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第2章 幼年編
350 卒業式
しおりを挟む「じゃあレベッカ寮長。今日は卒業式のあと、そのまま帰省するからね」
「いつ帰ってくるの?」
「ちょうど1ヶ月留守にする予定だよ」
本当は例年どおりホーク師匠と修行なんだけどダンジョンが長引いたから、今年は行けませんって手紙を出しといたんだ。だから1か月はのんびり過ごすむもり。
「わかったわ。気をつけていってらっしゃい」
「うん」
「ところでアレク君そのリアカー?たくさん詰めるからいいわね」
「帰ったら男子寮も女子寮も1台ずつ置いておくね」
「あらありがとう」
「あっ、間違えた。ナタリー女子寮長のとこに1台だけでよかったんだった!」
「あんた!か弱い私にはリアカー要らないって言うの!」
「か弱い‥?」
「なによ!」
「わははは。帰って
きたら用意するね。じゃあレベッカ寮長いってきまーす」
「本当にもう!いってらっしゃい」
(去年寮に来たころはあんなにびくびくしてたのにねー。すっかり漢の顔になってアレク君)
男子寮も学園も。
ここは気持ちの上でますます第2の故郷になった。ヴィンサンダー領へはもちろん帰省なんだけど、ここヴィヨルドももう故郷なんだよね。
リアカーで帰るのはね、お土産はもちろんだけど荷物にお米もあるからなんだ。
300人を送る卒業式。
着席して式を見守るのは学園生1500人はもちろん、領の偉い人や他領の偉い人も来賓で来ていたよ。商業ギルドのミョクマルさんとミランダさんも来てくれてた。ミランダさんは晴れやかな笑顔をしてたよ。式のあと少し話をしたんだ。
「アレク君結婚式のお料理と引出物をやってくれるんだって?本当にいいの?」
「いつもお世話になってるからこれくらいは当たり前じゃん。だいたいロジャーのおっさんしこたまお金持ってるって聞いたからね」
「あんまりふんだくっちゃダメよ!これからの生活があるんだから」
「もちろん冗談だよ。でもミランダさんからはふんだくられそうだって脅しといてねシッシッシ」
「ええ。ふふふ」
そんな和やかな雰囲気で商業ギルドのベテラン受付嬢さんとの会話をしてたんだんだけど……。
冒険者ギルドからは顧問のロジャーさんとヒロコさんが来ていた。
「お、おおアレク‥」
「おっさんどどどどどうすんだよ‥」
「知るかお前‥」
「「怖い‥」」
ロジャーのおっさんは始終下を向いて冷や汗をかいていたよ。それは俺もだけどね。なんでかって?
ヒロコさんの目線が常に2箇所だけを交互に見てたから。隣のロジャーのおっさんと‥‥
1500人もいる在校生の中から俺だけをじっと睨むヒロコさん。うん、チビりそうに怖かった……。
ヴィヨルド学園を卒業する300人は就職に困ることはないって聞く。とくに1組の30人に至っては引く手数多とも。
そんななか、卒業生の総代はマリー先輩だった。マリー先輩の挨拶は堂々としてすごく立派だった。拍手も会場全体が割れんばかりだったし。
「マリーは話も上手よねー」
「すぐ緊張するアレクだったら、ああはいかないわね」
「さーせんシルフィさん。そのとおりです……」
式の中ではいくつかの表彰もされてたよ。顕著な成績を上げたとかなんとかではリズ先輩とビリー先輩が表彰されていた。もちろんダンジョン探索した先輩たち全員も壇上で表彰された。
人一倍大きな鰐獣人のゲージ先輩と人一倍小ちゃな人族のリズ先輩が並んで表彰を受けてた。差別もなく他種族にも寛容なヴィヨルド領の懐の広さを俺は羨ましいと思った。
先輩たちの進路はこうだ。
マリー先輩→王都学園に進みその3年のち、そのまま王都学園の教師になるそうだ。
タイガー先輩→領都騎士団へ入る予定。
オニール先輩→法国に帰って、見習いから正式なモンク僧になる予定。
リズ先輩→王都学園で3年さらに勉強する予定。
キム先輩→海洋諸国に帰省する。キム先輩はこれからがたいへんらしい。
ビリー先輩→王都学園で3年間勉強する予定。
ゲージ先輩→タイガー先輩と同じく領都騎士団に入る予定。
オニール先輩とキム先輩には当分会えなくなると思うと寂しいけど、次会うときには成長した姿をみせたいな。
「アレク今度は負けないからな」
「俺もだアレク」
「私もよ」
「おお!俺も負けねぇーからな!」
「ダーリン。ウチは負けてもいいにゃん」
「シナモン‥にへっ‥」
「「「あっ変態来た!」」」
1年1組のみんなとは春に再会だ。そのままみんな2年1組になると思うけど。
「じゃあシルフィ行こうか」
「ええアレク」
ヴィヨルド学園の卒業式が終わった後。俺はその足で帰省した。
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