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第2章 幼年編
263 蟹魔物
しおりを挟む「じゃあまた同じ隊列でいくわよ」
「ああ、わかった」
「「「行ってきます!」」」
「「「いってらっしゃい!」」」
お昼ご飯にはおにぎりをみんなに2個ずつ渡してあるよ。塩むすびだけどね。
▼
36階層に向かう回廊はカラッととした暑さだった。耐えられないほどの暑さではない。
「36階層は真夏だからな。暑いが、気持ちいいぞ」
「キム先輩やっぱり海なんですか?」
「ああ、俺の故郷海洋諸国にも似た海だ」
へぇー。でもダンジョンってつくづく不思議だよな。なんで地下に海があるんだろう?VRなのかな?
カサカサ カサカサ カサカサ カサカサ‥
「来たぞ」
蟹魔物がやってきた。横歩き、1.5mくらいはある巨大な蟹だ。ワタリガニの巨大なやつが2匹。
武器で倒すなら目と目の間を刺す。あるいはひっくり返して蟹の口の中に刀を突き立てる。
「甲羅は硬いから剣が刃こぼれするぞ」
一通りキム先輩からレクチャーをしてもらう。
「アレク火魔法を使ってみろ」
「はいファイアボール!」
ゴゴオオォォーーー!
ブクブクブクブクブクブクブクブクブク‥
咄嗟に自身の前に泡を吹いて防御する蟹魔物。
火の玉は泡の前で無効化された。消防車かよ!
「蟹魔獣は魔法耐性が強いんだ。火、水、風、土はあまり効かない。だから一般的にはひっくり返して刀で刺すのが正解だ」
そう言ってキム先輩は土魔法で蟹魔物をひっくり返すように言った。
「槍衾!」
ズズズッッッガガガッッッ
ゴロンッ
そのまま土魔法で貫いてやろうと思ったけどダメ。本当に硬い甲羅だ。ひっくり返すので精一杯。
トンッ
キム先輩はひっくり返った蟹魔物の上に乗り、口にクナイを刺し入れた。
ザクッ
グギギギギーーッッ
即死の蟹魔物。
「だからこいつが同時に複数体現れると、けっこうハードになる」
あーそりゃそうだな。蟹魔物の正面に立とうにも横歩きの蟹だもんな。それでも1、2体ならなんとかなるけど、囲まれたら‥‥けっこうハードな闘いになるよな。
「キム先輩、雷魔法はどうですかね?」
「どうだろうな」
「やってみます」
「サンダーヴァレット!」
雷を銃弾に見立てて圧縮させた魔法だ。
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
グギギギギーーッッ
グギギギギーーッッ
蟹魔物2体の急所を狙って発射した。瞬殺。
「あれれ?倒しちゃいました」
「フッ、1発だな」
「アレクすごーい」
「すごいよアレク君」
「フフフ。雷魔法はやっぱりすごいわね」
うん、やっぱり雷魔法は最強だよ!
そんなことより‥‥。やったー。ワタリガニゲットだぜ!
「持ってくんでしょ?」
「はい!蟹は美味いですから」
蟹魔獣をゲット。ワタリガニ、これはすべての蟹類の中でも上位の美味さなんだよね。しかも1.5mとでかいから爪肉だけでも充分な量だ。
これは今夜は蟹ご飯だよな。記念すべき2体は褌を外して、丸々キープだな。
「サンダーヴァレット!」
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
グギギギギーーッッ
「サンダーヴァレット!」
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
グギギギギーーッッ
「サンダーヴァレット!」
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
グギギギギーーッッ
結局道中20体ほどの蟹魔物を狩ったよ。美味しい蟹はもっともっとほしいけど、出てこないしなぁ。
「お昼ご飯はこのまま立って食べましょう」
塩むすび。
シルフィとシンディ用にはめちゃくちゃ小さなおにぎりだよ。
「「うまーい」」
シルフィとシンディが自分の顔くらいあるおにぎりに頭を突っ込んで喜んでいた。
「塩むすび?これもシンプルだけど美味しいわ」
「ああ、うまいな」
「僕、このおむすび?大好きだよ!」
「とってもとっても美味しいです!」
おにぎりはみんなからも大好評だったよ。
具に塩鮭があればもっといいのになぁ。
【 ブーリ隊side 】
「あっ、アレクがまた雷魔法撃ってるぞ」
「めちゃくちゃ楽できていいんだけどな、あれだけ簡単にやられてると蟹魔物といえど同情するよな」
「まあいいじゃねぇか。去年なんかこの回廊だけで1日かかったんだからな」
「1日が3点鐘か。改めてすごいよなギャハハ」
「私たち何もしてないの」
「「「そうだよねー」」」
そうこうするうちにボル隊が止まっているのが見えた。食事をするようだ。
「ボル隊が止まったな。よし、俺たちもメシを食うか」
「おにぎりってやつだよな?」
「ああ」
白い塩むすびが2個用意されていた。
「真っ白だな」
くんかくんか‥
リズも食べる前に塩むすびの匂いを嗅ぐ。
ごくん。
「これ‥‥絶対美味しいの」
「昨日のご飯も美味しかったけど、おにぎりは手で食べられるからいいね」
水の生活魔法を発現できるビリーがみんなの手を洗う。
「「「いただきまーす」」」
ぱくぱく
パクパク
ぱくぱく
「うまい!」
「美味しいの」
「「うめー!」」
「「「おいしーい!」」」
「でも‥‥足りねぇ」
後方ブーリ隊からみんなの絶叫が聞こえたよ。
「ふふふ。ブーリ隊もおにぎり絶賛中ね」
途中襲ってくる魔獣はすべて雷魔法で倒していく。ゴッキーみたいなフナムシの大きなやつやヘルハウンド、アラクネなど。こいつらは‥‥食えないよな。
アラクネの糸も充分あるし。もっと蟹魔物が来ないかなあ。
と。目の前が明るくなってきた。
回廊の終わりだ。
「雷魔法さまさまね。去年はこの回廊だけで丸1日かかったのよ」
「へぇーそうなんですねー」
うん、ぜんぜん実感はないんだよな。ただ、雷魔法のおかげだなぁって思うけど。
▼
トンネル(回廊)を抜けるとそこは海辺のリゾートだった。
「うわっ、眩しい‥」
キラキラと光る青い海、どこまでも続く砂浜の海岸線。リゾート地の海だった。
「泳ぐわよ!」
マリー先輩が高らかに宣言した。
いきなり服を脱ぐマリー先輩。
えー!?見てもいいのぉ?えへへ。
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