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第2章 幼年編
185 5階層へ
しおりを挟む「それって次の階層を潜る度にレベルアップしなきゃだめってことですかマリー先輩?」
「レベルアップ?」
「あ、あ、あわわ、魔獣に対抗するス、スキルを覚えなきゃとか?」
「うーん。新しい階層を潜ったくらいでスキルは覚えられないわよ。でもアレク君の言うことも一理あるわね。
同じような魔獣でも階層毎に強くなるから。だから、探索する側も強くなった魔獣に対応できるようにする必要があるんだよね」
「じゃあ今いる階層には次の階層に向けて、何かヒントがあるってことはありますか、マリー先輩?」
「考え方としては正しいと思うわセーラちゃん」
学園ダンジョンに潜る前。ボル隊の円卓で、雑談もよくした。
階層毎に強くなる魔獣への対処法。
探索者がレベルアップするの?なんて質問をマリー先輩にしちゃった俺。
あーだめだダメだ。無駄に昔の知識が出てくるよ。
この世界には可視化されたレベルや強さの指針になる数値なんて無いんだったよな。
脳内に、たらららったたったーって音楽が鳴って「ゆうしゃアレクはレベル7になった」とか「20のダメージを与えた」とかはない。
だからダンジョンや魔獣に限らず、そこをクリアするにはそのときどきに必要となるレベルを持ってなきゃいけないもんな。
せめてレベルいくつの魔法を習得するにはあとどのくらい時間がかかるとか判ればいいのになぁ。
セーラが言った「今いる階層には次の階層に向けてのヒントがあるかも」っていうのはおもしろい発想だよな。
うん、俺もそう思うから、1つ1つの意味を考えて探索していこう。
回廊を抜けて、3階層に入った。
なぜか強風の吹く山岳地帯だ。
なぜに山岳地帯?どこから風?
あー考えちゃダメだよな。こうなんだって思わなきゃ。
「アレク、集中して!」
坂道の先50メル(50m)ほどに1体のホーンシープ(一角羊)がいた。
ブッフッー、ブッフッー、ブッフッー‥
鼻息も荒く、真っ赤な目でこちらを睨みつけている。
あーコイツも赤い目だよ!なんでだよ!たまには平和的に「めぇ」とか鳴いてみせてくれよ。
肩に担いだ矢を番える。
ブメー!ブメー!ブメー!
メェメェとはほど遠い悪意のこもった叫び声を上げながら一気に走って来るホーンシープだ。
ガッ ガッ ガッ!
一歩一歩が5mほど。ジグザグに右へ左と跳ぶように駆けながら鋭利な角の頭を下げて急接近してきた。
弓矢の的が絞り難い?
そんなことはないよ。俺だってしっかり練習したんだ。しかもシルフィの補正付きだからね。
シュッ!
ザンッ!
ドウッ!
右へ左へと跳ぶ身体も、角のある頭はほぼブレないからな。真っ直ぐに眉間を狙って一射するのみだ。
ドウッ!と倒れたその身体は軽く80㎏ほどはある山羊だった。
「アレク、すごいです!」
「うん、すごいねアレク」
「ホント!エルフ並みねー」
「いえいえ、それほどでも‥」
あー褒められるとね、正直嬉しいよ。思わずニマニマしてしまうよ。
山羊は肉もキープだな。
あと‥こいつの胆嚢は要るはずだ。
セーラが言った『次の階層に向けて何かヒント』が該当するなら、こいつの胆嚢は先々必要となるはずだ。
「アレク、それは?」
「ああ一角山羊の胆嚢だよ。こいつの胆嚢から作った丸薬はは熊と一緒で毒消しやポーションになるんだ。けっこう貴重なんだよ」
「へぇー」
感心するセーラと、何故かお腹を隠すシャンク先輩だった。
回復薬。
ボル隊にはセーラはもちろん、マリー先輩も簡単な回復魔法は発現できる。ブーリ隊で回復魔法を発現できるのはリズ先輩だけだからな。
どっちの隊も備えあれば憂いなしだ。
その後も3体ほどホーンシープを撃退した。食肉は最初の1体のみにしたけど、胆嚢はちゃんとゲットしたぜ。
今日の夜にでもドライの魔法で乾燥して丸薬あるとむほそにしようっと。
3階層、回廊、4階層と幾度かの戦闘を経たが、危なげなく通過できた。
4階層を過ぎて、再び回廊になってしばらくしてキム先輩が戻ってきた。
「キム先輩!」
「アレク大丈夫だったか?」
「はい、問題ありません」
「ヨシ。この先が5階層だ」
最初の目的地の前に着いた。
初めて見る扉。
5階層の前には2階建家屋を丸々入口にしたような大きな扉があった。
「開けたら、やり直しはきかないわよ。みんないい?」
「「「はい!」」」
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