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第2章 幼年編
260 お米最強!
しおりを挟む「「「お帰りー」」」
「「「ただいまー」」」
いつものあいさつで始まった会話。本来なら、ここで階層主戦の模様を後の隊に話すのだが……。
「メシ、メシ、アレク早く最高のコメのメシを食わせてくれよー!!」
オニールの絶叫が休憩室に響いた。
「メシ、メシ、コメのメシ♪メシ、メシ、コメのメシ♪」
即興でリズムをつけて歌いだすオニール。
「「メシ、メシ、コメのメシ♪‥‥」」
なんでセーラも一緒になって歌ってんだよ!しかも不思議な踊りまで加えてるし!
「本当にオニールは!でもダメよ、最初にリッチ戦の内容を聞くわ。これはシャンク君やアレク君、セーラさんたち後輩のためにもよ。
それとアレク君、悪いけどまたちょっとした軽食だけ用意してくれる?」
「はい!」
何にしような。
お米のお菓子はたくさんある。お煎餅、パンケーキ、ケーキ、ようかん、おこし、ポン菓子、お餅、お団子‥‥ん!?そうだよお団子だよ!串に刺さったお団子を作ろう!
米粉を練ってビー玉くらいのお団子にする。これを茹であげて浮いてきたらお団子の完成。
あとは串に刺してタレをつけて‥‥ああ、これならセーラでもできるよな。
「セーラ、ちょっと手伝ってくれ」
「えっ!?いいの?」
戸惑いつつも喜色満面のセーラ。だが‥‥
「おいおいおい、アレク‥‥」
キムが懐疑的な見方を示す。
「アレク君、あなた‥‥」
思わず絶句するマリー。
こくんこくん。マリーとキムに向けて大丈夫だと言わんばかりに頷くアレク。
(ヒソヒソ。アレクを信じるが‥‥シャンク、ヤバかったらすぐにセーラを退場させろよ)
(ヒソヒソ。はい、もちろんですキム先輩)
ごくん
ヒソヒソ
ごくん
ひそひそ
生唾を飲む音が聞こえる。固唾を飲んで見守るパーティのメンバーたち。
「セーラ、お団子をこの串に5個刺してくれ」
「はい!」
アレクの手本どおりに串に団子を5個ずつ刺していくセーラ。
「できた!これでいい?」
「ああ、いいよ」
「アレク、私にもできたよ!」
「あ、ああセーラ。上手くできたな‥‥」
「シャンク先輩、私もお料理のお手伝いができました!」
「う、うん。セーラさんよくできたね‥‥」
それくらい誰でもできるだろうとは思っていても口にしないシャンクであり、アレクであった……。そして。
「チキショウなの」
なぜかセーラを睨むリズだった。
出来上がったお団子を燃料用に取っておいた炭火で軽く焼いていく。
少し香ばしいとさらに美味しいからね。
タレは甘めのメイプルシロップのみと、胡桃や胡麻、アーモンドを砕いたものの2種。
オーソドックスなタイプの甘いお団子に、中部地方でよくみる五平餅風のタレのお団子。
「お待たせしました。米のお団子です」
「串焼きの肉みたい」
「へぇーコメはメシ以外もできるのか?」
「ですです。応用できるのは麦と変わらずか、それ以上ですね」
そうなんだよな。米粉で作った麺も美味しいんだよな。あと、米味噌も。これも今度作らなきゃな。
「「「うま~い」」」
「弾力があるんだね」
「タレも甘~い」
「どっちも美味いなぁ」
「こっちの木の実も美味しいなぁ~」
「焦げめも香ばしくて美味いな」
「「「美味い、ウマイ、うま~い!」」」
米粉から作ったお団子はみんなからも大好評だった。
「これで私もリズ先輩と一緒じゃないです!」
ふんすと胸を張るセーラ。
「アレク、シャンク先輩、今度から私もお料理の手伝いを‥」
「「ないない!それは絶対ない!」」
「チキショウ‥」
「ふんなの」
▼
ブーリ隊の先輩たちから、リッチ戦の模様を聞く。俺が考案した石化仕様の矢や、聖水仕様の矢も効果があったみたいで嬉しいな。そんなことよりも、やっぱりビリー先輩がよく観察していたからの結果なんだよな。頭をつかってきちんと予習と復習もすることが大事なんだと改めて思ったよ。
「去年、前回の私たちはこの35階層からはずーっと崖っぷちの探索だったわ」
そんな話ぶりでマリー先輩が話を続ける。
マリー先輩たちの前回40階層到達の記録は、学園2位の記録だ。そんな先輩たちも満身創痍で辿り着いた40階層。とてもじゃないがその先を進むことは躊躇ったという。
結果、40階層の休憩室にある帰還用の魔法陣に乗って帰還したという。
「ここからはますます情報も少ないわ。それでも、食糧も含めてここまで万全の状態で辿り着けたのは幸運以外の何物でもないわ。探索の速度もかなり速いしね。だから、ここでも2日はゆっくりしてから進むわ。約3人からお腹の音も聞こえてきたから‥‥アレク君、食事をお願いね」
「はい!」
ぐーぐーぐー
ぐーぐーぐー
ぐーぐーぐー
オニール先輩、ゲージ先輩、そしてセーラのお腹からぐーぐーと音が聞こえてきた……。
では米の初披露といきますか!
――――――――――――――
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