アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

227 夜襲(後)

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「1人用歩哨ボックス」の外からキム先輩がシャンク先輩に声をかける。

 「大丈夫かシャンク?」

 「だ、大丈夫です…」


歩哨から出てきたシャンク先輩。
心なし青い顔をしてるのは、気持ち悪かったんだろうな。
そりゃ狭い歩哨用の箱1枚の外でギャーギャー気持ちの悪い魔物に囲まれたんだもんな……。


男子寮食堂周りに取りついていたガーゴイルは別に50体ほどいた。

シャンク先輩も無事ならなにも問題はない。

 「マリー先輩ありがとうございます。あとは俺に任せてください。みなさんはすぐに食堂へ」

そう言った先から雷魔法を発現した。


「スパーク!スパーク!スパーク!スパーク!スパーク!スパーク!スパーク…」

ビリビリビリビリビリ…

ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー!ギャーー…

 「セーラもありがとう。もういいよ」

 「はい」

この場で見えるガーゴイルはすべて倒した。

外堀の先はよく見えないがやっぱり地面を覆う勢いで魔獣がひしめいているようだった……。

 「じゃあシャンク先輩もそのまま休憩室に行ってください。ここからは俺が代わります」

 「アレク君ありがとうね」

 「みなさんも早く休憩室へ。なんかあったら呼びますね」

 「わかったわ。あとはよろしく」

 「アレク頼んだぞ」

 「アレク君ありがとうね」

 「アレクまたね」



男子寮食堂に戻っていった仲間が扉を閉めたのを確認してから。
俺と風の精霊シルフィが話す。

 「シルフィ、シンディも呼んできて」

 「わかったわ」


 「アレク」

 「シンディ、マリー先輩もキム先輩も気づいてるよな。一応あとで伝えといて」

 「わかったわ」

 「これ、1本矢が刺さってるよな」

 「ええ、あと灯りも全部落とされてるわ」

外堀の先に。
一晩中燃えてるはずの柱の上の灯りがすべて消えていた。


 「灯りを落としたのはたぶんガーゴイルでいいけど、ガーゴイルがそこまで考えてやるかな?」

 「ふん。頭が悪いからやらないわ」

 「誰か命令した奴がいるわね」

 「ソイツは……」

 「200メル先にいるよな」

 「「ええ」」

 「当たらない距離にね」

 「一発撃っとこうか。わかってるぞって」

 「ふふ。アレクも血の気が多いのね」

 「フフッ。いいじゃないシンディ」



魔力をこめ、できるだけ遠くに届くように雷魔法を1発発現する。
200メル先にいる「ソイツ」に向けて、わかってるぞと一直線に伸びるように。

 「スパーク!」

ビリビリビリビリビリ…
ブオオオォォォォォーン!


暗闇の中を一筋の青白い閃光が走っていった。
ギリギリ200メルほど。
進行途中の魔獣はすべて倒れる。
今の俺の精一杯の長さだ。

 「ギリギリ届かなかったわね」

 「動かないわね」

 「ああ」

 「ゴブリンソルジャーね」

 「そうね」

 「ああ。強いな」


アレクは知らなかった。「ソイツ」が1度闘っていて、ずっとアレクたちを追っていることに。








その夜、俺の夜警中は飽きない程度にガーゴイルが襲ってきた。が、みんな返り討ちにした。
外堀はわからないが内堀は大丈夫のままだ。


陽が昇るころ。
あたりに溢れていた魔獣はだんだんと数を減していった。
いったいどこから来てどこへ帰るんだろう。

夜明けには索敵に引っかかる魔獣もほとんどいなくなっていた。


外堀には数限りない魔獣がひしめいていたが、土魔法で埋めておいた。
内堀にも何体かの魔獣が槍衾の餌食になっていた。
1発届いていた矢を射た奴は誰かわからないままだ。







 簡単な朝食を摂り、今日も先を進む。

 「さあ回廊のあとは今日から28階層よ。寒いからね、今日は防寒着でいくわよ」


――――――――――――――


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