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第2章 幼年編
411 リゼ・ガーデン
しおりを挟む「第2戦はロイズ帝国代表マルコ・ディスパイス選手対カザール法国代表ジューダス選手でーす」
おぉーでけぇーー!
あいつらまだ15だろ?
すげぇ奴らだなあー!
会場内がざわめく中、両雄が向かい合う。
「マルコ・ディスパイスだ」
「ジューダスだ」
「「よろしく」」
礼節を重んじる感じがいいな。
2人とも武人の雰囲気がありありなんだけど明らかに強者のそれを纏うのは帝国代表のマルコ・ディスパイス選手だった。
身の丈1.8メル強は既に大人の高さ。
帝国はヴィヨルド以上に実力主義が行き渡っているからな。爵位も1代限りで世襲は少ないという。
マルコ選手も名前からは貴族なんだろうけど、彼もまだまだ若いのに自身の力で爵位を勝ち取ったんだろうか。
対するセーラの母国法国のジューダス選手も1.8メル近くある長身痩躯の選手だ。
オニール先輩と同じモンク僧見習いってとこだな。
手にしてるのはやっぱり棍だ。攻撃は刺突メインだろうな。
展開は予想どおりだった。ジューダス選手が高速の突きをみせながら中央突破を図るのに対して、一切動じないマルコ選手が両手剣を軽々と扱いながら棍を左右に打ち払う。
そしてジューダス選手の手数がほんのわずか緩まったとき。
ザンンンンッッッッ!
剛剣の1振りだった。
正統派のマルコ選手の剣は隙がまるでなかった。これは俺も闘りたい相手だなあ。次当たらないかな。あっ、その前に俺も勝たなきゃな。
▼
「午後の第1戦だよー。自治領ガーデニア 通称魔法使いの里代表リゼ・ガーデン選手対ヴィンランド冒険者ギルド特別推薦のハンス選手でーす。
ちょっぴり情報もいっとくねー。
リゼ選手のお姉さんは去年6年1組だったリズ・ガーデンさんだって。
へぇーーーー
ほぉーーーー
ふーーーーん
えーっとね冒険者ギルドの特別推薦選手、狐のお面を被ったハンス選手は学園生らしいよー」
ザワザワザワザワ
誰だ?
誰だ?
ざわざわざわざわ
へへーん。わかるもんか。どこからどう見ても狐仮面様だぜい!
リゼは見た目から既に小動物だった。
とんがり帽子にローブ。手にする魔石付きの杖はこれぞ魔法使いの3点セットのデフォをちゃんと踏襲してるんだけどガッツリ幼女だ。
うん、リズ先輩をさらに幼くした仔リスだな。
「なんとリゼ選手もお姉さん同様に聖魔法、重力魔法、火魔法を発現できるトリプルなんだって」
すげぇーーーー
中原に10人もいないだろ
こりゃ狐仮面は瞬殺じゃねぇか
「なーんだ。僕はてっきりお姉様から聞いてたアレクとかいう子と闘えるって思ったのに!残念」
おおーっ、僕っ子かよ!
残念ながら俺は僕っ子でも幼女に興味は一切ない!
「嘘つけアレク!熊や山猫の子どもは大好物じゃん!」
「好物言うなシルフィ!それじゃあ俺が変態みたいじゃん!」
「あーん。てめー変態と違うのかよ!」
「さーせんシルフィ先生‥‥」
最近シルフィが容赦ない……。
「何さっきから独り言言ってるの?キショいの」
「初対面なのに失礼だなお前」
「あはは。だってアレクって子は強いみたいだけど、お姉様の話ぶりだと他は大したことないみたいなんだもん。だからアンタも残念賞なの!」
「なんだとー仔リスめ!」
「仔リス言うな!
僕はねーお姉様に強いって言わせた同い年のヴィヨルド学園のアレクって子が許せないの」
「なんでだよ!?」
「だつてお姉様なんだよ?里では1番の天才少女って言われてたんだよ。
そんなお姉様に私は1度だって褒められたことないわ。それなのに帰ってきたお姉様はアレクって子の話ばかりをしたらすぐに王都に行っちゃうし」
「ふーん。リゼはシスコンの拗らせちゃんってわけだな」
「キーー!失礼な狐だわ!よーしギャフンって言わせてあげるの。見てなさいよー!」
地団駄を踏みながら仔リスがこう言ったんだ。
しかもさっきからチラチラと格闘場の中央から少し右寄りを見てるんだよな。
「アレク‥‥」
「ああ、あそこだろ」
「どうすんの?」
「もちろん壊す。シッシッシ」
「(誰かーーノームいるー?)」
すると地中からノームが2体出てきたんだ。
「呼んだかの人の子よ」
「呼んだかの人の子よ」
「ねーねーノーム、悪いんだけどそこの魔法陣があるあたり、発現しないように魔法陣を適当に壊しといてくれる?」
「容易いことじゃ」
「容易いことじゃ」
「じゃあよろしくねー」
「よいやさ」
「よいやさ」
俺がノームとそんな会話をしてるとはつゆとも思わないリゼがリズ先輩よりさらにない胸を張って言ったんだ。
「狐仮面はけちょんけちょんにしてやるの!アンタ少し場所をこっちに移動してよ!」
「なんでだよめんどくせぇー奴だな」
と言いつつもリゼの希望どおりに魔法陣の真ん中に立ってやったんだ。
「こんでいいか?」
「アハハハハ。かかったわね狐仮面!これぞ2代め天才魔法少女マジカルリゼ渾身の魔法陣よ!骨の髄まで味わいなさい!」
なんだよそのパクりまくりの口上は!
「骨の髄まで味わいなさい!」
「骨の髄まで味わいなさい!?」
「あれ?なんで発現期しないのよ?」
「ああこの下のか?」
「へっ?見えるの?」
「見えるも何もリゼの言ってるのは俺の下の魔法陣のことだろ?」
「あんた私の魔法陣に何かした?ひょっとして‥‥壊したの?」
「うん。壊してやったわ、わはははは」
「キーー!なんてことするのよ!
昨日潜り込んで一晩がかりで描いた魔法陣が……」
ガビーンっと両手両脚をついてがっくりしているリゼ。
「シルフィ、こいつポンコツだな‥‥」
「ええ。お姉さんと大違いね‥‥」
「もういいよなリゼ。俺お前と遊んでる時間がもったいないから今度は俺から行くぞ!
ああリゼ高いとこ大丈夫か?重力魔法使えるなら大丈夫だよな」
「えっ?私高いところは」
「きゃーーーーーーー!」
ズズズーーーーーッッッ
項垂れるリゼのまわり畳半分くらいを一気に持ち上げた塔。
それはあの時計塔よりさらに高い高さだよ。
‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥
さっきまでワーワー言ってた観客席がみんなしーんとしてるよ。
「な、な、な、な、なんてことすんのよーーー!狐仮面ーーー!私高いとこはダメなんだからーーー!」
「だってお前重力魔法使えるだろ?」
「高いとこは怖いから自分は飛ばないのよーーー!」
うん。ポンコツ確定だよ。
「なんだそれ!?宝の持ち腐れだなリゼ」
「キーーーーッ狐仮面めーーー。降りたら絶対に許さないんだからーーー」
「あの子ホントにポンコツよね。いいわ私が引導渡してきてあげるわ」
引導渡すって言うか!
なんか異世界の精霊が引導渡すってロマンがないよな……。
ぴゅーっと飛び去ってリゼの横に立ったシルフィの姿はもちろんリゼに見えてないよ。
「ど、ど、ど、ど、どうしてくれるのよーーー。目、目、目、目、目が開けられないじゃないのーーー」
高所恐怖症でガタガタ震えてるリゼに向けてシルフィが容赦ない突風をお見舞いしたんだ。
ビユュュューーーンッ!
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒイイイィィィィィーーーッッ!」
「アレクーこの仔リス白眼剥いて失神したわよーー」
「わかったよーーーシルフィ元に戻すねーーー」
ズズズーーーッッッ
格闘場は何事もなかったように元の平らな地面にもどったよ。
「‥‥狐仮面ハンス選手の勝利でーす」
うわわぁぁぁぁぁ
すげえぇぇぇぇぇ
うわわぁぁぁぁぁ
「おいリゼ。起きろ」
「へっ?!
あっ‥‥‥‥私負けたんだ‥‥」
「ああ。弱い仔リスが狐に負けんだ」
「キーーーッ!今度こそぎゃふんって言わせるんだから!」
「ああ。いつでもかかってこい」
そう言った俺は仔リスの頭をぐちゃぐちゃっと撫ぜたんだ。それは妹や弟にするみたいに。
「き、狐仮面‥‥わ、私が好きなの?」
「なんでそうなるんだよ!」
「そ、そうよね!お姉様が認めるアレクって子なら別だけど。
あんたはただの狐仮面だもんね」
「あーなんでもいいよ。で、リゼお前いつ里に帰るんだ?」
「あのね、明後日のロジャー様の結婚披露宴に出てから帰るの」
「へぇーなんで?お前ロジャーのおっさんの知り合いなの?」
「あのね里のオババ様からロジャー様へお祝いを預かってきたの。だから」
「ふーん。」
「そんでね狐仮面知ってる?アレクっ子が披露宴のお料理を作ったんだって。お姉様が言うには絶対食べなきゃ損するって言ってたから」
「へぇー。じゃあさリゼ。リズ先輩に渡しといてほしいものがあるから明後日お前に預けてもいいか?」
「何なの?」
「ああ飴だよ」
「飴?」
「そう飴」
一瞬リゼの目がキョトンとしたんだ。そりゃ飴に目がないなんて人あんまり聞かないよね。
でね結局俺、披露宴の日にリゼに山のようにたくさんの飴を手渡したんだ。リズ先輩に渡してくれって。
余談だけど、リゼは魔がさしたのか飴の袋を開けて里に帰るまでに飴の味を覚えてしまったらしい。
それからリズ先輩が帰省する夏休みまでに毎日ガリガリ噛んでたんだって。
もちろんリゼは夏休みに帰省したリズの逆鱗にふれたらしいよ。
重力魔法で里の真ん中に首だけだして埋められたんだって。
「お姉様ーーー出してほしいのーーー」
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