367 / 722
第2章 幼年編
368 デザートはパンケーキ
しおりを挟む「「でーらうまいがや」」
「「「ほうだぎゃ」」」
「「「こりゃナゴヤの味やけどナゴヤじゃにゃあ」」」
「「「ほおだぎゃ」」」
シシカバブ一家のみんなが異口同音にカレーライスを賞賛する。
「これはなんとも‥‥うまいな」
「ええ‥‥美味しいですわ」
師匠とシスターナターシャの2人がカレーライスを賞賛する言葉がすべてを顕している。
「アレクお代わりはないのか?」
「神父様、俺もほしい!」
「すいません。カレーはまだありますけど米は本当にありません」
「そうか‥‥」
「米と一緒が最高なのにな‥」
「ジャン秋に米が収穫できたら食えるからな」
「そっか。じゃあ俺も鍛治仕事の合間に一生懸命米を作るよ」
「親方、俺も頑張ります!」
「俺もだ」
「わしもだ」
「「「米作るぞ!」」」
「「「おおー!」」」
うんうん。みんなの士気も上がったよ。よしよしカレーライス作戦は大成功だったな。あとは春休み中に田植えから収穫までをみんなに教えとかなきゃな。俺はたぶん今年もダンジョンに行きっ放しだから。
みんながカレーの余韻でまったりとしている中、トテトテとデイジーが寄ってきた。
「アレクお兄ちゃん甘いのが食べたいにゃ」
(わわっ!なんてかわゆすデイジーちゃん!)
「デイジーちゃん甘いのが食べたいのかにゃ?」
「食べたいにゃ」
「そうでちゅか。アレクお兄ちゃんはデイジーちゃんを食べたいにゃ。くんかくんかくんか‥」
「キャッキャくすぐったいにゃ。やめるにゃ」
「くすぐったいでちゅか?こうかにゃ?こうかにゃ?くんかくんか‥」
「やめるにゃキャッキャ」
「こうかにゃ?こうかにゃ?くんかくんか‥」
「お兄ちゃん‥‥」
「ア、アレク‥‥」
「アレクちゃん‥」
「アレク坊‥‥‥」
「アレク君‥‥‥」
「「「変態だよ‥‥」」」
「食後のデザートはパンケーキです。横の小瓶に入ってるのがメイプルシロップ。たっぷりかけてめしあがれ」
今日のパンケーキはカウカウのミルクとコッケーの卵も入ってるから間違いなく絶品だ。
しかも産地直送のメイプルシロップたっぷりがけだからね。
「あま~い!」
「うま~い!」
「こんな甘いもんは初めて食ったにゃ」
「アレク坊貴族様の食いもんかや?」
「メイプルシロップって蜂蜜みたい」
「アレクちゃん高いのこれ?」
「蜂蜜より断然安くサンデー商会で買えるはずだよ」
「アレクちゃんそれほんとう?」
「ああ母さん。もちろん安くはないと思うけど手がでない値段じゃないはずだよ」
「それは楽しみね。じゃあ月に1度くらいはわが家もぜいたくをしましょうか」
「「やった!やった!」」
▼
あちこちで歓談が進む。
ミリアもシャーリーやアンナと女子トークに花を咲かせている。うん、よかったよ。
そんな中、俺も師匠とシスターナターシャと久しぶりにのんびりと話をしたんだ。
「アレク君これが話題のメイプルシロップよね」
「はいシスター」
「たしかに蜂蜜みたいな甘さね。だけど村の人でも買えなくはない値段なのね?」
「はい。そうなると思います」
「タイラーが手紙で誉めておったぞ。弟弟子は口は悪いがなと」
「(口が悪いのあとを聞かせてくれよ。せめて褒めてる内容を少しくらい教えてくれてもいいじゃんか!ああタイラーのおっさんも言ってたもんな、師匠は昔から怖いジジイだったって)」
「なんじゃアレク、お前ヴィヨルドに行って調子に乗りおったか!」
「痛い痛い痛い。頭ぐりぐり しないで!」
わはははは
ふふふふふ
なんだよ師匠!地獄耳かよ!
「メイプルシロップ。まあヴィヨルド領としては万々歳じゃろうな」
「フフフそうですね」
俺は学園長にもらった茶葉でお茶を淹れる。
「あらこのお茶美味しいわねアレク君」
「学園長が庭で育ててるお茶なんです」
「へぇーそうなの」
「師匠、シスター、学園長って強かったんですか」
「その昔とある戦で共闘したことがあっての。ありゃ強かったぞ。魔法も剣もどっちもいける。当時モンデールとよう張り合うておったわ」
「モンデール神父様とですか!」
「ああ。中原中に名が知れ渡りだしたころのモンデールとな」
「すごっ‥‥」
「世の中には知られてないだけで知識も充分にすごかったわよ彼は」
「へぇーそうなんですね」
あーやっぱりな。まあ考えてみれば同じ転生者でも俺以上はるかに才能がある学園長だもんな。
「師匠、それで時計なんですがこのあとにでも発現しましょうか」
「そうじゃの。夜間のほうが誰がやったかわからんからの」
「ふふふ」
「あと明日からはのんのん村とニールセン村にも建ててきますね」
「たのんだぞ。ただのアレク‥‥小さいのにしろよ!小さいのじゃぞ!」
「アレク君絶対に小さいのよ!小さいの!」
なぜか念押しをされたがなぜだろう?
「ノームたち集まってー!」
「なんじゃなんじゃ」
「人の子が呼んどるのか!」
地中からわらわらと出てきたノームたち。水の精霊ウンディーネも合わせて、この村には精霊がたくさんいるようになった。
「アレク、ここはね精霊に愛される地になったのよ」
「へぇーそうなんだ。それって良いことなの?」
「精霊に愛される地は災害も少ないのよ」
「じゃあさ、ディーディーちゃんが言った夏の旱魃って?」
「ええ。それでも起こるんだから、たぶんこの村はそれほど酷くはならないわ。だけど領全体ではあまり良くないことになるわね」
「そうなんだね‥」
今後はみんなで対策を考えなきゃな。でも今は時計台を発現しなきゃ。
「今から地下室付き2階建の時計台を発現するからね。ノームたちも手伝ってね」
「「「おいさ、おいさ」」」
「楽しみじゃの。人の子と一緒に物を作るのは何百年ぶりかの」
「「「楽しみじゃ楽しみじゃ」」」
「いつでも良いぞ人の子」
「(シスター、アレクが話しておるのは精霊かの)」
「(ええ。たぶん土の精霊ノームかと)」
「(人族が精霊に命令をの)」
「ええ。神話の世界ですね」
「それをあの変態の子どもがの」
「「わはは(フフフ)」」
「じゃあいくよ!」
しっかりとイメージした。上から時計台、2階の建屋、1階の建屋、地下には地下室。これを順に発現していく。
ダンジョンで毎夜のように野営宿舎を発現したからかなりスムーズに発現してるよ。
だいたい1時間くらい?
うん、結構サクサク発現できた。札幌の時計台みたいだよ。
「ああシスター、やっぱりの‥」
「ええ神父様‥」
なぜか師匠とシスターには呆れられた。なぜだろう?
結局村の時計塔は札幌の時計台みたいにしたんだ。だって村の人口も増えたし、訪れる人も増えたからね。
だから時計塔じゃなくて2階建の時計台にしたんだ。
1階は子どもたちの教室や事務室、2階はまるっとホールにしたんだ。これで雨天時に運動もできるしね。もちろん式典なんかもできる。大勢の人がくるイベントは元々の教会と連動してできるし。
時計台。
1,000人を超える住民や観光客に対応できる広さにしたんだ。建屋は煉瓦造り。クラシカルで観光客も納得だよね。
実はね、夜に作ったのには理由もあるんだ。内緒だけど時計台の建屋の下に地下室も作った。これは師匠とシスターだけが知っているよ。教会のホールの奥の部屋とこちらの時計台の奥の部屋、2箇所から秘密裏に通れる地下室なんだ。さらに万が一を考えた出口っていうか逃走経路も作った。東門のはるか先。小高い丘にまで通じる回廊を作ったんだ。使うことはないと思うけど、なんかのときの緊急脱出用にね。
―――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う
ちょす氏
ファンタジー
今の時代においてもっとも平凡な大学生の一人の俺。
卒業を間近に控え、周りの学生たちは冒険者としてのキャリアを選ぶ中、俺の夢はただひとつ、「悠々自適な生活」を送ること。
金も欲しいし、時間も欲しい。
程々に働いて程々に寝る……そんな生活だ。
しかし、それも容易ではなかった。100年前の事件によって。
そのせいで現代の世界は冒険者が主役の時代となっていた。
ある日、半ば興味本位で冒険者登録をしてみた俺は、予想外のスキル「黄金」を手に入れる。
「はぁ?」
俺が望んだのは平和な日常を送るためだが!?
悠々自適な生活とは程遠い、忙しない日々を送ることになる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。


フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる