アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

257 リッチ(前)

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 「アレク、なんか草刈ってたよな。食えるのか?」

 さすがオニール先輩、食べ物への嗅覚がすごいよ。

 「オニール先輩、食えるなんてもんじゃないですよ、このコメは!」

 「えー?だって途中のあの草だろ?なあマリー、去年もたくさんあったよな?あの草」

 「ええ。風にゆれる見た目がきれいな草よね」

 ここでリズ先輩が声を上げた。

 「里の先輩に聞いたことがあるの。東の小国では麦と似た見た目なんだけどそのまま食べられる穀物があるって」

 キム先輩も口を開いた。

 「ああ、そういや俺も聞いたことがあるな。うちよりはるか東の国ではパンや芋と同じような主食になるものがあるってな」

 「たぶんそれがこのお米だと思います」

 「「「へぇー」」」

 「で‥うまいのか?」

 「めちゃくちゃ美味いです!」

 「そんな美味いもんを何でお前が知ってんだよ。また古文書なのか?」

 「あ、ああ、こ、これは昔村に来た旅人にご馳走になったんですよ。だから食べ方も教えてもらって知ってますからね。今日の休憩室はこれまででいちばんうまいものが食えます!」

 「「「おおー!パチパチパチ」」」


 みんなの関心が俺への疑念から「いちばんうまいもの」へ変わった。セーフ!


セーラが聞いてくる。

 「アレク、さっきはイネって言ってたけど、コメと名前は変わるの?」

 「ああそれはね、この植物の状態で稲(イネ)、脱穀して米(コメ)になるんだよ」

 うん、言っても漢字はわかんないもんな。


 「へぇー、何で?」

 「たぶんそのくらい変化するし、美味しいからじゃないか」

 「へぇー」

 いや、なんでかは俺も知らないって。

 「とにかくおいしいご飯のためにも、先輩たちは早く次の階層主をやっつけて来てくださいよ」

 「任せろ!って言いたいところだけどな‥‥まあ正直リズ任せだな」

 「ギャハハ、そうだぞ、俺たちはオマケみたいなもんだ」

 「仕方ないの。リッチには魔法しか効かないの。でもオニールがゾンビになって闘ったらみんな楽になるの」

 「ああ、それはいい考えだな」

 「うん、僕も賛成するよ」

 「オイもそれがいいと思うぞギャハハ」

 「なんで俺がゾンビにならなきゃなんねぇんだよ!」

 「ゾンビになったら、あの像みたいにずーっとみんなを守ってくれるの」

 「ああ、あの像のオニールはカッコいいけどな」

 「あー思い出した!アレク、セーラ、てめーらよくもやってくれたな!」

 「ん?オニール先輩どうしたんですか?」

 「だってお前ら、あの像は‥」

 オニール先輩が文句を言う前にセーラが素直な感想を口にした。

 「オニール先輩のあのポーズ、とってもカッコいいですよね」

 そう言ったセーラがオニールフィギュアと同じ格好を真似た。

 「なっ?!お前‥」

 「セーラ、ちょっと違うの。こうなの」

 横でリズもオニールフィギュアの真似をする。

 「えっ!?リズも‥」

 「こうなの」

 「えーこうじゃ‥」

 「こうなの」

 「ああこうですね‥」


 2人の女子が一生懸命に真似る仕草は見ている者たちが思わず笑顔になれるものだった。


 「うん、うまいねセーラさん」

 「リズもうめーな」

 「ああ2人ともうまいな」



 「いやそこは腰をこう落としてだな‥」

 上機嫌になって演技指導を始めるオニールだった。

 (ヒソヒソ、タイガー、相変わらず単純よね)

 (ヒソヒソ、いいじゃないか。あんなことで気分が良くなってくれれば)

 (うんうん、違いないわ)









 「じゃあ行ってくるな。アレク、そのうまいコメ、楽しみにしてるぞ」

 「はい!楽しみにしててください」


 「「「いってきます!」」」

 「「「いってらっしゃい!」」」


 ギギギギギーーーーーッ

 ブーリ隊の先輩たちが扉の先へ消えていった。






 よし、待ってる間にコメを精米しておこうかな。最初は丼ものにするからたぶん10人で2升は食うよな。
 ひょっとして足らないかな‥‥。






 ▼





 扉の先。
 奥に座っていたのは階層主。中年で小太りの男だ。
 男はリズと同じような黒い鍔のとんがり帽子を被っている。リッチだ。

 「魔法使いなの‥」

 「違うぞリズ。ありゃリッチだ」



 ◯リッチ
 魔術師がアンデットとなった者である。死後も思念が残り死霊となった。乗り移る身体自体はゾンビであるともいえる。
 有象無象のゾンビを発現できたり、指示命令もできることからゾンビの上位種とも考えられている。
 会話は可能だが、会話の益は全く無い。
 火、水、土、金、風の主要5魔法のlevel2以上を発現できる。
 稀にダブル、トリプルのLevel3を発現できる者もいる。
 魔石はほぼない。
 Levelの高い魔法を発現できる個体には魔石もあり、消滅時には宝物をドロップ(落とす)することもある。



 「おやおや、久しぶりのお客人ですな。5人もお越しか。ん?魔法使いの子もおりましたか。この身体の魔法使いのお仲間ですかな。これは歓待せねばなりますまい、ホッホッホ」

 そんな言葉を発するリッチ。両手をあげて、使役するゾンビに向けて言葉を発した。

「さあみなさん、お客様のおもてなしですよ。おいきなさい。$$€€##**$$££‥…」

 ズズッズズッズズッズズッズズッズズッ‥

 床から続々とゾンビが現れる。筍が地中から現れるように。それも早送りの映像のように。

 「みんないいね。3人はとにかくゾンビたちを削り続けて。僕はリズを守りつつみんなに指示を出す。あとはリズに任せよう」

 「「「了解(なの)!」」」

 ブーリ隊の対リッチ戦が始まった。





 ――――――――――――――




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