232 / 722
第2章 幼年編
233 四面楚歌
しおりを挟むドドドドドドドドドドドドドドドドド…
タッタッタッタッタッタッタッタッダッダッダッダッダッ…
ギャッギャッギャッギャッギャッギャッ…
ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ…
グギャーッ グギャーッグギャーッ グギャーッ…
ガウガウガウガウガウガウガウガウガウ…
前からも後ろからも。
右からも左からも。
全方位から押し寄せる魔獣の群れ。
四面楚歌。
俺は俺のできることをする。
「馬房柵! 馬房柵! 馬房柵! 馬房柵! 馬房柵!…」
「馬房柵! 馬房柵! 馬房柵! 馬房柵! 馬房柵!…」
「馬房柵! 馬房柵! 馬房柵! 馬房柵! 馬房柵!…」
「な、なにこれ!」
「す、すごい…」
「ア、アレクお前…」
「ア、アレク君あなた…」
発現したのは高さ1メルほど、斜めに棘が出た拒馬、馬房柵だ。
今の俺の魔力で瞬時に発現できる高さと発現量。もちろんいつまで続くかわからない中、魔力枯渇はしない。
本陣を円の中心に半径50メル弱・40メル・30メルの外周3段で馬房柵を設置。
乗り越えるにせよ、倒すにせよ、これで少しは魔獣の進軍速度をコントロールできる。
ズズズズズーーーーッ
本陣も1.5メルほどの高さの分厚い土塀で囲った。
「マリー先輩、キム先輩、シャンク先輩、セーラ、あとは任せます!」
「よくやったアレク!」
「「「ええ(はい)!」」」
駆け出していくアレクだ。
【 アレクside 】
俺ができることの優先順位。
主力が来る前方への対処だ。
まずは空からの脅威、ガーゴイルの除去。
陸の脅威、ワーウルフとゴブリンライダー、コボルトの除去だ。
こいつら機動部隊のあとには主力も控えている……。
「サンダアアァァンプォォォ!」
雷魔法「土砂降りの雷(Thunder+downpour)」だ。
ぶっつけ本番だけど不思議と成功する確信があった。
たちこめる雷雲から発現されるのは限りなくLevel4に近いLevel3・上級の雷魔法だ。
ピカッ!
ドカカカァァァン!
ピカッ!
ドカカカァァァン!
ピカッ!
ドカカカァァァン!
ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!
次々に撃墜するガーゴイル。
ランダムに降り注ぐ雷の乱撃。
直撃すれば慈悲のない結果となるのは免れない。
地上から迫りくるワーウルフ、ゴブリンライダー、コボルト群も同様。
次々に、雷の直撃を受けて倒れていく。真っ黒に穴を開けて穿つ雷の犠牲となって。
それでも。
ドドドドドドドドドドドドドドドドド…
タッタッタッタッタッタッタッタッダッダッダッダッダッ…
ギャッギャッギャッギャッギャッギャッ…
雷の間隙を縫って俺たちの本陣にまでたどり着こうとする魔獣の部隊。
「セーラ、上に障壁を!」
乱戦を覚悟するなか、俺は大声でセーラに注意を促した。
【 セーラside 】
アレクの発した大声に応じて、私は聖魔法・聖なる盾を発現します。
アレクの指示に疑うことは何もありません。大切な仲間の指示通り。
「ホーリーガード(聖壁)!」
私たちの本陣を箱に見立て、上から下まですべてを囲む不可視の盾・聖壁です。
ピカッ!
ドカカカァァァン!
ピカッ!
ドカカカァァァン!
前方では、無数のガーゴイルがアレクの発現した雷魔法に堕とされていくのが見えます。
すごいです。
それでも土砂降りの雷を潜り抜けた何体かのガーゴイルが、手にした岩石を上空から手放しました。
ヒューーーーーーッ
ドカカカァァァンッ
ヒューーーーーーッ
ドカカカァァァンッ
ヒューーーーーーッ
ドカカカァァァンッ
煉瓦大。
ガーゴイルが上空から落とす岩石も直撃すればかなりの脅威となります。
だけど大丈夫。
本陣前で。
ホーリーガードが、マリー先輩、シャンク先輩、私の3人を守り上空からの脅威を防ぎます。
ヒューーーーーーッ
ドカカカァァァンッ
ドカカカァァァンッ
ドカカカァァァンッ
ビリビリと震えるホーリーガード。
でもこのくらいびくともしません。私だってみんなを護れるように、日々魔力を高めていますから。
もう足手まといになったり、みんなに心配されるだけの私じゃありません。
次は向かってくるスカルナイトたちアンデットを。
ホーリーガードを維持しながら倒していきますね。
そう、少しでも仲間に役に立つことを。
私は私にできることをやるだけです。
そしてここでも。
魔獣に勝って、アレクとあのポーズを一緒にやるんです。
馬房柵を抜けたスカルナイトが近づいてきました。
ザワザワ ザワザワ ザワザワ…
「いきます。ライト!」
青い光の聖魔法がスカルナイトを貫きます。
バリバリバリバリッ
再生することも叶わず、粉々に崩れていくスカルナイト。
やりました!
アレクやりましたよ!
「ばああぁぁぁーん!」
指てっぽうのポーズ(意味はわからないけど?)をとる私。
ポーズ、こうでしたよねアレク?
――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします。
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる