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第2章 幼年編
328 蘇生
しおりを挟む「あおちゃん!早く出て!一刻を争うんだ
」
「あおちゃん!」
「アレク、どうしたの?」
(勝った!)
脳内での会話が始まる。
「あのね、あおちゃん。さっきリズ先輩が亡くなったんだ」
「!」
あおちゃんが息を飲む感じが伝わる。
「ゴブリンソルジャーだよ。イレギュラーの存在がやったんだ」
「ええ‥‥」
「イレギュラーの存在がやったことだからダンジョンに責任はないよ」
「ええ‥‥」
「だからね、あおちゃん、時間がないから教えてほしいんだ」
「何?」
「AEDの電圧ってどのくらいだったっけ?俺の雷魔法のちょうどを教えてくれる?」
「‥‥」
学園ダンジョンの「運営者」が女神様かどうかはわからない。ただ学園ダンジョンで未だにいない死人を出したというイレギュラーな事態は避けたいはずだ。だから運営側に位置するあおちゃんなら応えてくれるはずなんだ。
「あおちゃん?あおちゃん?あおちゃん聞いてる?まだリズ先輩の心臓が停まってまだ5分から10分以内なんだ」
「え、ええ‥‥」
「だからね、あおちゃん。昔の記憶でいいから教えてくれよ。俺の発現する雷魔法をAEDと同じ電力にしたいんだ。AEDってどのくらいの電力だっけ?」
「‥‥わかったわ」
何かを覚悟したようなあおちゃんの返答があった。
「いいアレク、1200V(ボルト)~2000 Vで30A(アンペア)~50Aを数ミリ秒単位よ」
「今地面に放つね」
俺は想定するレベルの雷魔法を発現して地面に流す。
「どう?」
「強いわ。もっと弱く!」
「こう?スパーク!」
「ええ、ええ。それでいいわ」
「ありがとうあおちゃん」
「あとは右手で雷を発現しながら左手で魔力の流れをつかみなさい。発現するときは左手は離すんだよ。アレクの想いは必ず魔法使いさんに繋がるわ。でないと私‥‥」
「ありがとうあおちゃん。早速やってみるよ!」
気もそぞろな俺は
「‥‥」から先のあおちゃんの呟きが聞こえなかったんだ。
止まったばかりのリズ先輩の心臓。本来心臓の働きは、リズミカルな鼓動により酸素を含んだ血液を体中に送りこんでいる。それにより人は生存できているんだ。
AED(自動対外式除細動器)は心臓の痙攣や止まった動きを元に戻す働きがある。
このまま何もしないとリズ先輩の致死率は1分毎に10%ずつ高まるはず。セーラが来てくれるのにまだ5分、10分はかかるだろう。
俺は転生前にAEDの講習は何度も受けた。実際自分が死ぬときに電極を当てられた記憶もある。だから大丈夫。何とかなる。あとは俺が必要な電力を過不足なくちゃんと発現するだけなんだ。
「シルフィ。ちょっと離れてくれる」
「ええ‥?」
「じゃあリズ先輩いきますよ」
「スパーク!」
「バチッ!」
註) AEDに纏わる話となりました。医療をふざけたものにする意図は一切ありません。あくまでも創作物ですので、そのへんご理解ください。 作者
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