277 / 722
第2章 幼年編
278 40階層階層主
しおりを挟むサイクロプスはこの後からも合計で4体出てきた。ガタロを何体も引き連れて。
ブウウゥゥゥンッッッ!
サイクロプスの三叉槍が高密度な青白い炎を灯す。
させじと俺も指先から雷魔法を発現する。
「ライトニング(雷鳴)!」
ビリビリビリビリビリーーーッ!
ブウウゥゥゥンッッッ!
サイクロプスの三叉槍から発現される雷魔法と、俺の指先からの雷魔法。せめぎ合う魔力の強さはほぼ互角だった。
「くそーまたか!」
驚いている。確かにだんだん魔物も強くなっている。
でも正直サイクロプスも出てくるのが1体でよかったと思っている。こんな奴らが同時に現れて雷魔法を発現したら対処できないよ。でも俺には仲間がいる。
シュッ!
こう着状態に陥りそうなその度に。マリー先輩の矢が放たれた。
サイクロプスの1つ目に正確に突き刺さるマリー先輩の矢。
ブシュッ!
ギャーーーーー!
マリー先輩の矢が目に刺さってからあとは呆気なく倒すことができた。追随するガタロも呆気なく倒せた。
助けてくれるのはマリー先輩だけじゃない。
ザクッ!
ギャーーーーー!
音もなく忍び寄ったキム先輩がサイクロプスの目にクナイを突き刺す。そんなサイクロプスさえいなくなればあとのガタロなんかは問題ない。
「スパーク!」
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー
感電したガタロは白い腹を出してぷかぷか浮いていた。
「アレク」
「アレク君」
「アレク」
「アレク君」
「もう誰か‥‥」
「「「ぜったいいやだ!」」」
ガタロの解体は誰も手伝ってくれなかった……。
▼
マリー先輩やキム先輩が言うには、サイクロプスが出てくる頻度はこれまでと変わらないと言う。だけど雷魔法を発現するサイクロプスは去年はいなかったと言う。
サイクロプスが雷魔法を発現する理由。それはもちろん俺が雷魔法を発現できるからなんだろうけど、これからますます探索者の能力に応じた強い魔物がますます出てくるんだろうな。
やっぱりこのダンジョンはどこかに隠しカメラがあるんだよ。そんでもってどこかのコンピュータルームで管理してるんだよきっと?うん、ぜったい……。
「それでも去年に比べたらぜんぜん楽よ」
「ああまだ食糧で困ることもないしな」
「「「へぇー」」」
俺やセーラ、シャンク先輩は去年がわかんないからこんなもんなんだって思ってるけどね。
(それでもこの後も毎年10傑になった俺とセーラは次の年の学園ダンジョン探索から身にしみて痛感することになるんだ。この年の先輩たちと俺たちの信頼関係はすごく濃かったし、誰もが常に慢心してなかったんだって)
「着いたわね」
お昼には早くも40階層主部屋の入口にたどり着いた。
「いでよ野営食堂!」
ズズズズズーーーッ!
ブーリ隊を待って簡易的な野営陣地を設営する。プレハブ小屋みたいな本当に簡易的な陣地だ。不思議なもので、階層主の扉付近はほとんど魔物に襲われないんだよな。
ブーリ隊の先輩たちと合流した。
「アレクこの階の階層主は惑わしてくるからな」
「はいタイガー先輩、油断しません」
「ヨシ。ここはお前の過去のトラウマが姿を変えてやってくる。だが落ち着いて対処すればいいんだからな。お前ならできるぞ」
「はい」
「シャンクもセーラも落ち着いていけば大丈夫だからな」
「「はい」」
「まあマリーとキムは瞬殺だろうがな」
「「フッ(ふふ)」」
「なんだかんだいってもこの時点で歴代3位は確定なんだからな。お前ら気楽に行ってこいよ」
「オニール先輩あざーす」
「去年オニールでも勝てたんだからみんなはぜんぜん心配要らないの。何せオニールでさえ勝てたんだから」
「何で俺だけ『でも』なんだよ!」
「オニールだからなの」
ワハハハハ
アハハハハ
ギャハハハ
フフフフフ
オニール先輩の場を和ませる明るい雰囲気と、楽天的な物言いはともすれば緊張しがちな俺たちをいつもリラックスさせてくれている。
「そんでもって早く休憩室でおにぎり食わしてくれよ。海でお前一生懸命貝や魚を拾ってたからなんか新作料理でもあるんだろ?」
「あははは。期待しててください」
「めっちゃ期待してるからな。なぁゲージ」
「ああオイも期待してるぞ」
「私もなの」
「「俺(ぼく)も期待してるよ」」
「麺料理ですからね」
「「「めん??」」」
「はい!」
みんな麺料理自体未食だから楽しみだな。
「じゃあ行ってこい」
「「「行ってきます!」」」
「「「いってらっしゃい!」」」
40階層主の扉はこれまでで1番豪華な扉だった。細かな透かし彫りのある扉は青くて高級感にも溢れていた。
「さあ頑張っていくわよ」
「俺たちなら勝てるからな」
「「「はいっ!」」」
円陣を組む俺たちボル隊。マリー先輩、キム先輩、シャンク先輩、セーラ、俺のみんなが互いを見つめ合い、頷き合う。
「じゃあみんないい?いくよ!」
「「「はい!」」」
ギギギギギーーーーーッ
40階層主の部屋はバレーボールコートが2面くらいは余裕で採れる体育館みたいな部屋だった。
そんな部屋の最奥に、階層主が座っていた。
「おばあさん?」
「えっ?子どもだよ?」
「いやおじさんだよ?」
「お前ら気を引き締めていけ。もう幻術にかかっているぞ」
マジか?
俺にはどう見ても3歳くらいの子どもに見えるけど?
しかも‥‥‥あれは弟のシリウスだった。
「自分の相手はもうわかるな。この階層主戦は自分の相手に勝てばいいんだからな」
「「「はい!」」」
「いくぞ!」
「「「はい!」」」
みんながそれぞれの相手に向かっていった。
俺は弟のシリウスに向かって。
――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる