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第2章 幼年編
255 ガタロ
しおりを挟む湿度の高い回廊を抜けた先。34階層は湿地帯だった。まるで東南アジアの水田みたいな風景。
ザクッザクッザクッザクッザクッ‥
500メルを空けてボル隊、ブーリ隊が小走りに先を進む。
ぬかるみも含めてもとっても歩き易いよ。さすが戦闘靴だ。
旧道が続く道すがら。時おり、水たまりや湖沼が真横に広がる。
また鰐が出るんじゃないかって注意して探知してるけど、いまのとこら鰐はいなさそうだ。
水の中は探知が難しいんだよな。水面に浮いて寄ってくる鰐は探知もし易くなったけど、水中からいきなり浮上する魔獣は僅かなタイムラグが発生する。俺もまだまだだよな。
と。
!!
ザバーンッ!
いきなり水中から上半身を浮上させて魔獣が現れた。ガタロだ。
◯ガタロ
身長1.0~1.3m。ゴブリンの亜種とも考えられている水生魔獣。
口中に含んだ水を圧縮して水弾を放つ。至近距離の1、2メルから放たれた水弾は水とはいえ危険である。
水中では魚と同等の俊敏性を持つ水生魔獣。多数のガタロに水中に引きずり込まれると危険。
陸上では二足歩行。
魔石は水を発現できるため携帯水筒に役立つ。食用不可。
ザバーンッ!
河童みたいな緑色の魔獣ガタロ。いきなり浮上したかと思ったら、そのまま口から水弾を放った。
「グワッグワッ」
高圧の水弾が飛んでくる。
バシュッッ!
「うわっ!」
思わず声が出てしまう。高圧の水流が直接肌にあたる感じ。4メルほどでこれだから1、2メルならおそらく転倒するだろうな。水中に引きずりこまれでもしようものなら大変なことになる。
「アレク、初見でも油断するな!」
キム先輩の言葉がとぶ。
「はい!」
鰐魔獣のときと同じだ。水面にわらわらと集まってくるガタロ。よく見れば手足の指には水かきもついている。
「アレク、変な奴らは雷でやっちゃえ!」
「わかったシルフィ」
「スパーク!」
水面に通電するように、雷魔法を発現する。
ビリビリビリビリビリビリーーーッ!
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
グギャーッ グギャーッ
ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー
ぷかーー ぷかーー
感電したガタロが腹を出してぷかぷかと浮いてきた。身体は緑色なのに腹は真っ白だよ。まるでカエルじゃん。
「アレクすごーい!」
「反則ね……」
「ああ、あれじゃあな……」
「僕、ガタロに同情します……」
こいつらの魔石は水筒に入れといたら、勝手に水を生み出してくれるんだよな。キモいけど、解体するか。
「「「キモっ!」」」
「だれか手伝って?」
「「「いやだ(いやよ)」」」
最近みんな冷たいよな……。
【 ブーリ隊side 】
「ガタロだな」
「ゲージがいるからガタロはぜんぜん怖くないの」
そう言ったリズはリアカーの上でうつ伏せになった。
「フッ」
誰も文句を言う者はいない。チームのマスコットを微笑ましく見守るばかりだ。
「ゲージ、俺リアカー代わるわ。ちょいちょいっとやっつけてきてくれよ」
「ギャハハ。オイに任せろ」
「「「頼んだぞゲージ!」」」
「おお!」
そういうなり、リアカーを離れ、服や戦闘靴を脱ぎ眼前の湖沼に飛び込むゲージ。
ザッパーーーンッ
ゲージが飛び込んだ音につられて。
ガタロがわらわらと集まって水中に沈んでいくのが見えた。
何分かののち。
ぷかーーっ ぷかーーっ
ぷかーーっ ぷかーーっ
ぷかーーっ ぷかーーっ
ぷかーーっ ぷかーーっ
水中から数多くのガタロが浮いてきた。
「はは、相変わらず心配するだけ無駄だよね」
「そうだな」
「さすがだよなゲージは」
「あたりまえなの」
「おっ、リズ起きたのか?」
「寝てないの。寝てるふりだけなの」
「「「だよねー」」」
温かい仲間の眼差しだ。
――――――――――――――
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