アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

210 23階層

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21階層、22階層を無双していくボル隊。

ザワザワザワザワザワザワザワザワ…

スケルトンが2体迫ってきた。

 「なんだよホネー!アンデットなんかぜんぜん怖くねえええぇぇぇぇーーー!」

ダンッ!

ザンッ!
ザンッ!

グシャグシャグシャ
グシャグシャグシャ

骨なんか硬くても刀で切り刻んでやる!
念には念を入れて粉々に踏んづけてやる!おりゃおりゃおりゃ。



カタカタ カタカタ カタカタカタ  カタカタカタ…

スカルナイトが4体駆け寄ってきた。

 「くどいぞホネー!アンデットなんかもぜんぜん、ぜーんぜん怖くねえええーんだよおおおおぉぉぉぉぉーー!」

今度は今日覚えたばかりの雷系攻撃魔法だ。

 「サンダーバレット(雷弾)!」

ビリビリビリッ!
ギュィイーーンッ!
ギュィイーーンッ!
ギュィイーーンッ!
ギュィイーーンッ!

バババーーーンッ!
バババーーーンッ!
バババーーーンッ!
バババーーーンッ!

青白い光線の雷弾。スパークの上位魔法だ。
ライトニング(雷鳴)並に攻撃力を上げた単発の攻撃魔法だから破壊力も抜群。
レー◯ガンみたいな魔法だよ。

スカルナイト4体は接触と同時に、全身の骨が跡形もなくバラバラに爆ぜた。


 「はーはーはーはーどうだー!」


 「ねーねーシルフィ、アレクって怒ってるよね?」

 「そうよねーシンディ、アレクって子どもよねー」

アレクについて思うところがあるのは、精霊だけではない。

 「マリー先輩、またアレク、何か怒ってません?」

 「フフッ。アレク君って子どもよねー」


 「「カエルのときと同じよね」」

 「「ホント…」」



くそー!
アンデットなんか最初からぜーんぜん怖くないんだぞー!
特にゴーストなんか怖いフリしてただけなんだよ!

うわっ!
言ってたら来やがった!
しまった、俺自身がフラグを立てたんだよな。


ふよふよ~
ふよふよふよ~
ふよふよふよふよ~

空中を漂いながら5、6体のゴーストが近づいてくる。


サッ!

すかさずセーラの後ろに隠れる俺。

 「セセセセ、セーラさん、やっておしまい!」

 「もう!アレク…」

 「ライト!」
 「ライト!」
 「ライト!」
 「ライト!」
 「ライト!」

ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!

ジュッ
ジュッ
ジュッ
ジュッ
ジュッ

ふよふよふよふよ~

うわっ!
また来たよ!

 「ししし、仕方ありませんな、セーラさん。もう1度やっておしまい」

サッ

今度はシャンク先輩の後ろに隠れよう!


 「…もうアレク君、動けないよー!やめてよー!僕にしがみつかないでよー!」

 「「「………」」」


ワハハハハ
ギャハハハ
あはははは
ははははは


 「「「はーはーはー」」」


 「はー疲れたーー」

「「「はー笑い疲れたー」」」





 「23階層の回廊ね。今日はここまでにして野営しようか」

 「「「はい」」」


ここまで破竹の勢いで進んできたボル隊。

隊長マリーもキムもゆとりを持って進んでいる。
どの階層も想定以上に早く、1日以内でクリアしてきた。
これはマリーが学園ダンジョンに挑むようになって初めてのことである。

そしてこれまではボーナスステージとしか認識していなかったこの21階層、22階層にこれだけの長時間を要したのも初めてのことである。

いずれにせよ、今後のダンジョン攻略もアレクありきで進むとの思いを強くするマリーであった。







 「アレク君、普通のテントか、せめて床を高くしたくらいでいいんだからね!」

 「もももも、もちろんです」

ズズズズズーーーーーーッ

 「「「あ~まただよ…」」」



 「マリー、いくら魔力が多いからってあれじゃ魔力の無駄遣いだな…」

 「ええキム…」



アレクが発現した野営施設は、学園寮の食堂をまるまる模したものだった。しかも1階にある食堂を2階建の高さに発現したもの。

周囲は内堀、外堀の二重構造に槍衾、馬房柵。
ハッキリ言えば、軍団とさえ戦えるレベルの堅牢な野戦陣地の如き野営地である。
しかもこの野営施設は21階層、22階層の回廊とまったく同じものだ。
ただトイレだけは実際の廊下の先に位置してはいない。
何故か食堂にぴったり併設して設置されていた。


 「セーラさん、これもまた寮の食堂なの?」

 「ええシャンク先輩。今回もまた寮の食堂です。どんどん本物そっくりになってます…」



ナイス俺!
寮の食堂の安心感は絶大だよ!
しかもトイレはすぐ近くに作った。だってもしハナコさんが出たら俺チビる自信があるもん。



 「ねぇアレク君、野営施設に食堂を作ったのはまだわかるわ。でもあれって…」

 「はい!守護神様です!」


そう、俺は食堂の前に実物大のフィギュアを設置したのだ!
筋骨隆々ポージングポーズのレベッカ寮長を!

毒には毒を持って制す!

悪霊退散、悪霊退散、ナムナムナム…。







 「アレク君、明日の23階層からはゴーストは出ないわ。安心していいからね」

 「よかったなアレク」

 「い、いえ、俺はこれまでもこれからも、ぜんぜん大丈夫ですから!」

 「よかったねーアレク」

 「うん、セーラよかった…」

 「あ~」

 「ち、違うよ!」

ぷっ!
フフフフ
あははは
わははは

でもね、本心ではとてもホッとしていたんだ。


――――――――――――――


23階層は砂漠だった。ところどころにある積み石の跡はまるでエジプトのピラミッドだ。

 「アレク、索敵はなんとかものになってきたな」

 「はいキム先輩」


正直、索敵精度の向上はゴーストのおかげだよ。
アイツらが怖いから、俺の索敵能力は一気に花開いたと思う。

どこにどのくらいの敵がいるのか(何体のゴーストがどっちからふよふよとやってくるのか)、どう迎撃したらいいのか(どう逃げたらいいのか)、どのタイミングで刀を振るったり魔法を発現するのか(どのタイミングでシャンク先輩にしがみつくのか)等々。

俺の中の索敵能力は飛躍的に上がった。


 「この階層と次の階層では、足の速い魔獣を避ける対策を考えろ」

 「はい」

 「代表的な魔物は甲虫だ。甲虫は恐ろしく速いが、その軌道さえ見極めればそれほど怖くはないからな」

 「はい」

 「速くなればなるほど、一直線となるのは俺たちでも同じだ」

 「はいキム先輩」


その通りだ。
早く刀を振れば振るほど、その進路は直線になる。フェイントは振るまでだ。
カーブやフォークなんて現実的じゃないからな。

あっ、でも魔法なら曲線軌道はできるかもしれない。
ストンと落ちるお化けフォークボールや鋭角に胸元を抉るカーブボールやシュートボールは魔法なら可能かもしれない。

うん、これも練習していこう。




ザッ ザッ ザッ ザッ…

石畳のような道筋も、砂漠の砂がかかり、砂の上を歩くような感覚になる。

道筋を外れて砂漠の上を歩けば、足首まで砂に埋もれることもある。

これは早く戦闘靴を完成させなきゃな。


21階層あたりからキム先輩は俺たちから見える位置を歩くようになった。
近ければ5メルほど。
遠くても30メルほど先を。

決して俺が頼りないからではない…と思いたい。


と。
10メルほど先を歩くキム先輩が歩みを止めた。

後ろ手のサイン。
「パー(止まれ)」、「グーで手首を伸ばす動作(サンドワーム)」、「人差し指(魔獣1体)」だ。

サンドワームがいる。



◯サンドワーム
砂漠の中を泳ぐように移動する巨大な魔獣ミミズ。体長10m~20mほど。目は退化しているが、聴覚と触覚は鋭敏。噛みつかれると砂漠の中に引き摺り込まれる。
頭部の切断又は火魔法、風魔法が有効。
美味。

ズズズズズーーーーーーッ

砂の上が一直線に波打つように接近してくるサンドワーム。

ザッパーーーンッ

海上に飛び上がるイルカや鯨のように、砂の上を飛び上がる魔獣ミミズだ。
全身は砂よりは色濃い茶褐色。うなぎが巨大になったかに見える。

ザッパーーーンッ

砂の上を飛んでは砂に潜る姿は、海に生きるイルカや鯨に見える。
でもやっぱ、なんかキモいな。
15階階層主のヨルムンガーのほうが見た目にグロくないよ。


 「アレク、次上がったら切るよ」

 「了解」

シルフィが声をかける。

1、2、3、4、ドーンッ。だいたいパターンも判った。

「キム先輩、俺がやります」

「わかった」


「シルフィ、次いくからね」

「いーわよ!」

4、3、2、1、ここっ!

「エアカッター(風刃)!」

ザッパーーーンッ

飛び上がったサンドワームの頭部を不可視の風刃が見舞う。

ザンッ!
ボトッ  バタバタ バタバタ バタバタ…

頭部から離れた胴体がバタバタとのたうち回る。

ヨルムンガーは硬くてクセのある肉質だったけどサンドワームはクセのない柔らかな肉質だ。魔獣肉でも人気上位に入るんだ。
クーラーボックスの中に両手で抱えるくらいの筒状の肉を確保したよ。
蒲焼きで食ったら旨いだろうな。




食糧も確保したから、あとは気兼ねなく雷魔法で仕留めていった。
雷魔法の威力は絶対だった。
(焼け焦げて食用には不向きだけど)



ブーン ブーン ブーン ブーン…

おっ!甲虫だ。
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