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第2章 幼年編
169 ボル隊・ブーリ隊
しおりを挟む武闘祭の翌日。
10傑のみが入室できる専用の部屋でレクチャーを受けた。
先輩たち、セーラ、そして俺の自己紹介もした。
契約魔法の存在も知った。
たしかに非日常の環境下で知り得た仲間の言いたくない秘密などプライベートな情報も、外部に漏れないという安心感があれば、互いの信頼感はより深まるんだろうな。
俺の出自はモンデール神父様をはじめとして、導いてくれる大人たちは知っている。
でも俺はその秘密を、村の仲間や家族にさえ打ち明けていない。
ひょっとして打ち明けられない特殊な事情を理解してくれるかもしれない。
それでも‥やっぱり俺は嫌われるだろうな。なぜ話さなかったんだとがっかりされるだろうな‥。
俺の出自を知った上で、影に日向に俺を守ってくれている人たちにさえ、俺は隠し事をしている。
それは、俺の心の中にあるどす黒い憎しみの炎だ。
これは3歳の俺の葬儀のときからずっと、今も消えていない。小さくても決して消えない黒い炎だ。
執事、継母はもちろん、弟にさえ持つこの黒い負の感情。
特に執事と義母には‥この手で復讐したいと思っている。
このどす黒い思い、憎しみの炎を、俺はかき消すことができないでいる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
学園ダンジョンへのアタック。
「入山」とも表記されるこのアタック。
さまざまな制約があるのはこれまで述べたとおりだ
◯ 学園ダンジョン規約(一部抜粋)
・入山は2人以上であること。
・入山は許可された在学中の本学学園生のみ。学園生以外は入山禁止である
・現行設置されているすべての階層で全員が水晶玉チェックを受けること
・如何なる理由があれ無断入山は禁止
・入山前に担任に入山連絡をすること
・長期休業期間中以外は入山から一昼夜以内に帰還すること
・ダンジョン内での傷病等はその程度に関わらず(帰還後含む)、自己責任である
・物品の紛失等責任の所在も同様に、自己責任である
・ダンジョン内で起こる如何なる損失も学園側はその責を負うことはない
・ダンジョン内で得たドロップ品(遺物)等は基本的に取得者に所有権を認める
・稀に出現する国宝級遺物に関しては学園側と協議を有する
・これらすべてに違反した場合は理由の如何に関わらず訓告以上退学までの処分となる。
・尚、悪質と見られる行為等によっては出身学校及び出身区、出身領(出身国)からの今後の領都学園への進学を取り消す
・違反行為に関する賠償金額は別途定める
どの先輩も言っていたが、同じように潜ってもダンジョン内のルート、出現魔獣、頭数ともに一度として同じものはなかったという。
それがダンジョン攻略を一層難しくしている。
ーーーーーーーーーーーーーーー
会議2日め。
タイガー先輩が言った。
「パーティーの先攻、後攻の隊員が決まったので発表する。マリー」
先攻、後攻の2隊の名称は決まっていた。
50数年前、最初に学園ダンジョン探索に入った隊長ボル・ブーリに因んで、隊名もボル隊ブーリ隊と名付けられているのだ。
10傑によるダンジョンパーティー。
5人編成の2隊。
「総隊長は私マリー、副隊長はタイガーよ。
では編成を発表するわよ」
◎ ボル隊
キム・アイランド(斥候)
アレク(前衛遊撃)
マリー・エランドル(精霊魔法士)
セーラ・ヴィクトル(聖魔法士)
シャンク(ポーター、盾、後衛)
◎ ブーリ隊
タイガー(斥候)
オニール(前衛遊撃)
リズ・ガーデン(魔法使い)
ビリー・ジョーダン(弓士)
ゲージ(後衛、盾)
「私が潜ってから6年めにして最高のパーティーができたわ。この2隊、このパーティーなら最高記録も狙えるわ」
タイガー先輩も大きく頷く。
「昨日は後日って言ったけど、契約魔法による誓約がダメだという人はいるかしら」
「「「大丈夫(です)」」」
俺たち下級生の3人を含む全員が頷き、賛同の顔をしてみせた。
「誰も反対はいないわね」
マリー先輩が誓約書をだした。
羊皮紙には10傑の名前と魔法陣が書いてあった。
「みんな集まって。
じゃあリズ、お願い」
「ん。」
床には羊皮紙と同じ図柄を記した魔法陣。
その上で10人が円陣を組んだ。
「\**&@td‥」
リズ先輩が魔法陣の上で何かを唱えている。
誓約書が仄かに輝きだした。
「左手の人差し指をナイフで刺して名前の横に血印を押すの」
ナイフを手に最初にリズ先輩が見本をやって見せてくれる。
左手人差し指をナイフで切り、湧き出す血を朱肉にして自分の名前の下に押しつけた。
みんながその後に続く。
「キュア」
「「ヒール」」
指先のこの程度の傷は回復魔法としても容易らしく、リズ先輩もマリー先輩もセーラも、誰もが隣りの誰かの傷を即座に治してくれた。
「\@td#@m‥」
リズ先輩が唱える呪文に応じて、羊皮紙から浮かび上がる全員の名前と血判。
魔法陣の中央に全員の血判が移動した。
輪になって魔法陣を囲む全員の真ん中で、浮かび上がる名前と血判。
なんかすげぇな。
「私の後を皆んなが続けるの」
リズ先輩が言う。
ああ、復唱するのね。
「 ダンジョン内で知り得た
ダンジョン内で知り得た
仲間の如何なる秘密も
仲間の如何なる秘密も
決して口外しない
決して口外しない
この制約を違えるときは
この制約を違えるときは
此処よりの記憶を
此処よりの記憶を
失うことを誓約する
失うことを誓約する
「☆%##&¥‥‥」
パッ!
魔法陣と名前、血判、誓約書が消えて無くなった。
「契約はこれで終わりよ。これからはボル隊は前の円卓を、ブーリ隊は後ろの円卓を使って頂戴。休養日の前日には今週の進捗状況の報告を、休養日の翌日は今週の課題と目標を。
全員が情報共有していくからね。
あと、訓練場を使って各隊の実際の歩行練習も、パーティー全体の退避練習もしていくからね」
「ではボル隊は前のテーブルに、ブーリ隊は後ろのテーブルに集まって」
円卓に座った5人。これから互いの生命を護りながらダンジョン探索に挑む仲間だ。
◯ボル隊(先行)
6年1組キム・アイランド 斥候
1年1組アレク 前衛遊撃
6年1組マリー・エランドル 魔法士
1年1組セーラ・ヴィクトル 聖魔法士
5年1組シャンク ポーター、盾、後衛
「先攻ボル隊は縦列陣でキムが斥候よ。偵察、索敵を兼ねて1番先に進んでね」
「了解だ」
「アレク君は基本縦列の先頭ね。状況によっては弓も刀も魔法も使えるよう、どこにでも動いてもらうわよ」
「わかりました」
「セーラさんは常に私の横にいること。
障壁が必要な魔物や毒回避、アンデット対策などあなたが隊の生命線なんだからね」
「わかりました」
「シャンク君は基本後衛とポーターね。
階層主と闘うときなどは盾役をお願いするわ。乱戦時や撤退時にはセーラさんの護衛もね」
「了解しました」
「私が倒れたら、ボル隊の指揮はキムよ。
あとね、学園からお借りしてるこの遺物をボル隊、ブーリ隊のどちらも持ってるわ。これを使わないことを祈りたいわね。でもここから音が鳴った時点で隊は解体、パーティーの再編成と即座に撤退行動に移るからね」
そんなことを言ったマリー先輩の手のひらには小箱がのっていた。
「マリー先輩、なんですかそれ?」
手のひらに乗るのはルービック何ちゃらみたいな四角い小箱だ。
「ちょっと見ててね。
この箱に魔力をこめると‥」
ピーーーーーーー!
後方ブーリ隊、タイガー先輩の手のひらにある小箱とマリー先輩の持つ小箱、両方の小箱からけたたましい音が鳴った。
「この2つの小箱はどれだけ離れてても共鳴して音が鳴るわ。音は2つの小箱を合わせたら鳴り止むの」
そのとおり、マリー先輩がタイガー先輩の持つ小箱と合わせたとたんに音が鳴り止んだ。
「これを使うときは、どちらかの隊に危険が迫って即座に救援要請をしなくちゃならなくなったときね。
だからダンジョン内でこれを使わないようにしたいわね。あとはこれ」
といったマリー先輩が目薬サイズの小瓶を出した。
「これはパーティーに1つだけ。
エリクサーよ。瀕死の仲間の気力魔力体力のすべてを回復する、もしくは部位欠損までを復元できるわ。
今回は回復魔法と深層階のアンデット対策に特化した聖魔法を発現できるリズとセーラの2人がいる。
それでもリズもセーラも部位欠損を治せるほどの高い魔力を日に2度も3度も発現はできないわ。それでも各隊に1人ずつ聖魔法を発現できる2人が揃ったのはとても大きなアドバンテージなのよね。
いずれにせよ、このエリクサーも使わないことを願いたいもの。使う状況になれば、これも使用したら即撤退よ」
おお!すげぇ、すげぇ!エリクサーだって!ゲームの世界だけだと思ってたし、実物も初めて見たよ。
たぶん‥目の玉が飛び出るくらいお高いんだろうな。
一気にダンジョン探索が現実味を帯びてきた。
「次はね‥」
こうして学園ダンジョンの実戦に向けて準備が始まった。
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