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第2章 幼年編
289 41階層にむけて(後)
しおりを挟むキム先輩が話しだした。
「リズとセーラへお願いというか提案なんだが‥」
「「ん?(はい?)」」
「アレクは土魔法で魔獣を1箇所に集めていたよな」
「はい」
砂時計の出口みたいに土魔法で土塀(槍衾)を作り、進行方向1箇所に魔獣を集めるやつだよね。
「29階層で四方から魔獣が群がったとき。アレクは前方から押し寄せる主力の魔獣にかかりっきりになって動けなかった。左はマリーが1人で対処した。そして右は攻撃力に乏しい俺と機動力にシャンクだ。
おそらく長くこの状態が続いたら右から戦線が崩壊しただろう。
だがここでセーラが採ったのは、戦場に聖壁を発現してくれることだった。聖壁は魔獣の進路を俺とシャンクの2箇所だけ出るようにコントロールしてくれた。そうだよな」
「はいキム先輩」
「魔力が長く保てるように聖壁も低くしたんだよな」
「はい。脚力のある魔獣なら飛び越えることができたと思いますよ」
「フッ。だがあれは良かった。目の前の1箇所からしか魔獣が出てこないないからシャンクも俺も十分対応できたからな」
「この先も大量の魔獣が出てきたら、同じやり方ができないか?」
「どうリズ、セーラさん?」
「「ん(できます
)」」
キム先輩が話したのはこれだけの情報(アイデア)。ここからビリー先輩の戦略案が次々と練られていく。
「それはいいアイデアだよね。先行のボル隊は前方の魔獣が出てくる1箇所と右手から出てくる魔獣の1箇所、合計2箇所で対応するからアレク君、シャンク君の3人が闘ってもいいし2人が闘って1人が休憩か遊撃もできるね。
そして左手はマリーに任せるんだ。
なるほど。そしたらブーリ隊も同じことがタイガー、オニール、ゲージが担ってできるね。ブーリ隊は前を気にしなくていいんだから。そしてマリーの位置には僕が入るんだね」
ビリー先輩のアイデアはさらに膨らむ。パーティーで撤退することになっても同じようなやり方が使えるね。いいね。キムが考えてたのはそんなことだよね」
「ああビリーの言うとおりだ。これがうまく機能したらボル隊もブーリ隊もセーラとリズを護衛する役をマリーとビリーに任せられる。そうすれば残り3人がうまく機能しつつ戦闘をまわせられる」
「とってもいいわね。ねえタイガー」
「ああ。魔獣の動きをコントロールできるとは想像してなかったがな」
「じゃあ決まりだね」
「「「ああ(はい/ん)」」」
ーーーーーーーーーーーー
休憩室で新しく作ったのはレインコート、雨天用脚絆、アイゼン。対41、42階層用の新しい装備品だ。リアカーのシート、改造もできたし。
エナジードリンクと携帯食、ガタロの魔石入の水筒もできた。
余ったヘルハウンドの毛皮もすべて使い切ったよ。シャンク先輩とタイガー先輩が使うタンク用の盾にヘルハウンドの毛皮を貼って耐火盾にしたんだ。
「3人ともどうだ?」
タイガー先輩が尋ねた。
「今やりたいと思うことはちゃんとできた?」
マリー先輩も。
「どうアレク君?」
ビリー先輩も。
「どうだシャンク?」
キム先輩も。
「どうよセーラ?」
オニール先輩も。
「お前らなら大丈夫だよな?ギャハハ」
ゲージ先輩も。
来年以降も学園ダンジョンに潜るであろう俺たち後輩を思って。自分たちのことよりも俺たち後輩を優先してくれている先輩たちの気持ちがすごく伝わる。
「「「はい、もう大丈夫です!」」」
やれることはやった。ここからは出し惜しみなしでいこう。
▼
「じゃあ行こうか」
「「「はい」」」
未知の階層探索が始まった。
――――――――――――――
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