アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

303 44階層 延々と⑤

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 相変わらず魔物たちの襲来は延々と続いたんだ。延々と?じゃないな。ダラダラとかな。
 俺たちからしたら勝てるわけないじゃんって思うのに、この階層の魔物たちはぜんぜん違うんだよね。まるで誰かに命令されて襲ってきてるみたいなんだ。
 同じ命令でも進化型ゴブリンのゴブリンソルジャーの命令とは違うよ。ゴブリンソルジャーの場合はもっと魔物から殺気のようなものを感じたし、全体に統制がとれていた。なのにここの奴らは何か違うんだよね。どっかから定期的に送り込まれる感じ?やっぱりどこかで誰かが操作してるのかなぁ。


 「あと少しよ」
 「大丈夫だなアレク?」
 「はい!」
 「いけるかシャンク?」
 「はい、大丈夫です!」
 「セーラは‥‥寝てろ」
 「チキショー‥」

 ワハハハハ
 ふふふふふ
 あはははは

秋。
魔物の襲来は延々と続いたんだ。でもみんなの心は折れなかったよ。一致団結してたし、ときには笑いさえあった。だってここを越えてあと1つ、冬をクリアさえすれば良いんだから。3点鐘くらいかな。秋の魔物の襲来もピタッと止んだ。

 「どうやら秋もここまでのようね」
 「ちょっぴり寒いです」
 「また耐熱耐火服のお世話になるわね」
 「ああ」
 「ブーリ隊のみんなもすぐに来るだろうし」





 「あと少しだ。残り冬だけだよな」
 「でね、ブーリ隊のみんなはここから初のスキィになるんだからね」
 「おおー、噂のスキィだよな」
 「一応もう1度アレク君から説明して」

俺は現物を見せながらあらためて説明をした。

 「すぐに積雪が多くなるはずです。戦闘靴で歩くのにキツくなってきたらスキーの出番ですからね。先に行くボル隊が立ち止まったらブーリ隊も同じように準備してください」
 「「「わかった」」」
 「スキーはここにある名前どおりのスキーを履いてくださいね」

ブーリ隊のみんなの名前を書いたスキー板とストックを用意したよ。

 「アレク、これ‥‥字なんだよな?なんかの絵じゃないんだよな?」
 「あーまたか‥」

なんだよその疑問は!オニール先輩!
頭を抱えるなよ!タイガー先輩!
しかもそう言われると思ったから大きめにわかりやすく書いたのに!

 「違うの。これはゴブリンの子どもの落書きなの」

 ぎゃはははは
 わははははは
 ヒー腹いてぇ

 「アレク帰ったら字の練習しようね」
 「うっ、うん‥‥」

泣きたくなってきたよ!


 「基本的にはストックで雪を突きながら雪の上を前後にスキー板を動かしながら歩く感じです。1点鐘もしないうちにすぐに身体が覚えるはずですからね。リアカーもこの車輪を外して下にある突起にソリを2枚装着すれば、あとは楽に運べますからね」
 「ソリ?スキィとは違うのか?」
 「うーん、まぁ一緒って思っていいと思います。俺も詳しくは知らないから」

スキーやソリは毎度のように図書館で調べた知識だからとみんなには言ってあるよ。
でもね、シャンク先輩がソリを引っ張る姿は絵になってたよな。サンタさんみたいで。ゲージ先輩はどうだろう。ワニが引っ張るソリ?

 「春夏秋は走ったでしょ。今度の雪山もそんな感じで歩きますから、多分3点鐘以内で終わるはずよ」
 「ふつう雪山っていうもんはこう胸まで雪に浸かるもんだって思ってたからな」
 「どうなるか楽しみだな」
 「「「ああ」」」

雪山を歩くクロスカントリースキー。板は初めての人でも操作しやすいように丈の短いショートスキーを用意してある。前回の雪山の経験から改良を加えて今の戦闘靴がそのままピタッとはまるように作ったんだよ。
リアカーも車輪を外してすぐにソリを脱着できる仕様にしたし。これで雪山の雪中行軍も問題なくすぐにできるはず。

ザクッザクッザクッ‥

積雪が足の甲を越えてきた。

 「そろそろスキィを履こうか」
 「じゃあソリも装着しましょうね」

自分たちもスキィを履いたよ。リアカーも車輪を外してソリ仕様にした。500メル後方でもブーリ隊が準備に入ってるようだ。





あっという間に一面の銀世界になった。積雪もら1メル以上はありそうだ。

 「下り坂は楽しいね」
 「ソリも楽だよ」

クロカンスキー2回めとなるセーラも楽しそうにスキーを操っている。マリー先輩とキム先輩はさすがの運動神経だ。何も言わなくても下り坂ではスラロームをしているよ。シャンク先輩とソリの絵図はやっぱり様になる!
後方のブーリ隊からはときどき歓声や楽しい悲鳴も聞こえてくる。


 「きたぞアレク」
 「はい!」

 シュッ!
 キュィィーンッ
 シュッ!
 ガァァァーーッ

襲ってくるの魔物は一角うさぎと雪豹だった。スキーを履いて雪上にいるから問題なく矢で倒していったよ。でも……。

 「あーやっぱりこいつもです」
 「仕方ない。諦めよう」
 「はい‥残念!」

ついに現地調達の食材かって思ったけど、解体する一角うさぎも雪豹も血の色が初めて見るような紫色だったんだ。肉も変な匂いがして汚染されてそうだったし。これは食べたらダメだって俺の身体が言ってた。


でも襲ってくる魔獣とは楽に闘えたよ。スキーを履いて雪の上に立ってるから目線も上から対処できたしね。

3点鐘どころか1点鐘半くらいかな。目に見えて積雪量が減った。

 「アレク雪が溶けてきたよ!」
 「ああ!そろそろかな?」
 「終わりだね」
 「僕たち頑張ったよね!」
 「ああ」
 「ええ」
 「階層主の扉前で3、4日休憩しましょうよ!」
 「そうね、途中みんなの雰囲気も悪くなったしね」
 「そうです!アレクなんか目が血走ってました!」
 「なんだよセーラだってムスーって顔してたじゃんか!」
 「フッ。2人ともまだまだ子どもだよね」
 「シャンクお前もだ」

 ワハハハハ
 あはははは
 フフフフフ
 わはははは

そんな和んだ雰囲気だったんだよ。そのときは。でも‥‥。


 「えっ?!」
 「マジか?!」
 「「なぜ?」」
 「「どうして?」」
 「「「‥‥」」」」

そしてみんなは無言になったんだ。



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