった!」

 「み、みなさん。今日1日い、一生懸命やりましょう!そ、それでは‥‥」

 「エイエイオー!」
















 「エイエイオー!」


















 「「エイエイオー!」」






 「「「エイエイオー!」」」



 「「「エイエイオー!」」」


 「「「エイエイオオオオォォォォォォーーーーーッッ!!」」」

「「「エイエイオオオオォォォォォォーーーーーッッ!!」」」

「「「エイエイオオオオォォォォォォーーーーーッッ!!」」」





 余談だけど、これ以降王国でみんなが気合を入れるときはこの「エイエイオー」が定番となったんだ。

 「よーしいくぞ!」
 
 「美味いもん作らなきゃな!」

 「いいサービスをしなきゃね」

 「王宮にも負けないサービスをね!」







 「シェフ。じゃあお願いできますか?」

 「もちろん!」

 「では第2厨房をお任せします」

 「了解です」


 俺?俺は第2厨房に入って鍋をふるよ。
 第2?うん、披露宴の間、控えの間には1000人を超えるお付の人たちが待機してるからね。俺はその人たちをもてなす料理を作るんだ。

 「シェフ‥‥こ、この鍋は?!」

 「うん。今発現したんだ」

 「な、なんて大きい‥‥」

 「この鍋なら1000人用いっぺんに作れるよね!」

 「そ、そうなんですがあまりに大きな‥‥」

 俺専用に付いてくれてる調理の5人と配膳5人の合計10人のスタッフが目を丸くしている。

 「さぁどんどんタマネギーや人参、芋、肉を切って入れていってよ。時間ないよー」

 「「「はい!」」」

 「2人はこの麺を完成させてってね。何回伸ばしたら弾力がちょうどいいのか、茹で時間もしっかりメモとってってね」

 「「はい!」」

 大型のパスタマシーンも発現したんだ。1度に10人分の麺を作れるパスタマシーンだよ。これで1000人に生パスタも振る舞うんだ。

 「夜のパーティーには完璧なパスタを出してもらうからねー」

 「「はい!がんばります!」」

 

ーーーーーーーーーーーーーー


 領主様の迎賓館。
 最大の広さと豪華さを誇る迎賓館はこの日の祝宴に向けてお客様を迎える準備をしてきたからね。

 料理はもちろんだけど机や椅子、お皿やカトラリーなどの調度品に至るまで、お客様が不快に思うことのない快適さと優美さでおもてなしできると思う。

 あっ、もちろんそっち方面は俺じゃないよ。ご領主様の執事さんやミョクマルさんの指導の下だよ。


 そしていよいよロジャーのおっさんとミランダさんとの披露宴が始まったんだ。

 ああ、結婚式自体は少人数のみで教会で済ませたらしいよ。







 迎賓館。
 縦長の館内。
 最奥中央に並び座るのはロジャーのおっさんとミランダさんの主役2人。
 向かって右に現ヴィヨルド領主夫妻。左に王弟ドクトル・サンダース夫妻。

 手前から奥まで。ずらりと並ぶ円卓の最前列2卓には最重要とみられるVIP賓客。
 以降3列並ぶ円卓が縦10列ほど並ぶ。
 最奥から順に重要な他国からの賓客や領主勢、王家に繋がる者などが座るのは言うまでもない。


 【  シリウス・サンダーside  】

 「(アダムなんで高貴な俺がこんな1番後ろなんだよ!)」

 「(シリウス様お越しのお歴々を拝見するとそれは仕方ないかと)」

 「(ふん。で祝儀は出したのか?)」

 「(はい10,000Gほど)」

 「(高いな。ふつうはいくら出すもんなんだ?)」

 「(どうでしょう。領主によりますが1,000万Gを出されるところもあるかと)」

 「(1,000万G!?それはもったいないな。10,000Gでも充分過ぎるよな)」

 「(‥‥)」

 「(よし。じゃあ田舎のヴィヨルド料理を元とるまで食ってやるか)」

 「(ああシリウス様ヴィヨルドでは獣人差別は決してしませぬように)」

 「(わかっておるわ。あの鬼のようなロジャーを怒らせたくはないからな)」







 円卓の最前列では。

 「我らが最前列は当然のこととして。大殿これはなかなか‥」

 「ハッハッハ。なるほどのぉ。差配はジェイル殿か老師殿か先代殿か。或いは執事かはわからぬがこれは席次から苦心しただろうな」

 「フッそうですなぁ」

 こう和かに語りながら着座するのは、身の丈2メルの偉丈夫が2人。
 ロイズ帝国アレクサンダー前皇帝とその補佐役の前騎士団長ペイズリー。

 目にも鮮やか。汚れ1つない真っ白な制服はロイズ帝国軍人の正装。
 頬に残る古い刀傷が印象的な前皇帝アレクサンダーと隻腕ながら歴戦の軍人然としたペイズリー前騎士団長。ともに隠しようもない強者の存在感を全身に漂わす。




 それは大きな円卓の対面に座るダルク大国の2人の間でも。

 「「これはこれは‥‥フフッ」」

大君レイモンド・ダルフォングと副官ユダが苦笑いをしながらも着座する。
 ともに1.8メル強。中国の皇族が着るような深紅の民族衣装に身を包む2人も充分に大柄といえた。

 ロイズ帝国の2人がその身体に隠しようもない武を体現しているとすればダルク大国の2人はえも言われぬ不気味さを漂わせていた。それは身体に纏う尋常ならざる魔力ゆえか。
 
 ダルク大国の2人もロイズ帝国の2人とはまた違った意味で注目を浴びる存在であった。

 「大君‥」

 「ユダよ。今日の主役は英雄殿だ。外野の我らは従うのみよ」

 「ははっ」


 そこに。

 「あらあら私たちは両雄の緩衝材なのね」

 「ネビュラ(女王)様そこはちょっと控えて‥‥」

 あっけらかんと言葉を発した女の背後にぴたりと寄り添う女が諌めるように口にした。

 自治領エルファニア通称エルフの里の女王ネビュラとその従者クリスティである。

 ロイズ帝国とダルク大国の4人の間に添えられた生花のように。
 円卓を囲む空気が和んだ。
 それは円卓後ろに控えるスタッフたち(サーバント)にとって女神が降臨したようなものであった。

 特徴的な尖った耳、美貌とはこの種族のためにある言葉なのかと思わせる妙齢の女性が2人。身長は1.8メルほど。長身のモデル然とした容姿である。
 ゆったりとした絹のロングドレス。目が覚めるような美しい銀髪を腰まで伸ばしたエルフ族の女王ネビュラ・エランドルとその従者クリスティ・スカイである。


 「なるほどのぉクックック」

 「法皇様‥」

 円卓を囲む最後の2人。
 汚れ1つ感じさせない真っ黒な司祭服。襟首のカラーと手首から覗くシャツの袖口のみ白い法国の正装。
 この2人もまた1.8メル代後半の高身長。
 カザール法国のハリー・ヴィクトリア法皇と司祭長ケビン・ナッシュである。

 ちなみにこの2人が午前中にロジャー夫妻の挙式を取り行った。



 主賓には中原の2大大国ロイズ帝国、ダルク大国。この他名だたる国家元首、領主たちが集う迎賓館。
 ドラゴライド国、ケルトン王国、エコー国、ブライ国、ウェストランド、自由都市国家連合、カザール法国、獣人国、海洋諸国、自治領エルファニアなどなど……。


 賓客の後ろには1人に1人。マンツーマンのスタッフ(サーバント)が配される。

 宴席が始まるわずかばかりの間に冷えた水と温かいお茶が供される。

 「おお、このお茶はなかなかに旨いぞペイズリー」

 「本当ですな大殿」

 「我らは冷えた水のほうがよいのユダ」

 「はは大君」

 「ふふふっ。僅かばかりの湯茶でさえ合わないのねこの2人は」

 「ネビュラ様しーっ」

 「そこのエルフの女王と同じ。我らの任務を理解したかのケビン?」

 「はい法皇様」

 「これはロジャー殿への祝いの乾杯と同時に女王と法皇への謝意の乾杯もせねばならぬなレイモンド殿」

 「初めて意見が合いましたなアレクサンダー殿」


 わははははは
 フフフフフフ
 ガハハハハハ


 (((担当変えてくれよ!胃が痛いわ!)))

 (((どうか無事におわりますように)))

 後方に配された担当スタッフは宴の始まる前からその終了を切に願った。


 ―――――――――――――――


 たくさん人物名、国家名が出てきました。
(間違えないようにしなきゃ)

 主人公アレク君の先々になんらかの関わりを持つ人物ばかりです。

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