アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

228 28階層へ

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防寒着を着込んで28階層への回廊を進む。

 「これはけっこう寒いね」

 「本当ですね」

セーラとシャンク先輩が話しながら回廊を進む。
先頭を行くキム先輩が吐く息も白い。

これまでは回廊の体感温度なんてあまり考えなかったけど、予測通りに真冬の28階層を向かってるんだと実感する寒さだ。

回廊だからまだ雪がないだけマシかもしれないな。



 「!」

 「アレク」

 「はいキム先輩、ホーンシープ3、ワーウルフ3です」

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッ…

駆けてきたのか、すぐに現れたホーンシープとワーウルフ。

毛皮も冬仕様なんだな。
ホーンシープもワーウルフも白い冬毛だ。どっちも今まで出遭った同種の中で1番大きくない?
めちゃくちゃ大きいよ。
やっぱり寒いから脂肪蓄えて大きくなるのかなぁ。
じっとして、「メー」とか「ワンワン」とか鳴けばかわいいのに。
歯剥いて威嚇してくるよ!しかも揃いも揃って真っ赤な目だ。こえーよ!


 「アレク、お肉が美味しい羊さんだよ!」

嬉しそうにセーラが声を上げる。

 「あ、ああ、そうだね」

なぜかゲージ先輩やオニール先輩と並んでホーンシープの爪先の肉を嬉しそうにちゅーちゅーやってるセーラが頭に浮かんだ。豚足みたいにね。
たぶんそうなんだろうな……。

見かけによらず、けっこうディープな肉食女子なんだよ、セーラって。

 「どうするアレク?」

 「肉も皮もほしいんで、俺がやります」

 「よし、任せた」

ブルル ブルル ブルル ブルル ブルル…

ウゥー ウゥー ウゥー ウゥー ウゥー…

横一列に並んで。
ホーンシープとワーウルフが威嚇して突進の構えをみせるが、それを待つつもりはない。

 「スパーク!スパーク!スパーク!」

6体並んだホーンシープとワーウルフの足下に3発、弱めの雷魔法を放つ。

ビリビリビリビリビリビリ…

濡れた石畳伝いに雷の高圧電流が魔獣6体を貫いた。

バタバタバタ

一気にバタバタと倒れる魔獣6体。

 「ちょっと待っててくださいね。すぐに解体しますから」

ホーンシープは食肉用に、毛皮もほしいからワーウルフと合わせて全部ゲットしたよ。

その後もホーンシープもワーウルフもパーティーの人数分それぞれ10体をゲットした。防寒用に毛皮のコートを作るんだ。

防寒着は着てるんだけどね、極寒地帯に行くそうだからもう1枚アウターにあればいいかなって。

この世界の人って真冬の寒いときでも服の厚着はするんだけど、ベンチコートみたいなアウターのコートは着てないんだよね。
ダンジョンだから綿はないけど、毛皮のコートは作れるからね。
だからホーンシープの毛皮でコートを作るんだ。

ワーウルフの毛皮も防寒性と通気性もいいから戦闘靴のインナーに敷けば下からの寒さを緩和できるからね。
あとレッグウォーマー(脚絆)も作ろうかなと。

 「アレク、あとで私が縫うのを手伝うね」

 「ああそうか!セーラは縫い物とか好きだって言ってたもんね」

 「はい!お料理は……アレだけど、縫い物は得意です!」

そういやシスターナターシャも服とか全部自分で縫ってたもんな。
教会のシスターは自分の服は自分で仕立てられないと困るもんな。

 「じゃあ、あとでセーラに任せるね」

 「はい、任せてください!」

セーラがめっちゃいい笑顔で応えてくれた。
そういや初めて会ったころや一緒のクラスになったころはセーラの内面なんかぜんぜん知らなかったもんな。
美少女だったから、ただドキドキするばかりだったけどね。

だんだんと仲良くなって、セーラのことも知ってきた。お料理が壊滅的にダメなところや肉食好きなところやマヨネーズを直飲みするようなすげぇところまでわかるようになった。
今じゃ仲良しのクラスメイトだもんな。

そうこう考えながら進んでいると、目の前が明るくなってきた。
いよいよ28階層だな。
より遠くからでも前方の明るさがよくわかる。
よっぽどいい天気なのかなって思ったら・・・違っていた。
あたり一面、真っ白。眩しいくらい白銀の世界が広がっていた。



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