224 / 722
第2章 幼年編
225 夜襲(前)
しおりを挟む見守るレベッカ寮長の姿も見えなくなった夜。
いよいよの野営である。
食事は簡単なもの。
今夜はリズ鍋で温めたすいとんだ。
サンドワームやオークの干肉と芋やニンジン、タマネギーのコンソメスープ煮に、耳たぶ型に練ったすいとん。
一般的な冒険者は塩のみの味付けなんだろうけど、俺にはコンソメの顆粒があるからね。格段に美味しいスープになるよ。
すいとん。普通は小麦粉を練ったものだけど、俺のは少量の片栗粉も加えて練ってあるから、お餅のようにツルツルモチモチした食感になるんだよね。
寒い冬の夜に温かい汁物はなによりのご馳走。
使うのは深めのマグカップとスプーンだけだから、カトラリーの準備も楽だよ。
「ハフハフ、温かくて美味しいわね。野菜も美味しいし、すいとん?気に入ったわ」
エルフのセーラ先輩は、ベジタリアンじゃないけど、基本的に野菜が大好きだから、このすいとんもお気に召したようだ。
「ああ、これは温まるな。この小麦粉で練ったもの、海洋諸国にもよく似た料理があるぞ」
キム先輩も喜んで食べてくれている。
キム先輩出身の海洋諸国はいつか行ってみたいなぁ。
「アレク干し肉もやわらかくておいしいよ」
ハフハフしながらガッツリ食べているセーラ。
肉食聖職者のセーラの口にも合うみたいだね。
「じんわりして美味しいね。すいとんはボリュームもあるんだね。これも勉強になるよ」
料理も上手く、プロはだしのシャンク先輩は、俺が作る料理にいつも感心してくれる。
「「「ご馳走さま」」」
「「「おいしかった」」」
男子寮食堂を再現した部屋は灯りも十分だよ。何せ、窓がないから外に灯りも漏れないからね。
夜半。
このあとは2点鐘分(2時間)を刻む砂時計を片手に、今日も1人ずつ交代で夜警をする。
男子寮食堂の横にガーゴイル対策をした夜警専用の「1人用歩哨ボックス」も作ったからね。
歩哨ボックスには、中から外が見えるように格子状の枠を付けたんだ。
格子枠も交互にずらして2重設置した。
だから、中から外は見えるけど、外から中は見え辛い造りだよ。途中で矢も止まるから、矢で射られても安全だし。といっても矢で射かけられる心配はあまりしてないよ。
だって2重堀の先からは50メル近くあるからね。ゴブリンアーチャーの射程は20メルだし。
今日の夜警はマリー先輩→キム先輩→シャンク先輩→俺の順。
万が一、何かあったらいけないから「1人用歩哨ボックス」と男子寮食堂の間にはアラクネ糸を伝って土鈴が鳴るようにした。
緊急時、この土鈴がチリンチリン鳴ったら緊急事態ってことだね。
まあ、あんまり緊急事態にはならないと思えけど。
チリンチリンチリン…
それはシャンク先輩の夜警中に起こった。
チリンチリンチリン…
唐突に。
土鈴が鳴った。
――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価をいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつポチッとお願いします!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる