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第2章 幼年編
409 ギルド特別推薦枠
しおりを挟む「アレク、お前はこれ被ってけ」
「あっ、また狐だ。もっとカッコいいお面ないの?」
「んなもんあるか。嫌なら素顔で出るか?それとも出るのやめるか?」
「あー狐のお面だーやったーうれしいなあー」
「阿呆め」
「でもおっさん。俺、予選とか出てないよ?そろそろ決勝じゃないの?」
「ああ。お前が出るのは明日の決勝ラウンドだ。ロジャーがねじ込んだんだからちゃんとあとで礼言っとけよ」
「うん。わかった」
国際武闘祭はロジャーのおっさんの結婚披露宴にあわせて開催されることが決まったまさに国際的なイベントなんだ。
王国承認の下、ヴィヨルド領が主催するイベントなんだ。
当然参加する各国ならびに各領には、尚武で名高いヴィヨルド領で一旗あげよう的な意図があるんだけどね。
でも開催するヴィヨルドは違う。たとえ未成年者であっても圧倒的な強者がいると認識させなければならないんだ。そうすれば不必要な争いに巻き込まれなくても済む。
示威(デモンストレーション)イコール平和に繋がるんだよね。
俺?
俺はね単純に強い奴と闘ってみたいんだ。
戦闘狂?それは違うよ。
でもいつのまにか俺も周りの先輩たちに影響されたのかな、あはは。
出場資格は至って簡単なんだ。年齢制限のみ。
中原では広く認知された未成年者(15歳まで)のみが出場資格を有するイベントなんだ。
各国または各領から2名までの推薦。
最初は400人くらいいたんじゃないのかな。剣を使おうが、魔法を使おうが体術だろうがなんでもあり。とにかく未成年者の武闘の総合ナンバーワンを決定する大会だよ。
出場者は未成年者ということを配慮して1日1戦。さらに未成年だから回復魔法を発現できる神父様やシスター、回復職専門の冒険者たちが完全バックアップしてたみたいだよ。あのエリクサーだってたくさん用意してあるみたい。
予選ラウンドは学園ダンジョンに入山する10日くらい前から始まってたんじゃないかな。ヴィンランド中がけっこう盛り上がってたから。
俺は参加しないし、だいたいそんなことより披露宴の準備で忙しかったからあんまり関心もなかったんだけどね。
ダンジョン探索が予想外に早く終わったから、この日も領主様の居館の厨房まで披露宴の準備のお手伝いに行ってきたんだ。
「ひょっとしてシェフも明日の決勝ラウンドに出るんですか?」
「うん。内緒だよ」
聞かれたからついつい答えちゃった。
「「応援してますよシェフ!」」
「「「がんばってください!」」」
「あ、ありがとうございます」
厨房の大勢のスタッフさんに応援されたよ。
明日からの決勝ラウンド、頑張らなきゃな。
あっ俺誰が出場しているかさえ知らないんだよなぁ。
ああでもヴィンサンダー領からはカーマンが予選に出たらしいよ。魔法使いの女の子にけちょんけちょんにやられて失神したらしいけど。
観戦にきてる大勢の観客からはいつまでも失笑が続いてたらしい。
ヴィンサンダー領もシャーリーを出せばよかったのに。シャーリーならけっこういい線いったんじゃないかな。
この夜ダンジョンから帰ってレベッカ寮長にはちゃんと伝えたよ。
「そう。じゃあ私もナタリーとこそっそり応援に行くわね」
「ありがとう寮長」
「勝ったらご褒美でちゅうしてあげる!」
「あははは。それはお気持ちだけで。(ナタリー寮長なら大歓迎なんだけどなぁ)」
「アレク君あんた死にたいの?」
「ま、まさか!」
なぜバレた?
ーーーーーーーーーーーーーー
翌朝の決勝ラウンド。
舞台は領都で1番大きな格闘場で開かれたんだ。
国立競技場くらいの広さがある格闘場。すり鉢みたいになってるから観客席にも何万と収容できるみたい。この世界の人はみんな目がとってもいいから遠くの席でも見えるみたいだね。
「アレク頑張ってね。こっそり応援してるね」
「ありがとうセーラ」
セーラもVIP用の障壁役として呼ばれてるんだって。
【 国際武闘祭 決勝ラウンド 】
◯ 初日 午前第1戦
ヴィヨルド領代表 モーリス・ヴィヨルド 対
海洋諸国代表 トマス・アイランド
◯ 午前第2戦
ロイズ帝国代表 マルコ・ディスパイス
対
アメリア法国代表 ジューダス
◯ 午後第1戦
自治領ガーデニア(魔法使いの里)代表 リゼ・ガーデン
対
冒険者ギルド特別推薦
ハンス
◯ 午後第2戦
獣人国代表 ライル 対
エルフの里代表 ナダル・スカイ
決勝ラウンドの開始前。
セレモニーも開かれたんだ。
格闘場の中央の舞台に向けて紹介された人が四方から歩いて登壇するんだ。
拡声魔法。司会の女性の声が闘技場中に響き渡った。
「みなさーーん。国際武闘祭の決勝ラウンドへようこそーー!」
ま、まさか‥‥こっ、この声は久々の‥‥ステファニーちゃわんだ!
学園芸術クラブ犬獣人ハーフのステファニーちゃんだ。トイプードルみたいなつぶらな瞳がかわいいわん!
「(さぶっ!なんか急に悪寒がするわ‥‥)」
ステファニーちゃんの口の動きがそんなことを呟いていた……。
「みんなーようこそ国際武闘祭へー!
司会のステファニーだよー。よろしくわーん」
わんわん わんわん ステファニーちゃわんわん わんわん‥
あっ!ステファニー親衛隊の合いの手わんわんが始まった!
俺もやりてぇーー!
「きしょっっ!アレクキモいわー!」
シルフィが呆れたように言った。
そのあと前方を見ていったんだ。
「アレク、もう決勝の相手がわかったわね」
「あっ。ホントだ!」
南の入口付近にいる俺から見て北側に。その男がいたんだ。
そいつは風の精霊を肩に座らせたエルフの男だった。
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