アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

359 幼なじみ①

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359  幼なじみ①

帰省の報告に行ったのは、近所のジャンとアンナの家だ。
ジャンジャック(ジャン)は幼なじみで俺の1番の親友。
人の良いチャンおじさんは村長だ。村の発展にあわせて近ごろはますます忙しくなった。だから最近は本業の鍛治仕事はジャンが1人で頑張ってるはずなんだ。
ジャンの妹チャミーは弟ヨハンと同い年で仲が良い。いつも手を繋いで教会の幼年学校に通っている。チャミーはヨハンの彼女なんだろうか。正直‥‥羨ましいぜ。

 「「おかえりアレク君」」
 「ただいま。おじさんおばさん、ジャンは?」

 チャンおじさんがニッコリと指さしたのは家の裏の工房の方向だった。ああ、今日もまじめに働いてるんだなアイツ。
ジャンのお母さんも言う。

 「村も1,000人を超えたでしょ。だからこの人も似合わない村長の仕事で忙しいのよ」
 「わはは。似合わないだって!おじさん」
 「ワハハ。ワシは自分でもそう思ってるよアレク君」
 「わははは」
 「でね、鍬や鋤、鎌などの農機具の仕事もすごく増えたのよ。でもこの人は村長の仕事で忙しいでしょ。だから夏以降はジャンが1人で頑張ってるのよ」
 「そうなんだよアレク君。アイツも心を入れ替えたようなんだ。ずっと頑張ってるんだよ。しかもあいつに弟子までできてな」
 「弟子?!」
 「ああ。夏の終わりにアレク君がヴィヨルドの学校に行っただろ。ちょうどその頃、アレク君と入れ替わるように孤児の子が商隊について1人で村に流れ着いてな。どうしようかって神父様も含めてみんなで話をしてたんだよ」


領都サウザニアでもヴィンランドでも孤児の問題はなかなか解消しないんだよな。そして孤児の末路は犯罪に巻き込まれるのが相場なんだよな。

 「うんうん。それで?」
「そうしたらな、ジャンがその子に聞いたんだよ。ああその子、ガンツって言うんだけどな」
 「お前はどうしたいんだ?って」
 「そうしたらガンツがこの村に居たいって言うんだ」
 「うんうん」
 「ジャンに向かって、何でもやるから俺をこの村においてくれって」
 「うんうん。ジャンは何って?」
 「俺は鍛治仕事しかできない。毎日朝から晩まで働き詰めだ。それでよかったら教えるぞってな‥‥」

あ~なんかジャンが言った雰囲気が伝わるよな。でも‥‥アイツらしいな。

「でそのまま半年か。ガンツは今もジャンが住み込みの弟子にして扱いてるよ」
 「へぇージャンに弟子がねぇー」
 「ああ」
 「どんな子なの」
 「ありゃジャンと変わらないな。言葉も少ないし。そのくせ」
 「「まじめだし」」
 「「「ワハハハハ」」」

 「アレク君もみてやってくれ」
 「うん」
 「そうそう。村の会議にはアレク君も出てくれよ」
 「うん。わかった」

おじさんたちにお土産の魚の干物とメイプルシロップを渡したよ。

 「こんなにたくさいいのアレク君?」
 「うん。リアカーで帰ってきたからね。たくさん載せてきたんだ」
 「リアカー?」
 「うん。明日にでも見て。使えそうだったら村で作ったらいいよ」
 「ワハハ。ますます忙しくなるなジャンは」
 「違うよ。チャンおじさんが作ればいいんだよ」
 「だよな。ワシも本当は村長なんか辞めて鉄を叩いてたいよ‥」
 「あはは‥チャンおじさんは村長なんだからそれは無理!しっかり村長をやってよね!」

人柄のいいチャンおじさんだからこそ村長にはぴったりなんだ。このままずっと村長をやっててほしいな。



トンカントンカントンカン‥

裏の工房では規則正しく鉄を叩く音が聞こえる。うん、ちゃんとやってるじゃん。

 「ジャンただいま」
 「おおアレクお帰り。てか、ずいぶん永かったな」
 「ああ。授業の一環でダンジョンに潜ってたよ」
 「へぇー」
 「そんなことより‥‥おお君がジャンの内弟子だね」
 「はいガンツって言います。よろしくお願いします」

そこには妹のスザンヌと同い年くらいの痩せた男の子がいた。うん、まじめそうな子だな。

 「ガンツ君ジャンはどうだい?」
 「はい。師匠は何もできない俺に厳しいけど優しく鍛治を教えてくれてます」
 「へぇーー師匠がねえー。へぇーー」
 「なんだよアレク!その疑り深い目は!」
 「あーなんでもねぇよ。ただへぇーーって思っただけだよ」
 「けっ!」

 ワハハハ
 わははは


 「ジャン後で温泉に行かないか?」
 「すまん。納品予定の鍬がまだ追いついてないんだ」
 「そっか。仕方ないな。怠け者だったお前がすっかりチャンおじさんみたいに真面目になったな」
 「ああ。努力しなきゃお前に対して恥ずかしいからな」

真っ直ぐな瞳をしたジャンが言った。

 「「ジャン(アレク)」」

お互い拳をぶつけ合った。俺たちは幼なじみで1番の親友なんだ。

 「しばらく居るんだろ?」
 「ああ20日くらいだけどな」
 「わかったよ」

活況のデニーホッパー村の鍛治を一手に引き受けるジャン。町長職で忙しいチャンおじさんの手助けはあまりなさそうだ。そうした意味からもジャンの仕事を下働きで支える住み込みのお弟子さんガンツ君ができたのは良かったな。


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