アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

278 40階層階層主

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サイクロプスはこの後からも合計で4体出てきた。ガタロを何体も引き連れて。


ブウウゥゥゥンッッッ!

サイクロプスの三叉槍が高密度な青白い炎を灯す。
させじと俺も指先から雷魔法を発現する。

「ライトニング(雷鳴)!」

ビリビリビリビリビリーーーッ!

ブウウゥゥゥンッッッ!

サイクロプスの三叉槍から発現される雷魔法と、俺の指先からの雷魔法。せめぎ合う魔力の強さはほぼ互角だった。

 「くそーまたか!」

驚いている。確かにだんだん魔物も強くなっている。
でも正直サイクロプスも出てくるのが1体でよかったと思っている。こんな奴らが同時に現れて雷魔法を発現したら対処できないよ。でも俺には仲間がいる。

シュッ!

こう着状態に陥りそうなその度に。マリー先輩の矢が放たれた。
サイクロプスの1つ目に正確に突き刺さるマリー先輩の矢。

ブシュッ!

ギャーーーーー!

マリー先輩の矢が目に刺さってからあとは呆気なく倒すことができた。追随するガタロも呆気なく倒せた。
助けてくれるのはマリー先輩だけじゃない。

ザクッ!

ギャーーーーー!

音もなく忍び寄ったキム先輩がサイクロプスの目にクナイを突き刺す。そんなサイクロプスさえいなくなればあとのガタロなんかは問題ない。


「スパーク!」

グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ

ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー

感電したガタロは白い腹を出してぷかぷか浮いていた。

 「アレク」
 「アレク君」
 「アレク」
 「アレク君」
 
 「もう誰か‥‥」
 「「「ぜったいいやだ!」」」


ガタロの解体は誰も手伝ってくれなかった……。








マリー先輩やキム先輩が言うには、サイクロプスが出てくる頻度はこれまでと変わらないと言う。だけど雷魔法を発現するサイクロプスは去年はいなかったと言う。

サイクロプスが雷魔法を発現する理由。それはもちろん俺が雷魔法を発現できるからなんだろうけど、これからますます探索者の能力に応じた強い魔物がますます出てくるんだろうな。
やっぱりこのダンジョンはどこかに隠しカメラがあるんだよ。そんでもってどこかのコンピュータルームで管理してるんだよきっと?うん、ぜったい……。



 「それでも去年に比べたらぜんぜん楽よ」
 「ああまだ食糧で困ることもないしな」
 「「「へぇー」」」

俺やセーラ、シャンク先輩は去年がわかんないからこんなもんなんだって思ってるけどね。
(それでもこの後も毎年10傑になった俺とセーラは次の年の学園ダンジョン探索から身にしみて痛感することになるんだ。この年の先輩たちと俺たちの信頼関係はすごく濃かったし、誰もが常に慢心してなかったんだって)





 「着いたわね」

お昼には早くも40階層主部屋の入口にたどり着いた。


 「いでよ野営食堂!」

ズズズズズーーーッ!

ブーリ隊を待って簡易的な野営陣地を設営する。プレハブ小屋みたいな本当に簡易的な陣地だ。不思議なもので、階層主の扉付近はほとんど魔物に襲われないんだよな。



ブーリ隊の先輩たちと合流した。

 「アレクこの階の階層主は惑わしてくるからな」
 「はいタイガー先輩、油断しません」
 「ヨシ。ここはお前の過去のトラウマが姿を変えてやってくる。だが落ち着いて対処すればいいんだからな。お前ならできるぞ」
 「はい」
 「シャンクもセーラも落ち着いていけば大丈夫だからな」
 「「はい」」
 「まあマリーとキムは瞬殺だろうがな」
 「「フッ(ふふ)」」


 「なんだかんだいってもこの時点で歴代3位は確定なんだからな。お前ら気楽に行ってこいよ」
 「オニール先輩あざーす」
 「去年オニールでも勝てたんだからみんなはぜんぜん心配要らないの。何せオニールでさえ勝てたんだから」
 「何で俺だけ『でも』なんだよ!」
 「オニールだからなの」

ワハハハハ
アハハハハ
ギャハハハ
フフフフフ

オニール先輩の場を和ませる明るい雰囲気と、楽天的な物言いはともすれば緊張しがちな俺たちをいつもリラックスさせてくれている。

 「そんでもって早く休憩室でおにぎり食わしてくれよ。海でお前一生懸命貝や魚を拾ってたからなんか新作料理でもあるんだろ?」
 「あははは。期待しててください」
 「めっちゃ期待してるからな。なぁゲージ」
 「ああオイも期待してるぞ」
 「私もなの」
 「「俺(ぼく)も期待してるよ」」
 「麺料理ですからね」
 「「「めん??」」」
 「はい!」

みんな麺料理自体未食だから楽しみだな。



 「じゃあ行ってこい」
 「「「行ってきます!」」」
 「「「いってらっしゃい!」」」



40階層主の扉はこれまでで1番豪華な扉だった。細かな透かし彫りのある扉は青くて高級感にも溢れていた。


 「さあ頑張っていくわよ」
 「俺たちなら勝てるからな」
 「「「はいっ!」」」

円陣を組む俺たちボル隊。マリー先輩、キム先輩、シャンク先輩、セーラ、俺のみんなが互いを見つめ合い、頷き合う。


 「じゃあみんないい?いくよ!」
 「「「はい!」」」



ギギギギギーーーーーッ



40階層主の部屋はバレーボールコートが2面くらいは余裕で採れる体育館みたいな部屋だった。

そんな部屋の最奥に、階層主が座っていた。

 「おばあさん?」
 「えっ?子どもだよ?」
 「いやおじさんだよ?」
 「お前ら気を引き締めていけ。もう幻術にかかっているぞ」

 マジか?
 俺にはどう見ても3歳くらいの子どもに見えるけど?
しかも‥‥‥あれは弟のシリウスだった。

 「自分の相手はもうわかるな。この階層主戦は自分の相手に勝てばいいんだからな」
 「「「はい!」」」
 「いくぞ!」
 「「「はい!」」」


みんながそれぞれの相手に向かっていった。
俺は弟のシリウスに向かって。



――――――――――――――


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