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第2章 幼年編
251 ゴーレム(前)
しおりを挟む野営後。31階層から次の32階層を目指す回廊。
「暑いね」
「ああ暑い」
「僕も暑いです」
「ホント暑いっスよね」
「う~う~う~」
すでに回廊からも熱気が伝わる。セーラは相変わらず、うーうーと唸るばかりだ。
「う~アレク、涼しくなるの何かないの?」
「そんなもんねーよ!‥‥いや、あるわ!」
「セーラちょっと待ってろよ。先輩たちもちょっと待っててくださいね。『ウォーター!』」
そう言って俺は、ヘルハウンドの毛皮から作った耐熱耐火服に入念に水をかけた。
ジュワワワヮヮヮーーーーーー!
自分の指先から水が出てくるのには、今さらだけど不思議な気がする。
服に染み渡るように入念に水をかける。
「あーっ、少しは涼しいかな。ありがとうアレク」
「暑いけどがんばろなセーラ」
「はいアレク」
涼しいはずである。
健常時の夏場。タオルに水を浸して首に巻いたものだ。するとタオルが乾くまでしばらくはけっこう涼しかったんだ。
冷感タオルとか冷却タオルも同様の原理。
気加熱。
水分が蒸発するときに、まわりの空気から熱を奪って数度低くなるというやつだ。
たかが数度とはいえ、暑ければ暑いほど、首に巻いたタオルと同じで体感は涼しいものになる。
でもね、異世界ものだったら暑さを感じさせない魔法とかクーラーがあっていいって思うんだけどなぁ。
魔獣や魔法は普通にある世界のくせに、こんなとこのチート技は何もないんだよなぁ。変なとこだけリアルなんだよな。
この先は灼熱という32階層を含めて2、3時間ごとに耐熱服に水を含ませて歩こう。
もちろん水分も欠かさず摂らなきゃな。
「あっ、ちょっと待っててください。後ろのブーリ隊の先輩たちにも」
そう言って俺は地面から大きめの浴槽みたいなものを発現して、中を水で満たした。
「えーと服をここに浸してください。涼しくなりますっと‥‥」
「アレク君、この板に書くんだよね?」
「はい、そうですけど?」
「セーラさん、アレク君の言うとおりに書いてくれる?」
「はい、マリー先輩」
「ん?」
「あのなアレク、お前の字はかなり下手だ。何書いてるかわからんからな」
えーっ!?
俺そんなに字、下手だったの?
あっ、そういやシスターナターシャもむかしそんなこと言ってたよなぁ。
ああ同室のハイルも言ってたわ!
「お前は俺より字が下手だ」って!
マジか‥‥
「フッ」
あっ、またシャンク先輩に失笑された……。
ガゥガゥ ガゥガゥ ガゥガゥ ガゥガゥ‥
相変わらずワーウルフやヘルハウンドがやってくる。
1度に会敵する数も1、2頭から3~5頭くらいに増えた。
怖くはないんだけどヘルハウンドは嫌だな。だって奴らが火を吐くだけでまわりの温度がさらに上がるから。
ダッダッダッダッダッダッダッダッ‥‥
普段より駆け足。
やっぱり暑いからこの回廊と階層は早く抜けたい。
2点鐘ほどを早足で駆け続けて。ようやく32階層の明るさが見えてきた。
「さぁ水分摂りながら一気にいくわよ」
「暑ぢーー」
「う~う~う~」
ああ、これはもうサウナだ。
温度も湿度もめちゃくちゃ高い。
そりゃ水着姿で駆け抜ける気持ちもわかるよなぁ。
でもここは中東地域の人と同じなんだ。
皮膚を出さずに服を着て。
火傷しないよう気をつけて行こう。
「アレク」
「はい、キム先輩」
ズーンッ ズーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥
大地を揺らせ近づいてきたのはゴーレム、土のゴーレムだ。
◯ゴーレム
別名、泥人形。
二足歩行の魔物。
速度は遅いが、その力は想像以上のものがある。
直接攻撃のほか、土魔法を行使して石礫も投げてくる。
弱点は後頭部。
転倒させ、歩みさえ止めてしまえば危険性は激減する。
そのため風魔法のLevel3を発現できる者がいれば怖くはない。ない場合は力押しでゴーレムの歩みを止めることになるため、四方を囲まれることは危険である。
土<岩<金属とその性質によりゴーレムの強度も違う。
金属ゴーレムはかなり希少。
尚、ゴーレムの魔石には物理攻撃を吸収する性質があるためタンクの盾に装備するとよいとされる。
かっけー!
男のロマン、ゴーレムだよ!
――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
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毎日更新は続けたいと思っています。
どうぞよしなに(拝)
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