アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

183 1階層

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1階層に入った早々。擬態する魔獣や集団で襲い来る魔獣。
新たに出現した魔獣と、新パターンで攻撃してくる魔獣からの洗礼だ。



シュッ!

突然。
後方から姿を隠したまま矢を射るゴブリンアーチャー。
先を索敵する俺に隠れて。じっと待機していたのか、セーラが横を通過する目と鼻の先で。僅か3メル(3m)まで接近されたのだ。
至近距離の矢がセーラめがけて放たれた。

シュッ!
カァンッ!

魔法障壁に阻まれるゴブリンアーチャーの矢。

「隠れて撃つなんてアンタ卑怯よ!」

ヒュンッ!

マリー先輩に憑く風の精霊シンディが、すかさずゴブリンアーチャーにエアカッターをお見舞いした。

ギャッ!

瞬時に細切れとなるゴブリンアーチャー。

「僕気付かなかった!ごめんねセーラ」

「いいえ、シャンク先輩。大丈夫ですから」

シャンク先輩が身を縮めてセーラに詫びているが、これは仕方ないよ。てか、俺も索敵精度をもっと上げなきゃな。


「みんな行くよ」

「「「了解(です)」」」

立ち止まることなく、俺は先を進むことを選択。
草原の中の道を進む。
広大なダンジョンも石造りの通路に沿って進めば迷うことはないと言う。
時おり襲い来る魔獣も切り捨てて前へ前へ。
鮮血のみ残っているのは、キム先輩が闘った跡だろう。
1時間くらい経っただろうか。
入った時と同じように、草原エリアは唐突に終わった。

再び回廊となった。
この回廊にはなぜか灯火が灯されていた。
えー?誰が火を点けたんだよ?ツッコミどころ満載だよー!って思ったけど、これも不思議ものですぐに慣れてきた。
灯火もそのうちに「こんなもんだ」と思うようになったんだ。
温度湿度も一定。
これもどっかに空調設備でもあるんじゃない?なんて思ったけど、あるわけない。
寒くもなく暑くもない。


回廊の一本道は時折直角に曲がった。
曲がり角に差しかかるたび、緊張感も増した。が、お化け屋敷みたいに、うわっ!って来ることはなかった。

時おり一角うさぎやワーウルフ、ゴブリンの死体が転がっていた。
これもたぶんキム先輩が闘ったやつだろう。すべて急所を一撃に貫かれていた。


ダンジョンの魔獣って怖いよなぁ。
助走もなしに最初っから疾走してくる一角うさぎや、牙みたいに歯が出たチューラット、走るアルマジローは俺初めて見たよ。


回廊の前方が明るくなってきた。
前方からはっきりと明かりが見える。回廊(通路)も終わりに近づいたようだ。
次が2階層だよな。




【  ブーリ隊side  】

ボル隊から遅れること3点鐘ほど。
タイガーを先頭に、探索に入るブーリ隊だ。


◎  ブーリ隊(後攻)

タイガー(斥候)
オニール(前衛遊撃)
リズ・ガーデン(聖魔法士)
ビリー・ジョーダン(弓士)
ゲージ(後衛、盾、ポーター)


聖魔法を発現できるリズとセーラの2人を両チームに配したとはいえ、ブーリ隊で魔法を発現できる者はリズだけだ。
が、昨年の探索も共にした仲間5人に不安や心配はない。

斥候タイガーの露払い。
1体どころか2、3体の魔獣でさえ一撃で葬りさっていくタイガー。このタイガーがほぼ無双状態に加え、オニールの槍もまた容赦のない槍撃である。この2人で早、向かうところ敵なしの低層階。
事実、未だビリーは1射もしていない。
リズに至っては、ゲージにおぶさり夢心地の有り様だ。

「ゲージ、もっとゆっくり歩くの」

「リズなんでだ?」

「揺れて眠れないの」

「オメー遊びに来たんじゃねーぞギャハハ」

「もう!五月蝿いの!揺れ過ぎなの!」

ズシーーンッ!

おぶさるゲージに向けて重力魔法を放つリズ。
ズシンッと足から地表にめり込むゲージ。

ズルズルズルズルッ

人族であれば、身体が沈んで一歩も歩けなくなる重力魔法もゲージにかかれば、歩き難さのある泥土を歩くが如くである。

「ギャハハ、リズ歩き難いぞ!」

ズルズルズルズルッ

「お前らなぁ‥」

タイガーが呆れる。

「まぁリズとゲージだからなぁ‥」

オニールも応える。

「はは、違いない」

ビリーも同意する。


「「「・・・わはははは」」」



背には山のような荷物を背負い、さらにはリズをおぶって、悠々と歩くゲージ。
幼い容姿の魔法使いリズと屈強な鰐獣人のゲージ。2人の組合せの微笑ましさもブーリ隊をリラックスさせている一因だった。


「ゲージ、お腹が空いたの」

「おぉリズ。俺がうまいもんを料理しようかギャハハ」

「リズ、ゲージに任せたら生肉を食わされるぞ」

オニールが言った。

「ははゲージとタイガーならあり得るな」

ビリーも言う。

「急ぐの。アレクが何か美味しいのを作ってくれてるの」

「だったらオメー自分の足で歩け!」

「ゲージはいじわるなの」

ズーーンッ!

「ギャハハ重い重いぞリズ!」

再び重力魔法を喰らうゲージだった。




1階層2階層とまったく危なげなく進むブーリ隊である。
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