359 / 722
第2章 幼年編
360 幼なじみ②
しおりを挟む「こんばんはー」
「おおアレク君待ってたよ、アンナが」
「アレク君おかえりなさい。待ってたわよ、アンナが」
ワハハハ
フフフフ
ん?アンナが?土産に肉はないぞ?
ニャンタおじさんの家族は猫獣人のニャンタおじさん、人族のおばさん、娘は俺と同い年ミックスのアンナと7歳歳下のデイジーだ。
「おかえりアレク」
「えっ!?」
そこにはスッとした肢体で立っていたアンナがいて俺は思わず目を見張ったんだ。だってアンナが寝転がって肉を食べていなかったんだもん!しかも……。
「アレクおかえり!」
「ただいまアンナ。半年ぶりだな」
「そうだぞアレク。寂しかったにゃ」
半年ぶりに会うアンナはますますきれいになっていた。アンナといいシナモンといい獣人の女の子って人族より早熟なんだよな。俺の中のアンナは幼なじみで出来の悪い妹的な立ち位置なんだ。そんなアンナはいつも寝そべって肉を食べてばかりいるはずなのにそうじゃなかった。しかも寂しかったって。幼なじみの俺と遊べなかった寂しさなんだろうけど。なんだか照れるぜ、まったくよぉ。しかも‥‥やっぱ綺麗になっているじゃん!
きれいになった妹に戸惑う兄の心境だぜ。
「アンナ、き、きれいになったな‥」
「えっ!?なにアレク?なんだって?」
「な、な、な、なんでもねぇよ!」
きれいになったアンナを見てられなくって思わず俺、顔を伏せてしまった。ぜったい耳まで赤くなってるよ。
「(きれいになった‥ブツブツ‥)」
下を向いてなんか呟いてるアンナ。どうしたんだろう?
と、下を向いた俺とアンナの妹のデイジーの目が合った。
「デイジーちゃん!」
「にゃ?」
「アレクお兄ちゃんが帰ってきたにゃ」
「アレクお兄ちゃんおかえりにゃ」
「ただいまにゃ。デイジーちゃんは元気にしてまちたにゃ?(すーはーすーはー)」
俺はデイジーを抱き上げて速攻でお腹の匂いを嗅いだ。
「アレクキモい!でも‥」
さっきからアンナが赤い顔をしているのにはまるで気がつかない俺。そう、俺は猫吸いに夢中だった。
(あーなんで獣人の幼児はこんなにいい匂いがするんだ。すーはーすーはーたまらんのぉ)
「アレクお兄ちゃんくすぐったいにゃ。キャッキャッ」
「デイジーちゃんはかわいいでちゅねー。アレクお兄ちゃんがデイジーちゃんをもらっていこうかにゃ」
「くすぐったいにゃ。キャッキャッ」
「くすぐったいかにゃ?くすぐったいかにゃ?くすぐったい‥」
「あのねアレクお兄ちゃん」
「なんにゃ?デイジーちゃん」
「チャミーお姉ちゃんが言ってたよ。ヘンタイには気をつけなちゃいって」
「えっ!?俺はヘンタイなのか……」
「うん。アレクお兄ちゃんはヘンタイにゃの」
ワハハハハハ
フフフフフフ
キャッキャッ
ガビーン!
ヘンタイって幼児に言われてしまったよ。これは地味にショックだな……。
「おばさん、これお土産」
「あらこんなにたくさんいいの。いつもありがとうねアレク君」
お土産にメイプルシロップと干し魚を手渡した。海から離れたデニーホッパー村で海魚の干物は案外ぜいたく品なんだ。猫獣人はやっぱり肉はもちろんだけど魚も大好きだし。
たくさんあるのはリアカーのおかげだよ。
「これは何なの?マヨネーズっぽいけど?」
「ああこれはね、メイプルシロップっていうんだ。おばさんみんなにスプーンとって」
「え?ええ‥」
「じゃあみんな、ちょっとなめてみてよ」
そう言った俺はみんなのスプーンに少しずつメイプルシロップを注いで手渡した。
「「「えっ!!あまーい!あまーい!あまーい!」」」
でしょでしょー。甘いでしょ~。
「何につけても甘いからね。あーでもそのままなめてたらすぐになくなるよ。しかも虫歯になるからダメだよ!」
「「「あまーい!あまーい!あまーい!」」」
あーダメだわ。アンナもデイジーもぜんぜん聞いてねぇーや。
「あのさ、うち今から温泉に行くんだけどみんなも一緒にどう?」
「いいな。じゃあわが家も行こうか?」
「ええ」
「「行くにゃ行くにゃ」」
「じゃあ準備できたら家に行ってて。俺教会にもお土産置いてすぐに戻るから」
「わかったよ」
「アレクありがとうね」
「アレクお兄ちゃん甘いのありがとうにゃ」
「デイジー明日おやつにパンケーキを作るからな。パンケーキにメイプルシロップはめっちゃ美味しいんだよ」
「楽しみにゃ」
「じゃあ俺教会に行ってくるから」
「「わかったにゃ」」
▼
教会にもお土産を届けてきたんだ。クーラーボックスに入れた魚の干物とメイプルシロップ。それからタイラーのおっさんから預かった手紙と酒。ロジャーのおっさんからの結婚式の招待状だ。
ダンジョンからのドロップ品のレプリカで時計塔を作りたいって話もしたよ。
「師匠、タイラーのおっさんが兄弟子だなんてなんで教えてくれなかったんですか?」
「わははは。わかって接してたらアレク、お前は構えるだろう。構えず先入観を持たずに人に向かうことこそ大事なんだぞ」
「なるほど!さすが師匠だ」
「今日はこれからみんなで温泉なんです。じゃあ明日あらためて来ます。時計塔の場所も決めといてください」
「明日は午後から刀をみてやるからな」
「はい。お願いします。じゃあ失礼します」
「シスター、秋にはヴィヨルドへ行くことになるからの。1週間ほど誰かに留守の手配を頼ばねばの」
「はい神父様。楽しみですね」
「そうじゃの」
わが家とジャンを除く3家のみんなで温泉に一緒に行ったんだ。
手を繋ぐヨハンとチャミーを見てやっぱり羨ましかった。
でもいいんだ。俺はデイジーをおぶっているから。ああ仔猫はやっぱりかわいいよな。
俺におぶさったデイジーはアンナと手を繋いで歩く。
「(あなた‥)」
「(ああアンナの想いが叶えばうれしいんだがな)」
「(どうにかならないかしら)」
「(こればかりはなぁ)」
「「‥‥」」
そうは思いつつも、ニャンタ夫妻は思った。娘の想いが通じることは厳しいだろうと。それはアレクがこのまま村に止まる将来の絵図はどうにも想像できなかったからだ。
▼
みんなで入った温泉の帰り。
「アレク‥」
そこにはいかにも俺を待っていた仲間の姿があった。
「おおーシャーリーただいま。俺、今日帰ったんだ」
「うん‥‥おかえり‥‥」
「手紙読んだよ。ミリアの手紙もな」
「う、う‥‥うわーん」
いきなり号泣したシャーリーが俺に抱きついてきたんだ。
「ちょっ!?おま‥」
一瞬キムラ君のモノマネが頭に浮かぶようなベタな台詞(誰もわかんないよな)を発してしまったけど‥‥女の子に抱きつかれるなんてドキドキした。でも、どどど、どうしたんだ?
―――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる