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第2章 幼年編
151 託す
しおりを挟む夏休みの最後は、ジャンやアンナ、妹や弟も含めて3家の子どもたちみんなで遊んだりもした。
言うまでもなく妹のスザンヌや弟のヨハンはかわいい大事な妹弟だ。
そうなんだけどね‥‥デイジーはね、めちゃくちゃかわいいんだよね。
獣人の子どもは幼いころはまだ獣色が強い。だから山猫獣人の子のデイジーはそのまんまよたよたと立って歩いて話をする仔猫なんだよ。仔猫は本当にかわいいんだよ。
今日もデイジーを抱っこしていい匂いがするお腹あたりをくんかくんか吸いまくって猫っかわいがりしている俺。
「デイジーは今日もかわいいでちゃねー(くんかくんか)。
今日はにゃにをして遊びまちゅかねー(くんかくんか)」
「キャッキャ。くすぐったいにゃー」
「「「アレク(お兄ちゃん)キモっ!」」」
「ア、アレク、そ、そんなにデイジーがかわいいんだったら、か、家族になれば良いんだよ?」
「そうか!デイジーちゃんは(くんかくんか)アレクお兄ちゃん家の子どもになりまちゅかー(くんかくんか)?」
「くすぐったいにゃ。キャッキャ」
「そうでちゅか(くんかくんかくんか)!アレクお兄ちゃんの妹になりまちゅかー!(くんかくんかくんか)」
「やめるにゃー。くすぐったいにゃー。キャッキャ」
(あーたまらん。このかわゆさは神だよ!)
「アンナお姉ちゃん。お兄ちゃんはデイジーしか見てないよ‥‥」
「本当ね‥‥」
いつのまにか。兄アレクより妹スザンヌのほうが大人になっていた‥。
次の日。
ジャン、アール、ジョエル、ベンの前期教会学校の男子同級生たちが集まった。
「アレク、次にお前が帰ってくるまで俺たち何をしたらいい?」
ジャンからの質問だ。
(あー偉そうだけど、なんかうれしいな。仲間のみんなが村のことを考えていてくれるよ。そんなみんなが次のデニーホッパー村を背負っていくんだよな)
「何をしたらって?そう考えるだけで充分なんだよ。俺たちの村なんだ。みんなが住みやすい村だったらそれで良いんだよ。その結果としてのんのん村や近くの村とも仲良くなれるし。
あとは一人一人の得意なことじゃないかな。
アールやジョエルが2度と盗賊団に襲われないよう今も土塀を補強してくれてたり、ベンが家畜の匂いがしないよう考えてくれてたりしてるだろ。それでいいんだよ。
ジャンは金魔法でできること、アールとジョエルは土魔法でできること、ベンは風魔法でできること。自分の得意なことをプラスしてやったらいいんだよ。そしてあとはみんなでできることを考えてやればいいんだよ」
「「「わかったよ」」」
「あ!あとさ教会学校は俺たちのときよりもっと子どもが増えていくよな」
「「「ああ」」」
「だからさ。年上の子が何か年下の子を教えてあげる。そんなことを何か考えたらいいんじゃないか?」
「ああ。いいなそれ。アレクが建ててくれた施設もあるからな!」
「「うんうん」」
「年上の子が年下の子を教える」
なぜかここに反応したジャンである。
なぜか恥ずかしそうに下を向くジャンに、ジョエルが声をかけた。
「ジャン、おい?お前何下向いてるんだよ?」
「あのな‥俺とアンナはな‥昔アレクに計算とか教えてもらっただろ。でスザンヌが、アレクの妹が来てからは計算とかスザンヌに教えてもらっててな‥」
「いーじゃねーか。そんくらい」
「いや、あのな‥最近はその下の弟のヨハンのほうが俺たちよりもっと‥‥」
「「「ジャン、どんまい!」」」
誰にでも得意不得意はあるからな。
当たり前に九九ができる俺は、当時ジャンとアンナから「「神童だ!」」と言われていたことを思い出したよ。
それがいつのまにか、チューラット王やら袋王って言われたもんな‥。
村のことは仲間に託した。
俺たちではまだできないこともチャンおじさんやニャンタおじさんや父さん、大人がやってくれるだろう。
これからは帰るたびにさらに何かがよくなっていくんだろうな。
夏休みや春休みに帰ってくるのが楽しみだよ!
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