アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

358 家族団らん

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 「ただいまー」
 「「「お帰りアレク(アレクちゃん/お兄ちゃん)!」」」

夏休み以来。
我が家に帰省だ。そこには、まるで俺が帰ってくることを知ってたみたいな家族が待ち構えていたんだ。

 「アレクちゃんが帰ってきたってニャンタさんから聞いたのよ」

マリア母さんが言いヨゼフ父さんが大きく頷いた。

 「ああそうなんだ」

小さな声で弟のヨハンも言った。

 「(あのね噴水にいたウンディーネさんたちがね、お兄ちゃんが帰ってきたってディーディーちゃんに教えてくれたんだ)」
 「(なるほどな)」
 「(お兄ちゃんの魔力がすごいって!ウンディーネさんたちが驚いてたよ)」
 「アレクお兄さんおかえりなさい」
 「ディーディーちゃんただいま。いつもヨハンを守ってくれてありがとうね」
 「いいえお兄さん」

もちろんディーディーちゃんの声や姿形はヨハンと俺にしか見えないんだけどね。
ディーディーちゃんはね、誰かと違ってお淑やかでね‥‥

 じぃーーーーー

シルフィの目線が刺すように痛い。うん、考えるのはやめとこう。

弟のヨハンは俺の6歳歳下になる。ヨハンには水の精霊ウンディーネのディーディーちゃんが憑く。ディーディーちゃんはヨハンとわが家のピンチを救ってくれたこともある水の精霊だ。

 「お兄さんあとでお話があります」
 「うんディーディーちゃん。急ぎ?」
 「いいえ」
 「じゃあ夜遅くでいいかな」
 「はい」


 「お兄ちゃん、お兄ちゃん‥」

 ぐりぐり  ぐりぐり‥

そんな精霊との会話が見えない妹のスザンヌが俺のお腹に向けて頭をぐりぐりなすりつけてくる。負けじと弟のヨハンもぐりぐりと。

 ぐりぐり  ぐりぐり‥
 ぐりぐり  ぐりぐり‥

 「「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん‥」」
 「お前ら相変わらず甘えん坊だな‥」

俺はかわいい妹と弟をしっかりと抱きとめて2人の背中をさすってやる。ひとしきりぐりぐりやって落ち着いた2人を引き剥がして、ヨゼフ父さんとマリア母さんにも帰省の報告をする。

 「ただいま父さん」
 「お帰りアレク」

がっしりとしたヨゼフ父さんとハグをする。相変わらずデカいな、ヨゼフ父さんは。

 「ん。大きくなったか?」
 「ははは。半年くらいで変わんないよ」
 「そうかなぁ」

次いでマリア母さんにも帰省の報告(ハグ)をする。

 「ただいまマリア母さん」
 「お帰りアレクちゃん‥ううっ‥」
 「なんで母さんはいつも泣くんだよ。俺ちゃんと元気に帰ってきたよ!」
 「だってねアレクちゃん、お母さんは遠くに行ったアレクちゃんが心配で心配で‥しかもこの冬は手紙もくれなかったじゃない!」
 「ごめん。この冬はダンジョンがちょっぴり永くなっただけなんだよ。(本当は死にかけたけど‥)母さんがそんなんだと‥ほらスザンヌとヨハンが‥」
 「うっ、うっお兄ちゃん‥」
 「お兄ちゃん、うっ、うっ‥」





 「「うわぁーーん!」」

 「ほら母さん」
 「あら‥」


 父さんや母さんと抱きあう俺が羨ましいと思ったのかまた近寄っきた妹弟。そこに涙ぐむマリア母さんに釣られて……。
結局また夏と同じ光景となってしまった。
妹と弟を真ん中に俺。さらにそんな俺たちを抱きしめる母さんと父さん。家族5人がこのまましばらくじっと抱きあって過ごしたんだ。


 「くんくん。あー!お兄ちゃん温泉行ってきたんだ!ズルい!」
 「ああ、移民のお爺さんとお婆さんを案内きてきたからな」
 「「ズルいズルい!」」

 「じゃあまた後でお兄ちゃんも一緒に家族みんなで温泉に行こうな」

ヨゼフ父さんが言う。

 「「「やったー!」」」

小躍りして喜ぶスザンヌとヨハン。

 「母さん腹減ったわ」
 「そう思って準備してたわよ」
 「「腹減った、腹減った、腹減った‥」」
 「お前らお行儀の悪い歌はやめなさい」
 「お兄ちゃんも歌ったらいいのよ!あっ、お兄ちゃんの歌はぜったいダメ!」
 「なんでダメなんだよ!」
 「だってお兄ちゃんの歌は面白すぎるもん!」
 「なんだよそれ‥」

 ワハハハハハ
 フフフフフフ
 キャッキャッ

家族みんなの団らん。やっぱりこの時間はいいな。

 「あとでみんなにお土産においしいお菓子を作るからね」
 「「やった!やった!やった!」」
 「それとマリア母さん、明日の朝ごはんは俺が作るからね。麦を超えるすごい植物の種をダンジョンで見つけてきたんだ」
 「へぇー麦を超える種?」
 「ああ。これはあとで父さんにも作付けの相談があるんだ」
 「お前の話はいつもすごいことになるからな。よし、父さんも心して聞かなきゃな」
 「うん。本当にすごいことになるからね」
 「だってさマリア」
 「困ったわね‥」

 わははははは
 ふふふふふふ

そんな話をしながら夕食になったんだ。マリア母さんが作ってくれたのはいつもと同じわが家で採れた野菜を塩ゆでしたものと野菜たっぷりの塩味のスープ。干し肉が増えたのは野菜の収穫が順調の証だろうな。

 「うん、美味い!やっぱり母さんが作るメシは中原1だよ!」
 「あら大袈裟ね」
 「それくらい美味しいんだよ」
 「お兄ちゃん、ちゃんと噛まないとダメなんだよ」
 「お姉ちゃんいつもお母さんに言われてること言ってるー」

 ワハハハハ
 フフフフフ

野菜主体の素材そのものの滋味深い味わい。やっぱりわが家のマリア母さんの作ってくれるメシは最高だよ!





食後。メイプルシロップをかけたパンケーキを焼いたんだ。家にあるコッケーの卵を入れたからね。ふっくらした美味しいパンケーキだよ。メイプルシロップもたっぷりかけたから。

 「甘~い!」
 「蜂蜜みたいな甘さね」
 「「「美味い!美味い!」」」

みんなも大喜びで食べてくれた。

お土産のメイプルシロップとパンケーキの粉が入ったアレク袋はマリア母さんに渡した。干した魚はヨゼフ父さんに渡した。たぶんいつもの3人で飲む肴になるだろう。

 「じゃあ俺、ジャンとアンナのとこへもお土産置いてくるから」
 「お兄ちゃん温泉に行くんだから早く帰ってね」
 「ああ、わかったよ」

あらためて帰ってきたんだなという穏やかな気持ちになった俺だった。
 


 ―――――――――――――――



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