アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
304 / 722
第2章 幼年編

305 44階層 延々と⑦

しおりを挟む


 「おいおい‥‥」
 「またか‥‥」
 「なにが足りない‥‥」
 「どうして‥‥」

気合を入れて臨んだ2周め。そして3周めも扉はなかった。
1周にかかる日数は1日だからわずか3日なんだ。正直これまでの階層と比べて大したことは何もない。
野営でも魔獣はほとんど出てこなかったし。なのにみんなの雰囲気は‥‥うん、かなり悪くなってきた。逆に俺はけっこう冷静に考えられている。
 

 「「「‥‥」」」

4周めも扉はなかった。

 「「「‥‥」」」

そして5周めも。
誰もが口を開かなかった。そしてこの夜の野営。ついに‥‥最初にセーラの気持ちが折れた。

 「もう‥‥イヤーーー!うっ、うっ、うわぁーん‥」

大声を上げて子どもみたいに泣きじゃくるセーラ。

 「うるせー!泣いてもなんにも変わんねぇぞ!」
 「ちょっとオニール!その言い方はないんじゃない?」
 「!すまんセーラ‥‥言いすぎた。すまんマリー‥‥」
 「わ、私こそ泣いたりしてご、ごめんなさい‥‥ううっ」

みんな下を向いている。
そうだ!こんな時こそ、みんなを盛り上げないといけない!

ガタンッ!

立ち上がった俺は野営食堂の真ん中にいってみんなに声をかけた。

 「あーもう先輩たちもセーラも雰囲気がめちゃくちゃ悪いです!こんなことぐらいで凹んでどうするんですか!?」
 「そ、そうだな。アレクお前の言うとおりだ」
 「オメーの言うとおりだ‥」
 「ああ、すまんアレク。不甲斐ない先輩で‥」
 「ごめんなさいなの」
 「先輩たちは学園50数年の中でも現在2番めの記録持ちなんですよ?これからの学園史に残るし、俺やシャンク先輩やセーラが尊敬してやまない偉大な先輩たちなんですよ?!」
 「「そうです!」」
 「フッ。偉大じゃないがな。それでもすまん心配をかけた」
 「ええ‥凹んでた私たちが悪かったわ」
 「不甲斐ない先輩でごめんね」
 「ホントそうです!え~ではそんな不甲斐ない先輩たちと泣き虫セーラが盛り上がる遊びを今からしたいと思います」
 「「「ん?」」」
 「みなさん拍手ー!」
 「「ん?おおっ?」」
 「「拍手な」」
 「「「そうだ拍手な」」」

 パチパチパチパチ
 パチパチパチパチ
 パチパチパチパチ

 「はい、じゃあみんな椅子を持ってこっちに集合ー」
 「「「おお。椅子な」」」
 「ま、まさかアレク‥‥ア、アレをやるんじゃないでしょうね?」
 「もちろんアレをやります!」
 「キャーー!やめてーー!」
 「「ん?どうしたのシルフィ?」」
 「シンディ、マリー早く、早く耳を塞いで!早く!でないと今夜から悪夢を見るわ!悪魔の再来よ!」

そう言って耳を塞ぎガタガタと震えだしたシルフィだ。

 「なんだろうねシンディ?」
 「なんだろうねマリー?」

キョトンとするマリー先輩と精霊のシンディ。そして俺は円形に椅子を並べてみんなをその周りに立たせた。

 「今から椅子取りゲームを始めます。ここに椅子が9こありますよね。対してみんなは10人います。俺が今から歌を歌いますから、みんなは歌にあわせてぐるぐると回ってくださいね。そしていきなり歌が止みますからそのときすぐに椅子に座ります」

はい、ぐるぐるっと言って俺はサッと椅子に座る。わらわらとみんなも座るんだがゲージ先輩が1人座れなかった。

 「はい、ゲージ先輩
負けー」
 「ん?オイが負けなのか。なんか悔しいぞ!ギャハハ」
 「でみんなは立ってもらい負けた人はその場の椅子に座ります。あとはこの繰り返しで最後の1人が勝者です。わかりましたね?」
 「ああわかった」
 「なんとなくわかったわ」
 「とにかく歌が終わったら座ればいいんだよな」
 「はい。じゃあ始めますよー!」


🎵ちゃらららーらららーちゃらららーちゃらららーちゃらららーらららーちゃらららーちゃらららーまいまいまいまいまいむちゃららーまいまいまいまいむちゃららーらーらーらーちゃらららー(へいっ!)ちゃららららー(へいっ!)ちゃらららーらららー🎵

もちろん歌にあわせて腰をフリフリしたよ。
(へいっ!)のところでは拳を上げて雄叫びも上げて。


 ギャハハハハハハ
 なんじゃそれーー
 あはははははーー
 いやぁぁぁぁーー
 やめてぇぇぇーー
 ゆるしてぇぇーー


大盛り上がりの椅子取りゲームだった。みんな腹を抱えて大爆笑だった。
だけど‥‥俺の歌に止めてくれだとか許してくれだとか言うマリー先輩やシンディ、リズ先輩の意味がわかんなかった。

 「悪魔よ立ち去れ!聖なる光!」

ちょっとちょっとセーラ、止めてくれる?俺悪魔じゃないからね!

 「フッ。アレク君はトールと同じだね。まだまだかわいい弟だね」

シャンク先輩なんで俺の頭を撫でるんだ?

 「「やめーてー死ぬー」」

ガクガクブルブル‥

青い顔で抱き合うシルフィとシンディ。なんで死ぬんだよ?意味わかんねーわホント。


ーーーーーーーーーーー


 「さあ気持ちを入れ替えて明日からも頑張りましょう!」
 「「「ああ(はい)」」」
 「それで明日なんですけど‥‥」

 俺からの提案はリズ先輩とセーラにも鳥籠から出て歩いてもらうことにしたんだ。疲れたら時間をかけてでもいいからと。ひょっとしてリアカーに乗ってることでそれまでの5人から2人分カウントされてないんじゃないかって。ダンジョンのシステムは今もよくわかんないけど、ひょっとしてこれがシステムエラーになってるんじゃないかって。














 「あっ!」
 「あった!」
 「あったよアレク!」
 「アレク君あれ!」
 「やったー!44階層クリアだーー!!」

結局のところ、44階層クリアの理由はわからなかった。いずれにせよ、ようやく6周でこの階層をクリアできたんだ。
目の前にあるのは45階層の扉。ついに来たよ。



――――――――――――――



いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

処理中です...