アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

277 サイクロプス

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海では魚や貝のほか、カニ、ロブスター、キーサッキーなども獲れた。

 「アレク行くぞー」
 「はーい」

いかんいかん、ついつい夢中になってしまったよ。潮干狩りや魚獲りってほんとに楽しいよなぁ。


ザブッ ザブッ ザブッ‥

 ん?なんだ?強いな。海中からのこの気配‥。

 「アレク!」
 「はい!」

ザブザブッ ザブザブッ
ザブザブッ ザブザブッ

海の中からゆっくりと現れたのは人型魔物だった。それは首から頭と上半身が少しずつ、
やがては全身が露わになるにつれてより一層強者のオーラを纏い始めた。同じ水生魔獣のガタロの比じゃない、強者そのもののオーラだ。

しかも‥‥「デカっ!」

そいつは身長4m近くある1つ目の巨人・サイクロプスだった。


◯サイクロプス
二足歩行。身長3.5~4.0m。1つ目の魔物。水生魔獣ガタロの上位種とも考えられている。
手には三叉槍(さんさそう)を有する。武具による直接的な攻撃に加えて水魔法をも発現できる。またガタロほか近隣の海の魔物を統べることもできるとされる。
弱点は1つ目の視力を奪うことに尽きる。
魔石からは多量の真水と海水を任意に発現できる。食用不可。


 「アレク、サイクロプスは三叉槍の先から水魔法を発現するからね、気をつけるんだよ」
 「ああわかったシルフィ」
 「キム先輩はタイミングをみて攻撃してください。マリー先輩は弓をお願いします!セーラはシャンク先輩と待機を」
 「「「了解!」」」

ザブザブッ ザブザブッ

海中から砂浜へと全身を露わにしたサイクロプス。

ザンッ ザンッ ザンッ

三叉槍の石突を威圧感を踏み鳴らすサイクロプス。まわりからはガタロも追随してきた。そしてサイクロプスが腰を落として構えに入った。

 「アレク水魔法が来るよ!」
 「わかったシルフィ!」
 
ビリビリビリーーーッ

サイクロプスが構える三叉槍の先に青白い高圧電流が溜まるのが見えた。

 「おいおい、これって‥‥!」
 「アレク、これ水じゃないわ!向こうも雷魔法を発現できるわ!」
 「ああシルフィ、わかってる!」

ブウウゥゥゥンッッッ!

三叉槍に集まる青白い魔力は水じゃない。俺の雷と一緒だ。
サイクロプスがLevel3以上の水魔法を発現できることは俺も知識として知っていたけど、今この三叉槍に集まる魔力はぜったい水じゃない。こいつから発現されるのは俺と同じ雷魔法だ。
強敵だったバブルスライムから学んだことは臨機応変に闘うことといついかなるときも油断しないことなんだ。
咄嗟に雷魔法を三叉槍に向けて発現する俺。

 「ライトニング(雷鳴)!」

ビリビリビリビリビリーーーッ!

三叉槍から放たれる雷魔法に向けて俺のライトニングが放たれた。

ビリビリビリビリビリーーーッ!
ブウウゥゥゥンッッッ!

三叉槍の先で雷の魔力同士がせめぎ合う。ほぼ互角の魔力。
(つ、強いな‥)

シュッ!

そのときマリー先輩の矢が放たれた。
シンディの補正の下、サイクロプスの1つ目に正確に突き刺さるマリー先輩の矢。

ブシュッ!

ギャーーーーー!

目を押さえて悶絶するサイクロプス。途端に魔力が弱くなったぞ。

 「いっけーアレク!」
 「おお!」

さらに強く雷魔法を発現する俺。

ビリビリビリーーッ!

三叉槍の先でほぼ互角だった魔力が一気に逆転した。
三叉槍を伝ってサイクロプスの身体を突き抜ける俺のライトニング(雷鳴)。

ギャャャァァァーー!

棒立ちのまま耳あたりから煙を出して白目を剥くサイクロプス。

ズドォォォォーーンッ!

サイクロプスの巨体が倒れ伏した。

グワッグワッグワッ‥
グワッグワッグワッ‥

 「アレク、ガタロもいっぱい来たわよ!」
 「わかってるよシルフィ」
 「気持ち悪い奴らもやっちゃえ!」
 「おおっ!」

サイクロプスが呼んだであろう多数のガタロが砂浜に上ろうとしているが、コイツらは電流を流すくらいで充分だ。

「スパーク!」

グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ

ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー

感電したガタロが白い腹を出してぷかぷか浮いた。

 「うわぁーキショ‥」

ゴブリンとカエルが混じったみたいでやっぱ気持ち悪いな。なんかくちゃいし……。

 「アレク、ガタロは大きなカエルみたいでキショいです!」
 「でもガタロの魔石は水筒に入れとけば水を作ってくれるんだよ」
 「そんなの‥‥アレクがやればいいんです!」
 「みんなガタロの解体‥‥」

 「「「キモっ!」」」

みんな少しずつ俺から離れていった。

 「誰か解体‥‥」

 「「「嫌だ!」」」

俺だってキモいんだよ!
結局サイクロプスとガタロの解体は俺1人でやった。身体じゅうが緑色の血でべたべたしたけど……。

 「キモっ!」
 「ホント、ないわー!」

いやいやシルフィさん、あなた俺に憑いてるんじゃないの?
しかもシンディと2人でマリー先輩の肩から遠巻きに俺を見てるだけだし!



アレクが1人でサイクロプスとガタロの解体をしている最中。
マリーとキムが言葉を交わしていた。

 「サイクロプスが雷魔法を使うなんてね‥」
 「ああ初めてだな‥」


500メル後方でも。
サイクロプスとアレクの攻防を見ていたブーリ隊でも。

 「ビリー今年は‥」
 「そうだねリズ。今年の僕たちはダンジョンから強者認定されてるからね‥」

「ダンジョンの意志」を垣間見た6年生には言い知れぬ不安がよぎるのだった。




――――――――――――――


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