アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

235 セーラの進化

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【  マリーside  】

 「エアカッター!」

シュッ!

ギャーッ!

マリーが担う左翼からもコボルトやゴブリンライダーの襲撃は止まなかった。

それでもアレクが設置した3重の馬房柵のおかげで、左翼はまだ前線維持はできていた。


ピカッ!
ドカカカァァァン!

ピカッ!
ドカカカァァァン!

ピカッ!
ドカカカァァァン!


前方からはアレクが発現する雷魔法が空気と大地をビリビリ震わせている。

 「エアカッター!」

シュッ!
ギャーッ!


 「ねぇシンディ、アレク君のあれLevel3でいいの?」

 「あーあれ今は知らないけど100年ほど前ならLevel4・災害級よー」

 「ふふっ。やっぱりね」

 「エアカッター!」

シュッ!
ギャーッ!

 「それよかマリー、アレクの魔力量、マリーを超えたね」

 「ふふふ。ヒューマンの歳下の子に負けたかー。」

 「そうねー。でも精霊の私でもアレクはおもしろいしかわいいって思うわ。マリーはどうなの?」

 「エアカッター!」

シュッ!
ギャーッ!

 「そうね、エルフの私でもヒューマンのアレク君に負けても悔しくないんだよねー」

 「それってやっぱり?」

 「そうよ。アレク君は…」

 「「変態だもん!」」

ふふふふ
あははは



ゴブリンソルジャーやゴブリンアーチャーなど、神経をすり減らすような魔物からの当座の危機は去った。
キムが未然に防いでくれたのだ。

それでも魔物からの人海戦術攻撃が終わったわけではない。
依然として危険であることは、前方に出向いたアレクが戻らないことからも明らかである。

 「私たちもやれることをやりましょうか」

 「そうねー」

 「「エアカッター!」」


――――――――――――――


サクッ!
ギャー!

サクッ!
ギャー!

内側の馬房柵に取りつく魔獣から優先して、クナイを1体ずつ刺していく。

攻撃魔法のように何体もの魔獣を1度に倒すことも、刀で払うように何体もの魔獣を撫で切りにすることも叶わない。
大小問わず、1体の魔獣に相対するのは1本のクナイのみだ。
広い右翼全域でその任を1人で賄うのだ。

本陣から右翼の守護についたキムは必死にならざるを得なかった。
孤軍奮闘ともいえる。
それはなにより、数に対応できる武力が圧倒的に不足していたからである。

暗殺、斥候を得意とするキムにとって、点の武力制圧は問題なかった。
が、面の武力制圧は範囲外。不得手であったのだ。

それは後衛を任されているシャンクとセーラの目からも明らかだった。
駆けまわっては馬房柵に取りつく魔獣を倒していくキム。

現在では辛うじて適応しているキムの右翼に敵の魔獣の人海戦術が集中されれば戦線崩壊の可能性もあった。


 「キム先輩、シャンク先輩!
前にアレクがやった魔獣の出口を狭めるやり方、あれをお2人にやってって私が言ったら困りますか?」

乱戦時の最中、突拍子もないセーラの提案である。

キム、シャンクともに即座に意図を理解する。

 「できるのか?それができればありがたい」

 「えっ?!鈍い僕には逆にありがたいけど……」

 「はい、ではいきます!」


即断即決。

学園ダンジョンの探索当初より目に見えて成長しているのはセーラも同じである。
聖なる盾・聖壁に関しても、その発現力も独創性も当初よりは格段に進化していた。


 「ホーリーガード!」

セーラが発現する聖壁・聖なる盾は目には見えない不可視の障壁である。
目には見えないのだが……

ギャッギャッザワザワグギャーッギャッギャッザワザワグギャーッ…

右翼で、後尾で。
面で侵略を企てていた魔獣が次第に1箇所に集まりだした。

ギャッギャッザワザワグギャーッギャッギャッザワザワグギャーッ…

以前にアレクが発現した馬房柵を逆三角形にして誘導するものの障壁ver.。
魔獣の砂時計といったところか。

ギャッギャッザワザワグギャーッギャッギャッザワザワグギャーッ…

目には見えない障壁に誘導された魔獣の出口は、常時1体しか出られない。
さらには狭い出口に倒れた魔獣を他の魔獣自身で排除しなければ先には進めない。


どうして魔獣が人を目指して前進するのかはわからない。
それでもすべての魔獣が真っ赤な目をして、前へ前へと襲い来る事実は変わらない。


ギャッギャッザワザワグギャーッギャッギャッザワザワグギャーッ…

まるで砂時計が落ちるように。1体ずつの魔獣が弾きだされる。

ザクッ!
ギャーーッ

砂時計の出口に陣取り、クナイで1体ずつを倒していく。

 「よくやったセーラ!」

双爪を振うシャンクもまた然り。

ブワァンッ!
グシャッ

 「ありがとうセーラさん」

 「はい!」


 「ふふ」

後ろを見ながらマリーも口角を上げた。



――――――――――――――



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