209 / 722
第2章 幼年編
210 23階層
しおりを挟む21階層、22階層を無双していくボル隊。
ザワザワザワザワザワザワザワザワ…
スケルトンが2体迫ってきた。
「なんだよホネー!アンデットなんかぜんぜん怖くねえええぇぇぇぇーーー!」
ダンッ!
ザンッ!
ザンッ!
グシャグシャグシャ
グシャグシャグシャ
骨なんか硬くても刀で切り刻んでやる!
念には念を入れて粉々に踏んづけてやる!おりゃおりゃおりゃ。
カタカタ カタカタ カタカタカタ カタカタカタ…
スカルナイトが4体駆け寄ってきた。
「くどいぞホネー!アンデットなんかもぜんぜん、ぜーんぜん怖くねえええーんだよおおおおぉぉぉぉぉーー!」
今度は今日覚えたばかりの雷系攻撃魔法だ。
「サンダーバレット(雷弾)!」
ビリビリビリッ!
ギュィイーーンッ!
ギュィイーーンッ!
ギュィイーーンッ!
ギュィイーーンッ!
バババーーーンッ!
バババーーーンッ!
バババーーーンッ!
バババーーーンッ!
青白い光線の雷弾。スパークの上位魔法だ。
ライトニング(雷鳴)並に攻撃力を上げた単発の攻撃魔法だから破壊力も抜群。
レー◯ガンみたいな魔法だよ。
スカルナイト4体は接触と同時に、全身の骨が跡形もなくバラバラに爆ぜた。
「はーはーはーはーどうだー!」
「ねーねーシルフィ、アレクって怒ってるよね?」
「そうよねーシンディ、アレクって子どもよねー」
アレクについて思うところがあるのは、精霊だけではない。
「マリー先輩、またアレク、何か怒ってません?」
「フフッ。アレク君って子どもよねー」
「「カエルのときと同じよね」」
「「ホント…」」
くそー!
アンデットなんか最初からぜーんぜん怖くないんだぞー!
特にゴーストなんか怖いフリしてただけなんだよ!
うわっ!
言ってたら来やがった!
しまった、俺自身がフラグを立てたんだよな。
ふよふよ~
ふよふよふよ~
ふよふよふよふよ~
空中を漂いながら5、6体のゴーストが近づいてくる。
サッ!
すかさずセーラの後ろに隠れる俺。
「セセセセ、セーラさん、やっておしまい!」
「もう!アレク…」
「ライト!」
「ライト!」
「ライト!」
「ライト!」
「ライト!」
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
ジュッ
ジュッ
ジュッ
ジュッ
ジュッ
ふよふよふよふよ~
うわっ!
また来たよ!
「ししし、仕方ありませんな、セーラさん。もう1度やっておしまい」
サッ
今度はシャンク先輩の後ろに隠れよう!
「…もうアレク君、動けないよー!やめてよー!僕にしがみつかないでよー!」
「「「………」」」
ワハハハハ
ギャハハハ
あはははは
ははははは
「「「はーはーはー」」」
「はー疲れたーー」
「「「はー笑い疲れたー」」」
▼
「23階層の回廊ね。今日はここまでにして野営しようか」
「「「はい」」」
ここまで破竹の勢いで進んできたボル隊。
隊長マリーもキムもゆとりを持って進んでいる。
どの階層も想定以上に早く、1日以内でクリアしてきた。
これはマリーが学園ダンジョンに挑むようになって初めてのことである。
そしてこれまではボーナスステージとしか認識していなかったこの21階層、22階層にこれだけの長時間を要したのも初めてのことである。
いずれにせよ、今後のダンジョン攻略もアレクありきで進むとの思いを強くするマリーであった。
▼
「アレク君、普通のテントか、せめて床を高くしたくらいでいいんだからね!」
「もももも、もちろんです」
ズズズズズーーーーーーッ
「「「あ~まただよ…」」」
「マリー、いくら魔力が多いからってあれじゃ魔力の無駄遣いだな…」
「ええキム…」
アレクが発現した野営施設は、学園寮の食堂をまるまる模したものだった。しかも1階にある食堂を2階建の高さに発現したもの。
周囲は内堀、外堀の二重構造に槍衾、馬房柵。
ハッキリ言えば、軍団とさえ戦えるレベルの堅牢な野戦陣地の如き野営地である。
しかもこの野営施設は21階層、22階層の回廊とまったく同じものだ。
ただトイレだけは実際の廊下の先に位置してはいない。
何故か食堂にぴったり併設して設置されていた。
「セーラさん、これもまた寮の食堂なの?」
「ええシャンク先輩。今回もまた寮の食堂です。どんどん本物そっくりになってます…」
ナイス俺!
寮の食堂の安心感は絶大だよ!
しかもトイレはすぐ近くに作った。だってもしハナコさんが出たら俺チビる自信があるもん。
「ねぇアレク君、野営施設に食堂を作ったのはまだわかるわ。でもあれって…」
「はい!守護神様です!」
そう、俺は食堂の前に実物大のフィギュアを設置したのだ!
筋骨隆々ポージングポーズのレベッカ寮長を!
毒には毒を持って制す!
悪霊退散、悪霊退散、ナムナムナム…。
▼
「アレク君、明日の23階層からはゴーストは出ないわ。安心していいからね」
「よかったなアレク」
「い、いえ、俺はこれまでもこれからも、ぜんぜん大丈夫ですから!」
「よかったねーアレク」
「うん、セーラよかった…」
「あ~」
「ち、違うよ!」
ぷっ!
フフフフ
あははは
わははは
でもね、本心ではとてもホッとしていたんだ。
――――――――――――――
23階層は砂漠だった。ところどころにある積み石の跡はまるでエジプトのピラミッドだ。
「アレク、索敵はなんとかものになってきたな」
「はいキム先輩」
正直、索敵精度の向上はゴーストのおかげだよ。
アイツらが怖いから、俺の索敵能力は一気に花開いたと思う。
どこにどのくらいの敵がいるのか(何体のゴーストがどっちからふよふよとやってくるのか)、どう迎撃したらいいのか(どう逃げたらいいのか)、どのタイミングで刀を振るったり魔法を発現するのか(どのタイミングでシャンク先輩にしがみつくのか)等々。
俺の中の索敵能力は飛躍的に上がった。
「この階層と次の階層では、足の速い魔獣を避ける対策を考えろ」
「はい」
「代表的な魔物は甲虫だ。甲虫は恐ろしく速いが、その軌道さえ見極めればそれほど怖くはないからな」
「はい」
「速くなればなるほど、一直線となるのは俺たちでも同じだ」
「はいキム先輩」
その通りだ。
早く刀を振れば振るほど、その進路は直線になる。フェイントは振るまでだ。
カーブやフォークなんて現実的じゃないからな。
あっ、でも魔法なら曲線軌道はできるかもしれない。
ストンと落ちるお化けフォークボールや鋭角に胸元を抉るカーブボールやシュートボールは魔法なら可能かもしれない。
うん、これも練習していこう。
ザッ ザッ ザッ ザッ…
石畳のような道筋も、砂漠の砂がかかり、砂の上を歩くような感覚になる。
道筋を外れて砂漠の上を歩けば、足首まで砂に埋もれることもある。
これは早く戦闘靴を完成させなきゃな。
21階層あたりからキム先輩は俺たちから見える位置を歩くようになった。
近ければ5メルほど。
遠くても30メルほど先を。
決して俺が頼りないからではない…と思いたい。
と。
10メルほど先を歩くキム先輩が歩みを止めた。
後ろ手のサイン。
「パー(止まれ)」、「グーで手首を伸ばす動作(サンドワーム)」、「人差し指(魔獣1体)」だ。
サンドワームがいる。
◯サンドワーム
砂漠の中を泳ぐように移動する巨大な魔獣ミミズ。体長10m~20mほど。目は退化しているが、聴覚と触覚は鋭敏。噛みつかれると砂漠の中に引き摺り込まれる。
頭部の切断又は火魔法、風魔法が有効。
美味。
ズズズズズーーーーーーッ
砂の上が一直線に波打つように接近してくるサンドワーム。
ザッパーーーンッ
海上に飛び上がるイルカや鯨のように、砂の上を飛び上がる魔獣ミミズだ。
全身は砂よりは色濃い茶褐色。うなぎが巨大になったかに見える。
ザッパーーーンッ
砂の上を飛んでは砂に潜る姿は、海に生きるイルカや鯨に見える。
でもやっぱ、なんかキモいな。
15階階層主のヨルムンガーのほうが見た目にグロくないよ。
「アレク、次上がったら切るよ」
「了解」
シルフィが声をかける。
1、2、3、4、ドーンッ。だいたいパターンも判った。
「キム先輩、俺がやります」
「わかった」
「シルフィ、次いくからね」
「いーわよ!」
4、3、2、1、ここっ!
「エアカッター(風刃)!」
ザッパーーーンッ
飛び上がったサンドワームの頭部を不可視の風刃が見舞う。
ザンッ!
ボトッ バタバタ バタバタ バタバタ…
頭部から離れた胴体がバタバタとのたうち回る。
ヨルムンガーは硬くてクセのある肉質だったけどサンドワームはクセのない柔らかな肉質だ。魔獣肉でも人気上位に入るんだ。
クーラーボックスの中に両手で抱えるくらいの筒状の肉を確保したよ。
蒲焼きで食ったら旨いだろうな。
▼
食糧も確保したから、あとは気兼ねなく雷魔法で仕留めていった。
雷魔法の威力は絶対だった。
(焼け焦げて食用には不向きだけど)
ブーン ブーン ブーン ブーン…
おっ!甲虫だ。
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる