アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
363 / 722
第2章 幼年編

364 スミス・シュナウゼン

しおりを挟む


 「アレクーここよ」
 「アレク久しぶりー!」

教会(学校)の中庭で2人の女の子が手を振っている。
ブラウンのショートボブ。飛び跳ねる活発な小柄な女の子。えー!元々可愛かったけどミリアってますますかわいくなったな。
それはやっぱりシャーリーにも言えることで。村ではなんとも思わなかったけど、昼間の違う環境で見ると、金髪ですらりとしたシャーリーもかわいいんだよな。
てか、2人並んでバックに教会の絵図。めっちゃ映えてる2人にびっくりだよ!

 「お、お前ら‥‥いつのまにそ、そんなにかわいくな」
 「「えっ?!」」
 「な、な、な、なんでもねーよ!久しぶりだなミリア!」

 (アレク‥赤くなってる。かわいいじゃん!そっか私もかわいいのか‥)
 (昨日は言わなかったのに!でも聞いたぞアレク。かわいくなったって言ったよね!)

教会の前にはシャーリーとミリアの仲良しコンビ。そして軽く会釈をする見知らぬ男女がいた。
農民の子どもに自然と頭を下げられる大人‥‥うん、ミリアのご両親だろうな。
モンデール神父様並に背が高いお父さん。いかにも武人然とした筋肉質な身体に短く揃えた髪、意志の強そうな目元が印象的だ。若干頬がこけてみえるのは牢屋に入れられていたせいなのかな。ブラウンのロングヘア。ミリアによく似た美人なお母さんは常識的で控えめな印象を受ける。活発なミリアはお父さんの血を受け継いだのかな。

 「こんにちは」
 「「こんにちは」」
 「ああ、君が噂のアレク君だね」
 「あ、はい。デニーホッパー村出身、農民の子アレクです」
 「娘と仲良くしてくれてありがとうねアレク君」
 「いえミリアさんによくしてもらっていたのはシャーリーと俺です」
 「今日は娘たちの護衛を兼ねてデニーホッパー村に連れて行ってくれるんだってね、アレク君」
 「はい、村への行き帰りは俺が責任をもって同行します」
 「おぉーアレクまるで冒険者じゃん!」
 「何言ってんのミリア。今日私も知ったんだけど、アレク鉄級冒険者になってたんだよ!」
 「ええ、アレクマジ?」
 「ああ一応な」
 「あれでしょ。私も噂で聞いたんだけどヴィヨルド学園全体でも10傑に入ったんだって?」
 「まあな」
 「すごいねアレク!」
 「道中も安心ねあなた」
 「ああ。これはたしかに安心だな」
 「おじさん、おばさん、村の周りもアレクが発現した高い塀に守られてるから王都並に安全なのよ」
 「そうなのねシャーリーちゃん」
 「そうかい(あの城壁を作ったのがこの少年なのか!)」

 「じゃあミリアのお父さん、お母さん20日ほど娘さんを連れ歩きますから。許してください」
 「(えっ?!娘さんをください?)」
 「(えっ?!やっぱりアレクは私たち2人を‥ハーレム‥)」


 「「(でもいいか‥)」」



そんなミリアとシャーリーを他所にアレクとミリアの両親の挨拶が終わる。

 「じゃあ時計も置いたし、出発するか。ちょっと待ってて」

そう言った俺は時計をしっかりと固定していた鉄を外し、その場で長椅子1台を発現した。

 「出よ長椅子!」

発現した長椅子をリアカーに装置した。
車のリアシートの要領だね。硬くてお尻が痛くなるんじゃないかって思うけど、この時代の馬車でさえ同じように揺れまくるからな。まあ明日からは布シートをつけるけど。

 「「「‥‥」」」

シャーリーもミリアも、ミリアのご両親も絶句しているけど、なんで?俺が土魔法を使えることは2人とも知ってるよな?金も同じようなもんだよ?

 「「アレク‥あんた‥」」
 「あなた‥」
 「ああ‥規格外だな‥」
 「そうだ!ミリア今夜村の温泉に入ろうね」
 「えっ?!温泉ってお風呂よね?」
 「さすがお貴族様よねミリアは」
 「王都でお風呂がある宿に初めて泊まったわ。でもあのお風呂ってめちゃくちゃ高」
 「あのねミリア村の温泉はねいつでも好きに入れるし、この中庭より大きいのよ!」
 「えっ?!」
 「それもね去年アレクが発現したの。今じゃ村の名物よ」
 「楽しみねー」
 「そうよ楽しみよ」
 「そうだぞ2人とも20日間はお前らが嫌だって言っても連れ回してやるからな」
 「「(やっぱりアレクはハーレム‥)」」
 「うん!楽しみ!」
 「楽しみね!」

 「じゃあ行くぞ!」
 「父様母様、行ってきます」
 「ああ楽しんできなさい」
 「皆さんに迷惑をおかけしないようにね」
 「はい!」
 「じゃあミリアのお父さんお母さん失礼します」
 「「よろしくねアレク君」」
 「はい」


 「行くぞ。しっかり掴まってろよ」
 「「うん」」

 ゴロゴロゴロゴロ‥

デニーホッパー村に向けて出発するアレクとシャーリー、ミリアの3人だ。


 ゴロゴロゴロゴロ‥

領都サウザニアを出てすぐ。人目も気にしなくてよくなった。

 「そろそろ飛ばすからな、2人ともしっかり掴まってろよ」
 「「うん」」

 「シルフィ頼んだよ」
 「ええアレク」

 ビュンッ!

 追い風を受けて一気に加速するリアカー。時計もない4輪仕様だから多少のスピードを出しても大丈夫だ。でも帰ったら揺れないようにサスペンションを付けるかな。

 キャーーーッ!
 キャーーーッ!
 やめてーーー!
 停めてーーー!

2人が悲鳴をあげてたのは最初だけだった。

 きゃーーっ!
 あはははは‥
 もっとよーー!
 もっと早くー!

途中からは笑い転げる2人だった。だからジェットコースターじゃないって!







3人を見送ったミリアの両親が校長室を訪問していた。そこにはモンデール神父(学校長)と保健医のケイトがいた。

 「モンデール神父様、先ほど娘のミリアがシャーリーさんと一緒にアレク君が曳く不思議な馬車でデニーホッパー村へ旅立ちました」
 「ああそうですか。娘さんにはこれまでにない貴重な春休みとなるでしょうな」
 「ええ。いきなり金魔法を発現したアレク君に私たちもびっくりしましたわ神父様」
 「はっはっは。見ましたかアレク君の魔法を」
 「ええ。驚きで言葉を出ませんでしたわ。しかもアレク君は剣でもヴィヨルド学園で有数の腕前だとか?」
 「ええ。我がサウザニア学校の生徒では手も足も出ない学園の1800人中の第3位ですよ」
 「まさに規格外ですな」
 「はっはっは。規格外、そう規格外ですなアレク君のあの魔法と武力は」
 「神父様。つかぬことをお伺いしますが‥‥」
 「ああ、大丈夫ですよ。この部屋はケイト先生がシールド魔法をかけておりますからな。どのような話をされても大丈夫です」
 「はい。では……。私には初めて見る彼の姿に、10年も前にお隠れになったわが殿の面影を覚えました。しかも彼のあの優しげな目元は奥方のセーラ様の生き写しのようで‥彼はいったい‥」
 「はっはっは。広い中原には似た人間がいるといいますからな。第一、親方様が亡くなられてすぐにご子息のショーン様も後を追うように亡くなられましたからな」
 「さようでございますな‥」
 「まあそれは置いておいて此度のスミス様の窮状お察し致しますぞ」
 「はいお恥ずかしいかぎりです。まさかこの歳で騎士団を放逐されるとは思いもしませんでした。それもこれも私の不徳の致すところでしょう」
 「王都でも『あの親方様』にしてやられたとか」
 「はい‥私にとって親方様は今もアレックス・サンダー様のみなれば、承服しかねることも多々‥。
ただ昨年にお伺いをしたディル副長、ああディル神父様からの言葉だけを心の支えに挫けずに民を思い精進しております」
 「ディル師はなんと?」
 「はい『あと10年。この先何があろうが、あと10年辛抱せい。この領はある日激的によくなるぞ』と」
 「はっはっは。さすがはディル師!」
 「モンデール神父様?」
 「はいスミス様。私もディル師と同じ言葉を貴方に贈りたいと思っておりますよ」
 「やはり‥それはあの子が‥」
 「さてなんのことでしょうかな」
 「いえ、口が過ぎたようです。それでは私はこれにて」
 「ああ、スミス先生。このあとケイト先生の案内にて学内を見学なされよ。それと諸々は副学校長から話がありますからな」
 「えっ?それは一体‥」
 「騎士団をご勇退されたスミス・シュナウゼン様は明日よりヴィヨルド教会学校の教育武官、スミス先生としてお勤めいただきます。これは法国の法皇印を戴いた女神教教会からの正式な任官状です。すでに王都の教育界、法曹界にも許可を得ておりますからな。ディル師の命と思って諦めてくだされよ」
 「あ、あなた‥‥」
 「モ、モンデール神父様‥‥」
 「ああ、ご息女のミリアさんの学費等に関しては今後卒業まで一切かかりませんからな。これは先ほどのアレク君からの要請が身を結んだもの。真面目な学生が得られる奨学金制度です」
 「な、なんと私たちは彼に礼を言えば‥」
 「何も言わなくて構いませんよ。逆に何か言われると藪蛇を突くことになりますからな。はははは」
 「「‥‥仰せのままに」」



 ―――――――――――――――



いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...