アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

221 25階層休憩室 変態?

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和やかに食事が進んだ。

 「あ~腹いっぱいだよ。アレク、いつもありがとうな」

 「今夜も旨いメシをありがとうな」

 「今夜のサンドワームもとても美味しく料理をしてくれたね。ご馳走さま」

 「国を思い出す旨い魚だったよ、アレク」

 「アレク君、毎回美味しいご飯をありがとうね。僕、作り方も教わってるよ」


 「いえ、たくさん食ってくれてありがとうございます。俺も楽しく料理させてもらってます」


楽しい食事会だった。
なんだけどね……

 「アレク、別腹がまだなの」

 「今日の別腹は何かな?アレク君」 

 「アレク、早く別腹が食べたいです」

 「オイも早く甘いもんが食いたいぞ!ギャハハ」


お腹が膨れたはずなのに。約4名の甘党の皆さんが、別腹、別腹と甘味の催促を始めた。

あんなにたくさん肉や魚を食べたはずなのになぁ。
まさに別腹とはよく言ったものだと思う。


 「今日は冷たい別腹、ジェラートですよ」

今日作ったのは、ジェラートだ。
残念ながら、果物がないからミルクジェラートだけだけど。
ミルクはカウカウのミルクを乾燥させて粉乳にしたもの。
少量のメイプルシロップを加えてあるから、甘すぎない自然な甘さになっている。

ただね、真っ白なジェラートじゃないんだ。
ドライフルーツにした赤スグリの実を溶かして加えてあるから、ほんのりピンク色をしたジェラートになってるよ。
この色も大事な決め手なんだ。

手で持つコーンも作ったから、それなりにジェラートらしくなってると思うよ。
って言うか、今日のデザートは脱脂粉乳っぽさがそれなりに表現されてるし。
けっこう再現度も高いはず。


 「今日の別腹はミルクジェラートです」

 「器代わりのこのコーンは食べてもらっていいですからね。
もういいよって言う人はコーンも食べきっちゃってくださいね。溶けやすいですから長く持ってたら手がベタベタになっちゃいますよ。
お代わりがいる人はコーンをまた持ってきてください。
できた人から食べてくださいね」

 「「「はーいアレクお母さん!」」」


お母さんじゃねぇ!

そんなふうに言いながら、ジェラート入のアイスボックスの前に陣取る俺。
(ビーチパラソルが無いから、少し雰囲気に欠けるけど)

ジェラートを金属製のヘラで削ぎ落としながら、コーンに盛り付けていく。
クルックルってコーンをまわしながら、ジェラートの表面に盛り付けていく。
ほんのりとピンク色のジェラートは一応薔薇の花っぽい見た目になったと思うよ。

そう、分かる人は分かるよね。
秋田名物のババヘラアイスだよ。
(長崎にもよく似たのがあるけどね)

ガキの俺が盛り付けするから、ガキヘラアイスかな。


 「旨っ!」

 「これは…冷っとして美味しいわ!」

 「うんうん、めちゃくちゃ美味い!」

 「形もなんか薔薇の花みたいなの!かわいいの」

 「「「うま~い!」」」

 「「「お代わり~!」」」


ジェラート(ババヘラアイスver.)はパーティー全員から大絶賛となった。
たくさん作ったはずなのに、最後はまったく残らなかったよ。

 「アレク君、これも過去の文献から?」

 「は、はい。昔、東の島国にあったデザートみたいですよ」

 「アレク、オメー良いもんを勉強してくれたよギャハハ」



そんなこんなで、今日の食事会も大成功だった。


――――――――――――――


 「さて、ここまで予想以上に早く来てるわ。ゴーストで少し、思わぬ誤算はあったけど」

 「「「ワハハハ」」」

 「さーせん…」

 「次は30階層が目標ね。予想通りだったら天候もかなり厳しくなるわ」

そう、過去の予測通りなら雪山らしい。
だから防寒着は必需品となってくる。そのために、両チームのポーターの先輩たちには、それぞれ5人分の防寒着を持ってきてもらっている。

 「それとね、アレク君が作ってくれてた靴ができたわ」

 「はい、お待たせしました。皆さん履いてみてください。一緒に渡した布と油脂は掃除用です」

 「おおーホントに靴ができたのかー!ありがとな」

 「アレクありがとう。なんかカッコいい靴だな」

1人1人の足のサイズに合わせた戦闘靴が完成したんだ。
見た目ブーツ、全体は防水性を高めた皮革仕様。
全体の縫製はミニアラクネの糸を使ってるから頑丈。
なによりも靴底にゴムの木から作ったラバーソールを使っている。
グリップもよく、耐水性もバッチリだ。
おそらくこの世界初のラバーソールを使った戦闘靴だ。

異世界じゃなければ、普通に軍用の戦闘靴と同等レベルになっているはず。

「野営の休憩のときに、汚れを落としてからこの靴専用の油脂で、磨いてください。水捌けがさらに良くなり、かなり長持ちしますよ」

皮革は普段からちゃんとメンテナンスしてたから、一生ものって言うくらい長持ちするからな。
少なくとも学園ダンジョンの探索中はまったく心配は要らない。

 「ピッタリなの」

 「うん、僕もピッタリだよ」

 「「「俺も(僕も・私も)」」」

 「ありがとうね。これでますます今後のダンジョンが探索しやすくなったわ」

 「いえいえ、俺も楽しませてもらいました」

 「アレク、こういう地道なものづくりの作業好きだもんね」

 「うん。大好き」

 「すごいんだけどな…アレク、お前何者なんだ」

 「えっ?何者って言われても…俺はヴィンサンダー領出身の農民の子どもですが」

 「「「いやいや違うだろ!」」」

 (えっ?!バレたのか!いつバレた?)



 「違うわ!アレク君はね」

こう言ったマリー先輩に、リズ先輩とセーラがハモって言った。

 「「ただの変態よ」」 


ギャハハハハ
ワハハハハハ
わははははは
あははははは
フフフフフフ

 「なるほど、ただの変態な」

 「なんかしっくりくるねー」
 
 「「そっかー」」


えー、マリー先輩やセーラまで俺を変態って思ってたのか!

俺は変態じゃねぇー!


食後はみんながそれぞれの準備に費やした。

さっそく戦闘靴に油脂を含ませたウエスで磨いているタイガー先輩やオニール先輩もいる。




ビリー先輩と俺は弓矢をかなりたくさん作った。今後は回収する暇もなく先に進むことになるらしいから。

 「ビリー先輩、これ追加の矢尻です」

 「ああ、ありがとう」

 「アレク君、これ追加のスカルナイトの剣だよ」

 「はい。ありがとうございます」

休憩室では途中で手に入れた金属を溶かして矢尻を鋳造している。
どんだけ使ってもいい矢尻だね。

 「アレク君が土魔法と金魔法を発現できるのは大きいね。この先、矢はいくつあってもいいんだからね」

 ビリー先輩は、矢はいくつあってもいいと言う。

 「いくつあってもってビリー先輩、100本くらいですか?」

 「アレク君…」

ゆっくりと笑ったビリー先輩は、首を軽く横にふりながら言ったんだ。

 「文字通り、いくつあってもなんだよ」

 「えっ?」

 「半日100本射続ける戦闘が次の休憩室まで10日続いてごらん」

半日100本が×2で1日200本。10日野営したら2000本!マジか?

 「そうなんだよ。それでも去年までは鋳造なんてできないから節約してたんだ。だから、射れば倒せる魔獣も刀で倒すだろ。そうしてだんだんみんなも消耗してくるんだよね…」

なるほどなぁ。
俺の金魔法と土魔法、鋳造の力はけっこう使えるんだな。俺、鋳造は大好きだからぜんぜん苦じゃないし。
ポーターのゲージ先輩やシャンク先輩には申し訳ないけど、矢尻はこれからどんどん鋳造していこう。


 「ギャハハ、アレク、オメーは気にしなくていいぞ。なぁシャンク」

 「はいゲージ先輩。大して重くないし、なんだかんだといろいろ荷物も減ってますよね」

 「おおよ。アレク、そういった訳だ。気にすんなよギャハハ」

 「ゲージ先輩、シャンク先輩あざーす」

2人ともめちゃくちゃ力持ちだし、持って来た消耗品もたしかに少しずつ減っている。

そんなわけで、矢尻をガンガン鋳造したあと……。

メイプルシロップ飴と蜂蜜飴もある分作った。もうこれで料理用以外の在庫はナシ、終わり。

 「リズ先輩、飴これで本当に終わりですからね。食べ過ぎないでくださいよ!」

 「ん。アレク、ありがとうなの。とってもうれしいの!」

満面の笑顔をリズ先輩から向けられた。

何!この可愛さ!

この飴ジャンキーの幼女め!って思ったけど、この天使のような笑顔は反則だよなぁ。なんか絆されそうになるよ。
いや、ダメだダメだ。心を鬼にしなくちゃ。

 「ビリー先輩、ちょっと…これすいません飴少しなんですけど。5袋ありますからそっとリズ先輩以外に持っててもらってください。これで本当に終わりですから。リズ先輩の飴が無くなって不機嫌になったら少しずつあげてください」

 「はは。わかったよアレク君。でもアレク君は…本当にリズのお母さんだね、ははは」

 「いえ、俺はお母さんじゃないです!」

 ハハハ
 わはは
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