274 / 722
第2章 幼年編
275 39階層 再始動
しおりを挟む「アレク君よく話をしてくれたわね‥」
「アレク‥」
「マリー先輩ご、ごめんなさい。キム先輩ごめんなさい。シャンク先輩ごめんなさい。セーラもごめん‥‥」
「「う、ううっ‥‥」」
泣き続ける俺とセーラの2人の肩をマリー先輩とキム先輩が抱き寄せて背中をさすってくれた。
「「う、ううっ、うわぁーん‥‥」」
号泣する俺とセーラにシャンク先輩も加わった。
「アレク君、セーラさん、うわぁーん」
「「「うわーん‥‥」」」
「あらあら泣き虫さんが3人もいるわ」
「フッ、本当だな」
いつしか5人が抱きあうような形になっていた。みんなの温かさに安心できる。ああ、俺戻ってこれたんだな。
「「「‥‥」」」
「さあ、明日からはまた探索が続くわ。今日のことはこれで終わり。切り替えて明日から頑張るわよ!」
「「「はい!」」」
▼
結局、この夜は1体の魔獣もおそってくることはなかった。もちろん夜警の必要もなかった。
なんとなく寝れなかった俺は、夜風にあたりたくて野営食堂の外に出た。
真っ黒な闇が広がる野営食堂のまわりは探索できる範囲に魔物の気配は一切なかった。
「アレク‥」
寝れないのか、セーラも外に出てきた。
「セーラ‥‥いろいろありがとうな。感謝してるよ」
「はい。いろいろ感謝されました」
ははは
フフフ
「アレクのお母さんと私、名前が一緒だったんだね」
「うん」
「だからアレクは子どもなんだ」
「へっ?」
「これからは私のことを母上って呼んでもいいよ」
「呼ばねーし。ぜったい呼ばねーし」
フフフフフ
ははははは
「アレクはこの先どうするの?」
「この先?うーん、ヴィヨルド学園を卒業したら、最後の3年は王都学園かな」
「そう‥‥」
王国の学制は663制だ。つまり今のヴィヨルド学園の6年間を修了すると15歳となり、成人となる。一般的にはこれで学業は修了となる。教会学校の最初の6年間でさえ満足に通うことができない庶民も多い中、他領の学園に通えている俺は幸せ者だ。
一方、最高学府として最後の3年間は王都学園にある「上級学校」への道がある。
中原の各国に1校ずつしかない、文字通りの最高学府は誰もが入れることのできない、狭き門の難関大学みたいなものだ。
「セーラは?」
「私はヴィヨルド学園の6年間が終わったらたぶん法国に帰国すると思います」
「そうなんだ‥‥」
「俺たちまだ1年生だもんな。5年後なんてぜんぜん想像できないや」
「本当ね」
「あのさ、先のことはわかんないけどさ、もしだよ、もしセーラが困ったら俺ぜったい助けに行くからな」
「えー弱虫のアレクが私を助けるなんて出来るんですか?」
「それは言うなって」
ハハハハ
フフフフ
「でも何かあったら少しは期待するね」
「おー大船に乗ったつもりでいろよ」
「泥舟ね‥‥」
「なんか酷くない?セーラ」
ワハハハ
フフフフ
「みんな元気かな?」
「ああ‥‥」
学園1年1組10傑の仲間の顔がすぐに浮かんだ。(ついでに同室のハイルも)
「みんなも絶対頑張ってるよね」
「ああ。6年の先輩たちに負けないくらい俺たちも繋がってるからな」
そうだ、あいつらの期待を裏切らないように俺もちゃんとしなきゃ。
「私たちも負けないように頑張ろうね」
「そうだな」
「じゃあそろそろ寝ようか」
「ええ。おやすみアレク」
「おやすみセーラ」
▼
「さぁ今日から頑張っていくわよ」
「「「はい」」」
一晩寝たらみんなの体調がさらに良くなっていた。もう大丈夫、平常運転だ。
「アレクしっかりやるのよ!」
「はいシルフィさん」
いつのまにかシルフィと俺の立場が変わっていた。まるで過保護の保護者とその子どもだよ、トホホ……。
39階層に続く回廊が見えてきた。
――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる