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第2章 幼年編
152 帰寮
しおりを挟む冒険者ギルドでは「鉤爪」の3人と模擬戦を何度かやった。対人戦はやればやる程慣れていくと思う。
「アレク、なんでお前のほうが強くなってるんだよ!わははーさすが弟分だよ」
「「そうだな、弟分!」」
うーん?
できるならマジックラブのお姉さんたちにそう言ってもらいたいんだけど。
逆に師匠との剣の修行は、ひたすら同じことを繰り返すものだった。無心に素振りすることを最初に師匠から学んだ。
今の師匠との組み打ち。これも毎回同じ動作の繰り返しだ。どこの誰とやっても変わらない不変の型みたいなものを師匠は俺に覚えさせたいんだと思う。
今、ヴィヨルド学園の剣術で俺が首席でいられるのは、師匠の教えの賜物だ。
だって王国不断の剣だったんだよな師匠は。全盛期の師匠は王国内に剣で並び立つ者はいなかった。今はどうみてもただの爺さんだけど。
商業ギルドではピーナさんが晴れやかな顔で迎えてくれた。
「ヴィンランドのミランダさんは大変なんだって?ぷぷっ!」
あんまり清々した顔でピーナさんが言うもんだから、なんかウソをついてやりたくなった。
「ミランダさん、俺のせいで急に忙しくなってね。なんか若い商人さんからもいっぱい誘われてて人気もすごいみたいだよ」
「えっ?なにそれ?なんでなの!爺さんばかりで、私にはそんなことなかったのに!キー悔しいー!」
横にいた若い受付嬢さんにベロを出してそう言った俺だった。
▼
「母さん、家の芋は旨いなー」
「お兄ちゃん、チューラットのハンバーグも美味しい!最近はあんまり捕まらないけど」
「チューラットやアルマジローも減って捕まらないほうがいいんだよ」
「だってハンバーグが食べられなくなるもん」
「サンデー商会さんで魔獣肉を買えばいいのよ」
マリア母さんが笑顔で言う。
「そうだぞ、スザンヌ。サンデー商会にいろんな魔獣肉もあるからな」
ヨゼフ父さんも笑顔で口を揃える。
極貧という言葉を絵に描いたようなデニーホッパー村も今では住みやすい村になってきた。
わが家でも自家消費以上に収穫量も増え、若干ながら現金収入もできるようになってきた。
畠では名産となった芋を初め麦も獲れる。
順調に頭数も増えている家畜のカウカウ(牛)やブッヒー(豚)やコッケー(鶏)の肉や卵も定期的に手に入るだろう。
果樹園のブードやリンゴーも大きく育ってきている。
村の行く末は明るいだろう。
明日は寮に帰る。
早く寮に帰りたい気持ちも芽生えてきた。
夏合宿が終わって帰ったデニーホッパー村は、大事な俺の生まれ故郷だ。
これからも愛すべきわが村に変わりはない。
が、同じようにヴィンランドも大好きな街だ。今は寮に戻るというよりは、寮に帰るという言葉が、自分自身にとって腑に落ちる。
わずか1学期足らずの寮生活。なのにいつしかヴィヨルド(ヴィンランド)は俺の第2の故郷だ。
レベッカ寮長でさえ早く会いたいよ。
それくらい愛着も湧いてきた。
「お兄ちゃん、次はいつ帰ってくるの?」
「冬休みは短いから無理だなあ。次は春休みかな」
嫌だ嫌だギャーギャー
行っちゃ嫌だギャー
またしても騒ぎだしたスザンヌやヨハンを宥めるのも一苦労だった‥。
「父さん、母さん、たぶん次は春まで帰ってこれないと思う」
「そうか。仕方ないな」
「アレクちゃん‥」
「手紙送るよ」
「「ああ(ええ)」」
「大好きだよ。父さん、母さん」
「「私はー?」」
「お前らも大好きだよ」
帰ってきたときより、さらに自然に抱き合っていた。
さあヴィヨルドに帰るぞ。
帰ったらすぐに武闘祭だ。
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