アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
250 / 722
第2章 幼年編

251 ゴーレム(前)

しおりを挟む


野営後。31階層から次の32階層を目指す回廊。

 「暑いね」
 「ああ暑い」
 「僕も暑いです」
 「ホント暑いっスよね」
 「う~う~う~」


すでに回廊からも熱気が伝わる。セーラは相変わらず、うーうーと唸るばかりだ。

 「う~アレク、涼しくなるの何かないの?」

 「そんなもんねーよ!‥‥いや、あるわ!」

 「セーラちょっと待ってろよ。先輩たちもちょっと待っててくださいね。『ウォーター!』」

そう言って俺は、ヘルハウンドの毛皮から作った耐熱耐火服に入念に水をかけた。


ジュワワワヮヮヮーーーーーー!

自分の指先から水が出てくるのには、今さらだけど不思議な気がする。
服に染み渡るように入念に水をかける。

 「あーっ、少しは涼しいかな。ありがとうアレク」

 「暑いけどがんばろなセーラ」

 「はいアレク」


涼しいはずである。
健常時の夏場。タオルに水を浸して首に巻いたものだ。するとタオルが乾くまでしばらくはけっこう涼しかったんだ。
冷感タオルとか冷却タオルも同様の原理。

気加熱。
水分が蒸発するときに、まわりの空気から熱を奪って数度低くなるというやつだ。
たかが数度とはいえ、暑ければ暑いほど、首に巻いたタオルと同じで体感は涼しいものになる。


でもね、異世界ものだったら暑さを感じさせない魔法とかクーラーがあっていいって思うんだけどなぁ。
魔獣や魔法は普通にある世界のくせに、こんなとこのチート技は何もないんだよなぁ。変なとこだけリアルなんだよな。


この先は灼熱という32階層を含めて2、3時間ごとに耐熱服に水を含ませて歩こう。
もちろん水分も欠かさず摂らなきゃな。


 「あっ、ちょっと待っててください。後ろのブーリ隊の先輩たちにも」

そう言って俺は地面から大きめの浴槽みたいなものを発現して、中を水で満たした。

 「えーと服をここに浸してください。涼しくなりますっと‥‥」

 「アレク君、この板に書くんだよね?」

 「はい、そうですけど?」

 「セーラさん、アレク君の言うとおりに書いてくれる?」

 「はい、マリー先輩」

 「ん?」

 「あのなアレク、お前の字はかなり下手だ。何書いてるかわからんからな」


えーっ!?
俺そんなに字、下手だったの?
あっ、そういやシスターナターシャもむかしそんなこと言ってたよなぁ。
ああ同室のハイルも言ってたわ!
「お前は俺より字が下手だ」って!

マジか‥‥


 「フッ」

あっ、またシャンク先輩に失笑された……。





ガゥガゥ ガゥガゥ ガゥガゥ ガゥガゥ‥

相変わらずワーウルフやヘルハウンドがやってくる。
1度に会敵する数も1、2頭から3~5頭くらいに増えた。
怖くはないんだけどヘルハウンドは嫌だな。だって奴らが火を吐くだけでまわりの温度がさらに上がるから。


ダッダッダッダッダッダッダッダッ‥‥

普段より駆け足。
やっぱり暑いからこの回廊と階層は早く抜けたい。

2点鐘ほどを早足で駆け続けて。ようやく32階層の明るさが見えてきた。


 「さぁ水分摂りながら一気にいくわよ」

 「暑ぢーー」

 「う~う~う~」

ああ、これはもうサウナだ。
温度も湿度もめちゃくちゃ高い。
そりゃ水着姿で駆け抜ける気持ちもわかるよなぁ。
でもここは中東地域の人と同じなんだ。
皮膚を出さずに服を着て。
火傷しないよう気をつけて行こう。





 「アレク」

 「はい、キム先輩」


ズーンッ  ズーンッ  ズーーンッ  ズーーンッ  ズーーンッ  ズーーンッ‥

大地を揺らせ近づいてきたのはゴーレム、土のゴーレムだ。


◯ゴーレム
別名、泥人形。
二足歩行の魔物。
速度は遅いが、その力は想像以上のものがある。
直接攻撃のほか、土魔法を行使して石礫も投げてくる。
弱点は後頭部。
転倒させ、歩みさえ止めてしまえば危険性は激減する。
そのため風魔法のLevel3を発現できる者がいれば怖くはない。ない場合は力押しでゴーレムの歩みを止めることになるため、四方を囲まれることは危険である。
土<岩<金属とその性質によりゴーレムの強度も違う。
金属ゴーレムはかなり希少。
尚、ゴーレムの魔石には物理攻撃を吸収する性質があるためタンクの盾に装備するとよいとされる。



かっけー!
男のロマン、ゴーレムだよ!



――――――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!

新年度に入り、しばらくは字数が少なくなるかと思います。
毎日更新は続けたいと思っています。
どうぞよしなに(拝)


「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...