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第2章 幼年編
336 違和感(改)
しおりを挟む【 お詫びとお断り】
昨日更新の前作と今作はタイトルを含めて重複しています
(改めて加筆修正をしています)
今作と次作が繋がりますので再読いただければ幸いです
(時間ができたらまとめ修正するつもりです‥‥イツノヒカ)
読書の皆様にはご迷惑をおかけしますが、配慮いただきますようお願いします(拝)
ーーーーーーーーーーー
「カエリリタケレバオレタチヲタオシテミロ!」
あいつが名乗りをあげたんだ。
背格好は俺と変わらないゴブリンのあいつ。それでも全身からは紛れもなく強者のオーラを発していた。
「へぇー案外まともなこと言うじゃん!でもね‥‥」
「ああシルフィ。そうだよな‥‥」
シルフィが思わず声に出して言った。でも最後の言葉に、俺も激しく同意する。案外まともなことを言うけど‥‥
それでも。
それでもお前のせいでリズ先輩とゲージ先輩は死にかけたんだぞ。てか一歩間違えてたら死んでたんだぞ!
死人までは出さないのが学園ダンジョンの良いところなんだろ?身体に欠損箇所ができたって最後の最後は学園
生に寄り添ってくれるから学園ダンジョンなんだろ?
あおちゃんと話しててそれはよくわかったよ。ダンジョンの管理者はちゃんと学園生のことを考えててくれてるって。
でも‥‥
あおちゃんが言ったように、イレギュラーのお前はやり過ぎた。だからその報いは受けてもらうからな。
「よーし!」
パンパンッ
俺は自分の頬を叩いて気合いを入れる。
「正面からあいつを倒すよシルフィ!」
「フフフ。そうこなくっちゃね!」
サンダーボウ(雷矢)を前面に発現して闘えばゴブリンたちを圧倒できる。でも俺はあいつの土俵にのって、それでも圧勝してやるんだ。だからサンダーボウ(雷矢)は使わない。あいつはクソ野郎だけど名乗りをあげたんだからただで殲滅はしない。
正々堂々と向かってくるのならこちらもそれに応えて倒してやるよ!
ギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッ‥
数は300体ほど。だけどあいつが指揮するゴブリンたちだ。一筋縄ではいかないだろうな。
「射かけてきたぞ!」
距離は依然50メル近く。
矢を構えるゴブリンの中から、あいつの指揮さえ理解できないゴブリンアーチャー数体が矢を射掛けてくる。
シュッ!
ふらふら‥
シュッ!
ふらふら‥
「ハア、ぜんぜん届かねぇぞ!」
「それでも油断しちゃダメだよオニール」
「ああ、もちろんだ。油断はしねぇ」
やっぱりゴブリンアーチャーだからな。距離20メルでさえもおぼつかない奴らばかりなんだ。ゲージ先輩は接近されてデカいから的になったんだろ。今度はそうはいかないぞ!
「タイガー、アイツら盾持ってねぇか?」
「ああオニール、そう見えるな。どう思うキム?」
「ああ。どうも弓矢のアーチャーと盾役のゴブリンがセットみたいだな」
俺にも50メルの距離からは、盾を構えるゴブリンと矢を番えるアーチャーが2人1組に見えるんだよ。何か気になる……。
「進むよみんな」
ザッザッザッザッザッ‥
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ‥
休憩室の扉まであと30メルとなった。
依然仕掛けてこないゴブリンたちは300体。
ギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッ‥
「ちょっと怖いね」
「そうね‥」
ビリー先輩が言うのも理解できる。これだけ接近してるのにまだ突撃してこないんだもんな。これだけ近づいてもまだ統制がとれてるし。
シュッ!
ふらふら‥
シュッ!
ふらふら‥
それでも。中には馬鹿もいるんだよな。届きもしないのにゴブリンアーチャーが放つ矢が飛んでくる。しかも弱い威力で。
こっちはビリー先輩、マリー先輩、俺の3人がいる。しかもこの距離なら余裕の射程圏だ。
ふつうに狙っても当たるし、マリー先輩と俺は風の精霊の加護がついているから精度も高い。だから今のこの30メルは余裕だ。精霊とは関係なしにビリー先輩の精度はさらにすごいし。
「ここから3人で射掛けるよ。向かってくる奴らはタイガー、キム、オニール、シャンク君に任せるからね」
「「「了解!」」」
「じゃあマリー、アレク君いくよ!」
「「ええ(はい)!」」
シュッ!シュッ!
シュッ!シュッ!
シュッ!シュッ!
ビリー先輩、マリー先輩、俺の3人が並んで連射する。
ザッザッザッザッ!
すると‥‥いきなりゴブリンたちが動きだした。盾役が周りを囲み、盾の形がみるみるうちに変わった形状ひなる。その中には弓士が取り込まれたんだ……。
バババババッ!
盾!?
盾でガードしてるのか!
なんだこの形は!?
俺たちが放った矢はゴブリンたちの盾のガードに直撃した。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ギャーッ!
ガンッ!
ギャーッ!
ゴブリンたちは盾を合わせ鏡のように、まるで亀甲のように形を合わせたんだ!その隙間を抜け出た矢が2本刺さっただけだ。しかもおそらく大したことない。ふだんの3人なら考えられない貧果だ。
「ははは。6本放って2本だけ。すごいね!」
「ほんとね。フフフ」
すごい!なんて言うビリー先輩。なんか嬉しそうだな。あれ?笑ってない?
ビリー先輩もマリー先輩と同じで戦闘狂だったっけ?
「これじゃ仕方ないね。そうだなぁ‥ああ、こんなときはアレク君のおもしろ矢‥‥これかな」
そう言いながらビリー先輩が亀の甲羅のように丸まったゴブリン盾に矢を放った。
シュッ!
ジュワーーッッ
「アレク君あそこに火をつけて」
「あっ、そうか!それがありましたね!ビリー先輩。ファイアボール!」
そうだった。揚げもので使った油や魔獣から抽出した油を矢尻に溜めた矢を作ってたんだ。作ったときはアラクネ対策だったけど、まさかこんなふうに使えるなんて思ってもみなかったよ。
ジュワーーッッ‥‥
油が一部の亀甲の盾の上を広がっていく。そこにファイアボールを投げる俺。
「ファイアボール!」
シュッ!
ボワッッ‥‥
ギャァーーーッッ!
ギャァーーーッッ!
瞬く間に亀甲の上を広がっていく小さな火の海。それでもその下では、慌てたゴブリンが盾を振って鎮火を試みる。でもそれを悠長に待つ俺たちじゃない。
シュッ!シュッ!
シュッ!シュッ!
シュッ!シュッ!
ギャァァーーーッッ!
ギャァァーーーッッ!
ギャァァーーーッッ!
ヨシ!亀甲に穴が空いた。
「どんどんいこうか」
「「ええ(はい!)」」
さらに矢を放とうと番える俺たちだったが、奴らも素早い動きを見せた。
ドドドドドドドドド‥
ギャッギャッギヤッギャッギャッギヤッ‥
ガルルーッ ガルルーッ ガルルーッ ガルルーッ ガルルーッ‥
後方からもゴブリンの一群が迫ってきている。速さに長けたゴブリンライダーたちだ。
「離れます!後ろは任せてください」
「わかったわ!」
「頼むよアレク君!」
「はい!」
俺はビリー先輩やマリー先輩と離れてリアカーの後ろに陣取ったんだ。
そして後ろから迫ってくるゴブリンライダーたちに備えたんだ。
後から思えば、最初の下手くそな矢も、弓士と盾役2人1組の構成も、似つかわしくないゴブリンの亀甲の陣もすべてが誘い水だったんだ。
対人戦を生き延びたゴブリンソルジャーは進化を果たす。俺たちはてっきり一兵卒のゴブリンソルジャーから2段階進化してゴブリンキャプテン(大尉)ぐらいにはなっただろうって甘く考えていたのかもしれない。奴はさらにその上、ゴブリンコロネル(大佐)へと進化をしていたんだ。
ゴブリンコロネル(大佐)
ゴブリンを大隊クラス(1,000体)で指揮統率できる魔物。
冒険者ギルドでは最優先討伐案件となる存在にあいつは進化していた。
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