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第2章 幼年編
275 39階層 再始動
しおりを挟む「アレク君よく話をしてくれたわね‥」
「アレク‥」
「マリー先輩ご、ごめんなさい。キム先輩ごめんなさい。シャンク先輩ごめんなさい。セーラもごめん‥‥」
「「う、ううっ‥‥」」
泣き続ける俺とセーラの2人の肩をマリー先輩とキム先輩が抱き寄せて背中をさすってくれた。
「「う、ううっ、うわぁーん‥‥」」
号泣する俺とセーラにシャンク先輩も加わった。
「アレク君、セーラさん、うわぁーん」
「「「うわーん‥‥」」」
「あらあら泣き虫さんが3人もいるわ」
「フッ、本当だな」
いつしか5人が抱きあうような形になっていた。みんなの温かさに安心できる。ああ、俺戻ってこれたんだな。
「「「‥‥」」」
「さあ、明日からはまた探索が続くわ。今日のことはこれで終わり。切り替えて明日から頑張るわよ!」
「「「はい!」」」
▼
結局、この夜は1体の魔獣もおそってくることはなかった。もちろん夜警の必要もなかった。
なんとなく寝れなかった俺は、夜風にあたりたくて野営食堂の外に出た。
真っ黒な闇が広がる野営食堂のまわりは探索できる範囲に魔物の気配は一切なかった。
「アレク‥」
寝れないのか、セーラも外に出てきた。
「セーラ‥‥いろいろありがとうな。感謝してるよ」
「はい。いろいろ感謝されました」
ははは
フフフ
「アレクのお母さんと私、名前が一緒だったんだね」
「うん」
「だからアレクは子どもなんだ」
「へっ?」
「これからは私のことを母上って呼んでもいいよ」
「呼ばねーし。ぜったい呼ばねーし」
フフフフフ
ははははは
「アレクはこの先どうするの?」
「この先?うーん、ヴィヨルド学園を卒業したら、最後の3年は王都学園かな」
「そう‥‥」
王国の学制は663制だ。つまり今のヴィヨルド学園の6年間を修了すると15歳となり、成人となる。一般的にはこれで学業は修了となる。教会学校の最初の6年間でさえ満足に通うことができない庶民も多い中、他領の学園に通えている俺は幸せ者だ。
一方、最高学府として最後の3年間は王都学園にある「上級学校」への道がある。
中原の各国に1校ずつしかない、文字通りの最高学府は誰もが入れることのできない、狭き門の難関大学みたいなものだ。
「セーラは?」
「私はヴィヨルド学園の6年間が終わったらたぶん法国に帰国すると思います」
「そうなんだ‥‥」
「俺たちまだ1年生だもんな。5年後なんてぜんぜん想像できないや」
「本当ね」
「あのさ、先のことはわかんないけどさ、もしだよ、もしセーラが困ったら俺ぜったい助けに行くからな」
「えー弱虫のアレクが私を助けるなんて出来るんですか?」
「それは言うなって」
ハハハハ
フフフフ
「でも何かあったら少しは期待するね」
「おー大船に乗ったつもりでいろよ」
「泥舟ね‥‥」
「なんか酷くない?セーラ」
ワハハハ
フフフフ
「みんな元気かな?」
「ああ‥‥」
学園1年1組10傑の仲間の顔がすぐに浮かんだ。(ついでに同室のハイルも)
「みんなも絶対頑張ってるよね」
「ああ。6年の先輩たちに負けないくらい俺たちも繋がってるからな」
そうだ、あいつらの期待を裏切らないように俺もちゃんとしなきゃ。
「私たちも負けないように頑張ろうね」
「そうだな」
「じゃあそろそろ寝ようか」
「ええ。おやすみアレク」
「おやすみセーラ」
▼
「さぁ今日から頑張っていくわよ」
「「「はい」」」
一晩寝たらみんなの体調がさらに良くなっていた。もう大丈夫、平常運転だ。
「アレクしっかりやるのよ!」
「はいシルフィさん」
いつのまにかシルフィと俺の立場が変わっていた。まるで過保護の保護者とその子どもだよ、トホホ……。
39階層に続く回廊が見えてきた。
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