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第2章 幼年編
165 ゲージ
しおりを挟むゲージ先輩は鰐獣人だという。
鰐獣人は蜥蜴獣人(リザードマン)の上位獣人だ。
ちなみに鰐獣人のさらなる同系の上位獣人にはドラゴニュート(龍人族)がいるらしい(見たことないけどね)
王国では珍しい鰐獣人は、中原でも南部の湖沼地帯や海洋諸国等の限られる地域に棲む種族だという。
俺の勝手なイメージでは、「リザードマン」としてそのまんまのトカゲや鰐が立って歩くイメージだったんだけど違っていた。
ゴツゴツした大きな尻尾はイメージ通りだったけど、顔は違った。鰐寄りの人族っていうのかな?鰐そのものが頭についてはいなかった。
ただやはりヒューマンとは見た目から違うし、他の獣人より獣色が強く出ているみたいだ。
皮膚自体に硬い防御力を備え、爪による噛みつきと自在に動く尻尾の攻撃力が特徴の鰐獣人がゲージ先輩だ。
「おお、オメーが話題の1年坊主だな!オイも楽しみにしていたぞ!ギャハハ」
バンバンバン!
「いててっ!先輩痛いっす!」
大きな声で遠慮なく俺の背中をバンバンたたく6年1組ゲージ先輩だ。
豪放磊落。
小さなことにくよくよしないイメージの鰐獣人がゲージ先輩だった。
ゲージ先輩はこの後のダンジョンでも、ムードメーカーとしても活躍した。
ダンジョンの閉鎖空間ではともすれば暗くなりがちなチームの雰囲気も、ゲージ先輩の持ち前の明るさがチーム全体のムードを明るく保ってくれた。
「アレク、オメー、ビリーと弓で闘んたんだよな」
「はい」
「タイガーとは体術だよな」
「はい」
「オイもオメーみたいな奴は好きだぞ!ギャハハ。じゃあオイの遊びにも付き合ってくれるんだろ?」
「はい、俺は先輩の言うやり方で闘ります!」
「ギャハハ。そうこなくっちゃな!」
ゲージ先輩が大きな口を開けてギャハハと笑う。
これはもう底抜けに明るい笑顔だ。
会ったばっかりなんだけどね、うん、この先輩も俺は好きだよ。
「先生、ルールを変えちまってすまんね」
「もうゲージ君だから仕方ないわね」
ふふふふ
ギャハハ
先生もゲージ先輩ならと認めてくれたようだ。
魔法着を脱ぎ捨てたゲージ先輩が大きな声で言う。
「なに大したこっちゃない。オイがオメーを尻尾で絞めた型から抜けたらオメーの勝ちだ。先生が数を50数えてくれる間に勝負だ」
「わかりましたゲージ先輩」
クラス分け試験のときのレベッカ寮長を思い出す。
魔法着を脱ぎゲージ先輩の尻尾を前に横たわる俺
190㎝ほど。身長と同じくらいの長さの尻尾が俺を絡める。
あーこれ、リアル簀巻きだよ。
「はいじゃあいくよ!はじめ!」
途端に俺を絡めてくるゲージ先輩の尻尾だ。
痛くないのは手加減なのか?
「1、2、3‥」
審判の先生のカウントが始まった。
ふんっ!
解こうと力を入れるが、ゲージ先輩の尻尾はびくともしない。
ふんっ!
両手に金剛を発現、扉を開くように両肩を解放しようと‥‥。
ぬぬぬぬ。できない。
「くそーっ!」
巻きつく尻尾の先を手につかみ、今度は尻尾ごと振り解こうもびくともしないゲージ先輩の尻尾。
「アレク、オメーこんなもんで終わりか?」
「25、26、27‥」
ヤバい。半分切った。
「どっせーい!どっせーい!」
起きあがろうにもぜんぜんダメだ。びくともしないよ。
ダラダラと流れる全身の汗もハンパない。
ズルっ。
!!
そうか!
最近のレベッカ寮長との練習でもそうだ。力くらべじゃ絶対勝てない。
押してもダメなら引いてみな。
脱力。
そう脱力だ!
開こう開こうとしていた両肩も脱力。逆に縮こまるよう全身の力を抜いた。
両手も掌から2つ合わせて頭部上に万歳をするよう1本の蔓のように脱力。
「47、48、49‥」
そして‥‥‥するっ!
抜けた。
「アレク、オメーよく気付いたな!ギャハハ」
破顔一笑のゲージ先輩だった。
「勝者アレク君!」
「ぜーはーぜーはーぜーはー」
タイガー先輩戦と同じ。
コートに仰向けになって息も絶え絶え倒れ伏す俺に、手を貸して起こしてくれたゲージ先輩。
「アレク、オメーはオイの大事な仲間だ。一緒にがんばるぞ!」
「はいゲージ先輩!」
ギャハハハハ!
バンバンバン!
「ゲージ先輩、痛いって!」
ギャハハハハ!
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