アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

305 44階層 延々と⑦

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 「おいおい‥‥」
 「またか‥‥」
 「なにが足りない‥‥」
 「どうして‥‥」

気合を入れて臨んだ2周め。そして3周めも扉はなかった。
1周にかかる日数は1日だからわずか3日なんだ。正直これまでの階層と比べて大したことは何もない。
野営でも魔獣はほとんど出てこなかったし。なのにみんなの雰囲気は‥‥うん、かなり悪くなってきた。逆に俺はけっこう冷静に考えられている。
 

 「「「‥‥」」」

4周めも扉はなかった。

 「「「‥‥」」」

そして5周めも。
誰もが口を開かなかった。そしてこの夜の野営。ついに‥‥最初にセーラの気持ちが折れた。

 「もう‥‥イヤーーー!うっ、うっ、うわぁーん‥」

大声を上げて子どもみたいに泣きじゃくるセーラ。

 「うるせー!泣いてもなんにも変わんねぇぞ!」
 「ちょっとオニール!その言い方はないんじゃない?」
 「!すまんセーラ‥‥言いすぎた。すまんマリー‥‥」
 「わ、私こそ泣いたりしてご、ごめんなさい‥‥ううっ」

みんな下を向いている。
そうだ!こんな時こそ、みんなを盛り上げないといけない!

ガタンッ!

立ち上がった俺は野営食堂の真ん中にいってみんなに声をかけた。

 「あーもう先輩たちもセーラも雰囲気がめちゃくちゃ悪いです!こんなことぐらいで凹んでどうするんですか!?」
 「そ、そうだな。アレクお前の言うとおりだ」
 「オメーの言うとおりだ‥」
 「ああ、すまんアレク。不甲斐ない先輩で‥」
 「ごめんなさいなの」
 「先輩たちは学園50数年の中でも現在2番めの記録持ちなんですよ?これからの学園史に残るし、俺やシャンク先輩やセーラが尊敬してやまない偉大な先輩たちなんですよ?!」
 「「そうです!」」
 「フッ。偉大じゃないがな。それでもすまん心配をかけた」
 「ええ‥凹んでた私たちが悪かったわ」
 「不甲斐ない先輩でごめんね」
 「ホントそうです!え~ではそんな不甲斐ない先輩たちと泣き虫セーラが盛り上がる遊びを今からしたいと思います」
 「「「ん?」」」
 「みなさん拍手ー!」
 「「ん?おおっ?」」
 「「拍手な」」
 「「「そうだ拍手な」」」

 パチパチパチパチ
 パチパチパチパチ
 パチパチパチパチ

 「はい、じゃあみんな椅子を持ってこっちに集合ー」
 「「「おお。椅子な」」」
 「ま、まさかアレク‥‥ア、アレをやるんじゃないでしょうね?」
 「もちろんアレをやります!」
 「キャーー!やめてーー!」
 「「ん?どうしたのシルフィ?」」
 「シンディ、マリー早く、早く耳を塞いで!早く!でないと今夜から悪夢を見るわ!悪魔の再来よ!」

そう言って耳を塞ぎガタガタと震えだしたシルフィだ。

 「なんだろうねシンディ?」
 「なんだろうねマリー?」

キョトンとするマリー先輩と精霊のシンディ。そして俺は円形に椅子を並べてみんなをその周りに立たせた。

 「今から椅子取りゲームを始めます。ここに椅子が9こありますよね。対してみんなは10人います。俺が今から歌を歌いますから、みんなは歌にあわせてぐるぐると回ってくださいね。そしていきなり歌が止みますからそのときすぐに椅子に座ります」

はい、ぐるぐるっと言って俺はサッと椅子に座る。わらわらとみんなも座るんだがゲージ先輩が1人座れなかった。

 「はい、ゲージ先輩
負けー」
 「ん?オイが負けなのか。なんか悔しいぞ!ギャハハ」
 「でみんなは立ってもらい負けた人はその場の椅子に座ります。あとはこの繰り返しで最後の1人が勝者です。わかりましたね?」
 「ああわかった」
 「なんとなくわかったわ」
 「とにかく歌が終わったら座ればいいんだよな」
 「はい。じゃあ始めますよー!」


🎵ちゃらららーらららーちゃらららーちゃらららーちゃらららーらららーちゃらららーちゃらららーまいまいまいまいまいむちゃららーまいまいまいまいむちゃららーらーらーらーちゃらららー(へいっ!)ちゃららららー(へいっ!)ちゃらららーらららー🎵

もちろん歌にあわせて腰をフリフリしたよ。
(へいっ!)のところでは拳を上げて雄叫びも上げて。


 ギャハハハハハハ
 なんじゃそれーー
 あはははははーー
 いやぁぁぁぁーー
 やめてぇぇぇーー
 ゆるしてぇぇーー


大盛り上がりの椅子取りゲームだった。みんな腹を抱えて大爆笑だった。
だけど‥‥俺の歌に止めてくれだとか許してくれだとか言うマリー先輩やシンディ、リズ先輩の意味がわかんなかった。

 「悪魔よ立ち去れ!聖なる光!」

ちょっとちょっとセーラ、止めてくれる?俺悪魔じゃないからね!

 「フッ。アレク君はトールと同じだね。まだまだかわいい弟だね」

シャンク先輩なんで俺の頭を撫でるんだ?

 「「やめーてー死ぬー」」

ガクガクブルブル‥

青い顔で抱き合うシルフィとシンディ。なんで死ぬんだよ?意味わかんねーわホント。


ーーーーーーーーーーー


 「さあ気持ちを入れ替えて明日からも頑張りましょう!」
 「「「ああ(はい)」」」
 「それで明日なんですけど‥‥」

 俺からの提案はリズ先輩とセーラにも鳥籠から出て歩いてもらうことにしたんだ。疲れたら時間をかけてでもいいからと。ひょっとしてリアカーに乗ってることでそれまでの5人から2人分カウントされてないんじゃないかって。ダンジョンのシステムは今もよくわかんないけど、ひょっとしてこれがシステムエラーになってるんじゃないかって。














 「あっ!」
 「あった!」
 「あったよアレク!」
 「アレク君あれ!」
 「やったー!44階層クリアだーー!!」

結局のところ、44階層クリアの理由はわからなかった。いずれにせよ、ようやく6周でこの階層をクリアできたんだ。
目の前にあるのは45階層の扉。ついに来たよ。



――――――――――――――



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