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第2章 幼年編
225 夜襲(前)
しおりを挟む見守るレベッカ寮長の姿も見えなくなった夜。
いよいよの野営である。
食事は簡単なもの。
今夜はリズ鍋で温めたすいとんだ。
サンドワームやオークの干肉と芋やニンジン、タマネギーのコンソメスープ煮に、耳たぶ型に練ったすいとん。
一般的な冒険者は塩のみの味付けなんだろうけど、俺にはコンソメの顆粒があるからね。格段に美味しいスープになるよ。
すいとん。普通は小麦粉を練ったものだけど、俺のは少量の片栗粉も加えて練ってあるから、お餅のようにツルツルモチモチした食感になるんだよね。
寒い冬の夜に温かい汁物はなによりのご馳走。
使うのは深めのマグカップとスプーンだけだから、カトラリーの準備も楽だよ。
「ハフハフ、温かくて美味しいわね。野菜も美味しいし、すいとん?気に入ったわ」
エルフのセーラ先輩は、ベジタリアンじゃないけど、基本的に野菜が大好きだから、このすいとんもお気に召したようだ。
「ああ、これは温まるな。この小麦粉で練ったもの、海洋諸国にもよく似た料理があるぞ」
キム先輩も喜んで食べてくれている。
キム先輩出身の海洋諸国はいつか行ってみたいなぁ。
「アレク干し肉もやわらかくておいしいよ」
ハフハフしながらガッツリ食べているセーラ。
肉食聖職者のセーラの口にも合うみたいだね。
「じんわりして美味しいね。すいとんはボリュームもあるんだね。これも勉強になるよ」
料理も上手く、プロはだしのシャンク先輩は、俺が作る料理にいつも感心してくれる。
「「「ご馳走さま」」」
「「「おいしかった」」」
男子寮食堂を再現した部屋は灯りも十分だよ。何せ、窓がないから外に灯りも漏れないからね。
夜半。
このあとは2点鐘分(2時間)を刻む砂時計を片手に、今日も1人ずつ交代で夜警をする。
男子寮食堂の横にガーゴイル対策をした夜警専用の「1人用歩哨ボックス」も作ったからね。
歩哨ボックスには、中から外が見えるように格子状の枠を付けたんだ。
格子枠も交互にずらして2重設置した。
だから、中から外は見えるけど、外から中は見え辛い造りだよ。途中で矢も止まるから、矢で射られても安全だし。といっても矢で射かけられる心配はあまりしてないよ。
だって2重堀の先からは50メル近くあるからね。ゴブリンアーチャーの射程は20メルだし。
今日の夜警はマリー先輩→キム先輩→シャンク先輩→俺の順。
万が一、何かあったらいけないから「1人用歩哨ボックス」と男子寮食堂の間にはアラクネ糸を伝って土鈴が鳴るようにした。
緊急時、この土鈴がチリンチリン鳴ったら緊急事態ってことだね。
まあ、あんまり緊急事態にはならないと思えけど。
チリンチリンチリン…
それはシャンク先輩の夜警中に起こった。
チリンチリンチリン…
唐突に。
土鈴が鳴った。
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